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人間関係が広がるお年頃
衣装の準備
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「お久しぶりです……!ああ!お変わりないようで何よりです……!寧ろ天使さ極まれり……!」
「お久しぶりです、ペッテリ。そちらも全くお変わりないようで何よりです」
父上との謁見から数日後。ペッテリが俺の衣装をデザインするためにやって来た。保護者枠としてヤルノも一緒だ。丁度次の魔法陣を依頼する予定だったし、ベストタイミングだね!
「……ヴァイナモ様がいるのにオリヴァ様もご一緒とは珍しいですね」
「ああ。殿下の御用が済めば俺からも衣装を依頼したくてな」
「左様ですか」
ヤルノは意外そうにオリヴァを見る。オリヴァは近衛騎士とは言え、平民出身だからね。わざわざペッテリにオーダーメイドを頼むのが珍しいのだろう。俺も理由はよく知らないんだけど。まあオリヴァなら変な依頼はしないでしょ。
「……さて、この度は学園の制服の採寸と衣装を新調なさるのですかよね?何用で新調されるのですか?」
「実は近日行われるアムレアン王国騎士団との合同訓練に、私が見学に行くことが決まりましたので」
「……何故エルネスティ様が?」
ヤルノは目を瞬かせた。いや俺も聞きたい。何故衣装職人のペッテリじゃなくて付き添いのヤルノが仕事の話をしてるの?いや、ペッテリが俺の衣装に想像を膨らませてて、まともに仕事の話が出来ないからだろうけど。
ペッテリ?そろそろ妄想から帰ってこようね??
「父上曰く、目的はヴァイナモだろうと」
「ヴァイナモ様……一体何をしでかしたのですか……?」
「失礼な。何もやっていない。俺はただ日々鍛錬に励んでいただけだ」
「ちょっと頑張りすぎてしまいましたが」
俺の言葉にヤルノは大体察しがついたのか「ああ、どんどん人外になっていますからね」と呟いた。ヤルノの目から見てもヴァイナモは超人並の強さらしい。なんかヴァイナモが褒められると、俺も嬉しいな。凄いだろ俺の専属護衛騎士!って言いふらしたい。オリヴァもサムエルも色んな意味で凄いし。
「……まあそれはそれとして、エルネスティ様。衣装を新調するにあたって、何か要望でもありますか?」
「えっと……見学とは言え合同訓練なので、形式だけでも動き易い服装で。あとあまり目立たないようお願いします。今回、私はオマケみたいなものですし」
「承知しました。……ペッテリ、聞いてたか?」
「聞いてたよ……!天使のお声を聞き漏らすなんて勿体ない……!」
ペッテリはよくわからない言葉を発しつつ、跪いた。うん。変人だ。皆ももう慣れてて、総スルーしてる。
俺がそんなことを考えていると、ペッテリは何かを思い出したように、おずおずと俺に聞いてきた。
「……あの、エルネスティ様……風の噂では、学園の制服は改造OKだと聞きましたが……」
「ああ、原型を留めていましたら大丈夫ですよ。好きに作ってください」
「やった……!これは滾るぞ……!」
ペッテリは紙とペンを取り出し、鼻息荒くデザイン案を描き始めた。これは当分自分の世界から戻って来ないな。
ちなみに学園の制服は過度に切ったり染色しない限り、色々といじって良い。割と校風自由な学園だ。みんな制服によって自分の家の権力を表したりしてる。まあ俺は100%ペッテリの趣味になるけどな!
「……これは当分戻って来ないので、私がオリヴァ様の要件をお伺いします」
「……お疲れ」
かぶりつくようにデザインを考えるペッテリを一瞥して、ヤルノが溜息をついた。オリヴァは労うように肩をポンッと叩く。ペッテリとアスモの保護者と言うことで、色々と苦労して来たんだろうな。
でもオリヴァ、ヤルノ、忘れないでね?君たちも人のこと言えないからね?
ヤルノとオリヴァは俺の視線にスススと顔を逸らして話を戻した。なんで皆俺の考えてることわかるんだよ!?
「それで、今回はどのようなご要件で?」
「ああ。白のタキシードを二着用意して欲しいんだ。俺とアスモ用に」
「白のタキシード……と言うことは……」
「ああ。俺たち結婚することになったんだ」
「えっ!?そうなんですか!?聞いてませんよ!おめでとうございます!」
オリヴァの突然の結婚報告に俺は驚きつつもお祝いの言葉を告げた。ヴァイナモはボソリと「やっとですか……」と疲労を滲ませた表情で呟き、ヤルノに至っては「まだ結婚していなかったのですか」と別の意味で驚いていた。
「どうかしたのですか?ヴァイナモ」
「……いえ、オリヴァ先輩には定期的に飲みに付き合わされて、その度に延々とアスモ先輩の話を聞かされていたので……やっと解放されるのかと……」
「何言ってやがる。アスモについて語りたいことはどんどん増えていく一方だ。お前にはこれからも付き合ってもらうぞ」
「マジですか……」
ヴァイナモが頭を抱えたので、そんなにオリヴァのアスモ語りは酷いのか、と心配になった。俺がヴァイナモの顔を覗き込むと、ヴァイナモは苦笑いして答えた。
「オリヴァ先輩の話を聞いていると、まるでアスモ先輩が絶対不可侵な尊い存在のように思い込まされるので……。いつも終われば団長のもとに直行して、否定してもらっています」
オリヴァはふふんと得意げに腕を組んだ。いやっ!?それ一種の洗脳!?何団長さんにまで迷惑かけてんのさ!?いつもの常識人はどこ行った!?だからオリヴァは変人なんだよ!
団長さん、こんな面倒な部下を持って本当にお疲れ様です!今度アスモに胃薬作ってもらおう!
ヤルノが大きく咳払いした。いけない、いけない。一応仕事の話の途中だった。本来ヤルノの仕事じゃないんだけど。何だこれややこしい状況だな全く。
「式はどのような形式で行うご予定ですか?それによって衣装のデザインが少し変わってくるのですが」
「小さな教会で2人きりで挙げる予定だ」
「……ご親族とかもお呼びしないのですか?」
「ああ。出来れば衣装の依頼も、他言無用で頼む」
「……どうしてか理由をお尋ねしても?」
ヤルノは怪訝そうに眉根を顰めた。確かにオリヴァもアスモも平民で、別に隠す必要もなさそうだけど。この世界じゃ、同性婚も普通に認められてるし。
オリヴァは眉を下げて答える。
「……実はアスモの実家から、同性婚を反対されてるんだ。子孫を残して、実家を繁栄させろって。アスモは跡継ぎじゃねえし、知らねえよって突っぱねたんだが、婚姻が完了する前にバレたら横槍を入れられかねねえし」
「……古い考えの持ち主ですね」
ヤルノは顬に青筋を立てた。珍しいな、ヤルノがそんなに他人のことで怒るなんて。やっぱりペッテリのこと……って、下世話だな。やめとこ。
オリヴァもアスモも大変だな。だから今まで結婚してなかったのか。でも今はオリヴァは皇族の、アスモは団長さんの庇護下にいるから、思い切った行動に出たんだな。
よーし任された!2人の仲を引き裂くような不届き者は俺がけちょんけちょんにしてやるからな!
「程々にしてください。殿下が本気で動かれてはアスモの実家が潰れます」
アレ?俺口に出てた?
「表情見ればわかります」
何だよ俺ってそんなにわかりやすいかよ恥ずかしい!
* * * * * * * * *
○お知らせ○
明日の朝、少し長めの閑話を投稿予定です。是非ご覧ください。
「お久しぶりです、ペッテリ。そちらも全くお変わりないようで何よりです」
父上との謁見から数日後。ペッテリが俺の衣装をデザインするためにやって来た。保護者枠としてヤルノも一緒だ。丁度次の魔法陣を依頼する予定だったし、ベストタイミングだね!
「……ヴァイナモ様がいるのにオリヴァ様もご一緒とは珍しいですね」
「ああ。殿下の御用が済めば俺からも衣装を依頼したくてな」
「左様ですか」
ヤルノは意外そうにオリヴァを見る。オリヴァは近衛騎士とは言え、平民出身だからね。わざわざペッテリにオーダーメイドを頼むのが珍しいのだろう。俺も理由はよく知らないんだけど。まあオリヴァなら変な依頼はしないでしょ。
「……さて、この度は学園の制服の採寸と衣装を新調なさるのですかよね?何用で新調されるのですか?」
「実は近日行われるアムレアン王国騎士団との合同訓練に、私が見学に行くことが決まりましたので」
「……何故エルネスティ様が?」
ヤルノは目を瞬かせた。いや俺も聞きたい。何故衣装職人のペッテリじゃなくて付き添いのヤルノが仕事の話をしてるの?いや、ペッテリが俺の衣装に想像を膨らませてて、まともに仕事の話が出来ないからだろうけど。
ペッテリ?そろそろ妄想から帰ってこようね??
「父上曰く、目的はヴァイナモだろうと」
「ヴァイナモ様……一体何をしでかしたのですか……?」
「失礼な。何もやっていない。俺はただ日々鍛錬に励んでいただけだ」
「ちょっと頑張りすぎてしまいましたが」
俺の言葉にヤルノは大体察しがついたのか「ああ、どんどん人外になっていますからね」と呟いた。ヤルノの目から見てもヴァイナモは超人並の強さらしい。なんかヴァイナモが褒められると、俺も嬉しいな。凄いだろ俺の専属護衛騎士!って言いふらしたい。オリヴァもサムエルも色んな意味で凄いし。
「……まあそれはそれとして、エルネスティ様。衣装を新調するにあたって、何か要望でもありますか?」
「えっと……見学とは言え合同訓練なので、形式だけでも動き易い服装で。あとあまり目立たないようお願いします。今回、私はオマケみたいなものですし」
「承知しました。……ペッテリ、聞いてたか?」
「聞いてたよ……!天使のお声を聞き漏らすなんて勿体ない……!」
ペッテリはよくわからない言葉を発しつつ、跪いた。うん。変人だ。皆ももう慣れてて、総スルーしてる。
俺がそんなことを考えていると、ペッテリは何かを思い出したように、おずおずと俺に聞いてきた。
「……あの、エルネスティ様……風の噂では、学園の制服は改造OKだと聞きましたが……」
「ああ、原型を留めていましたら大丈夫ですよ。好きに作ってください」
「やった……!これは滾るぞ……!」
ペッテリは紙とペンを取り出し、鼻息荒くデザイン案を描き始めた。これは当分自分の世界から戻って来ないな。
ちなみに学園の制服は過度に切ったり染色しない限り、色々といじって良い。割と校風自由な学園だ。みんな制服によって自分の家の権力を表したりしてる。まあ俺は100%ペッテリの趣味になるけどな!
「……これは当分戻って来ないので、私がオリヴァ様の要件をお伺いします」
「……お疲れ」
かぶりつくようにデザインを考えるペッテリを一瞥して、ヤルノが溜息をついた。オリヴァは労うように肩をポンッと叩く。ペッテリとアスモの保護者と言うことで、色々と苦労して来たんだろうな。
でもオリヴァ、ヤルノ、忘れないでね?君たちも人のこと言えないからね?
ヤルノとオリヴァは俺の視線にスススと顔を逸らして話を戻した。なんで皆俺の考えてることわかるんだよ!?
「それで、今回はどのようなご要件で?」
「ああ。白のタキシードを二着用意して欲しいんだ。俺とアスモ用に」
「白のタキシード……と言うことは……」
「ああ。俺たち結婚することになったんだ」
「えっ!?そうなんですか!?聞いてませんよ!おめでとうございます!」
オリヴァの突然の結婚報告に俺は驚きつつもお祝いの言葉を告げた。ヴァイナモはボソリと「やっとですか……」と疲労を滲ませた表情で呟き、ヤルノに至っては「まだ結婚していなかったのですか」と別の意味で驚いていた。
「どうかしたのですか?ヴァイナモ」
「……いえ、オリヴァ先輩には定期的に飲みに付き合わされて、その度に延々とアスモ先輩の話を聞かされていたので……やっと解放されるのかと……」
「何言ってやがる。アスモについて語りたいことはどんどん増えていく一方だ。お前にはこれからも付き合ってもらうぞ」
「マジですか……」
ヴァイナモが頭を抱えたので、そんなにオリヴァのアスモ語りは酷いのか、と心配になった。俺がヴァイナモの顔を覗き込むと、ヴァイナモは苦笑いして答えた。
「オリヴァ先輩の話を聞いていると、まるでアスモ先輩が絶対不可侵な尊い存在のように思い込まされるので……。いつも終われば団長のもとに直行して、否定してもらっています」
オリヴァはふふんと得意げに腕を組んだ。いやっ!?それ一種の洗脳!?何団長さんにまで迷惑かけてんのさ!?いつもの常識人はどこ行った!?だからオリヴァは変人なんだよ!
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ヤルノが大きく咳払いした。いけない、いけない。一応仕事の話の途中だった。本来ヤルノの仕事じゃないんだけど。何だこれややこしい状況だな全く。
「式はどのような形式で行うご予定ですか?それによって衣装のデザインが少し変わってくるのですが」
「小さな教会で2人きりで挙げる予定だ」
「……ご親族とかもお呼びしないのですか?」
「ああ。出来れば衣装の依頼も、他言無用で頼む」
「……どうしてか理由をお尋ねしても?」
ヤルノは怪訝そうに眉根を顰めた。確かにオリヴァもアスモも平民で、別に隠す必要もなさそうだけど。この世界じゃ、同性婚も普通に認められてるし。
オリヴァは眉を下げて答える。
「……実はアスモの実家から、同性婚を反対されてるんだ。子孫を残して、実家を繁栄させろって。アスモは跡継ぎじゃねえし、知らねえよって突っぱねたんだが、婚姻が完了する前にバレたら横槍を入れられかねねえし」
「……古い考えの持ち主ですね」
ヤルノは顬に青筋を立てた。珍しいな、ヤルノがそんなに他人のことで怒るなんて。やっぱりペッテリのこと……って、下世話だな。やめとこ。
オリヴァもアスモも大変だな。だから今まで結婚してなかったのか。でも今はオリヴァは皇族の、アスモは団長さんの庇護下にいるから、思い切った行動に出たんだな。
よーし任された!2人の仲を引き裂くような不届き者は俺がけちょんけちょんにしてやるからな!
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アレ?俺口に出てた?
「表情見ればわかります」
何だよ俺ってそんなにわかりやすいかよ恥ずかしい!
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