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68.ジョンの話
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68.ジョンの話
ぼくが目を開けたとき、全ては……、全ては終わってはいなかった。
目を開けると少し白っぽくなった、明るい空が見えた。
体を起こそうとしたけど、起こせなかった。仕方なしに頭をまわすと海の遠くに山のような何かがいくつか浮かんでいるのが見えた。
目だけを動かして足元のずっと遠くを見ると大きな赤い鳥が見え、しかも一羽だけではなく四羽が相談をするように固まってギィギィ鳴いていた。
ぼくはもう一度海のほうを見た。波がそれらにあたっては砕けていた。危険はあるのかないのか、でも好奇心のが勝った。近くの岩につかまってやっと半分だけ身を起こした。
目の前の海から沖合まで三つの固まりが並んでいた。それらの一つずつが山のように大きくて、島にしか見えなかった。時折ブオーッとそれぞれの島から水があがって霧になって空に消えていった。海は透明で、一番近くの島の水面下を見ることができた。真っ黒な体に一面にくっついている噴火口みたいな岩のほかに、少しどんよりとした表情の大きな目が見えた。
つまり、とぼくは思った。サフソルムがいるなら尋ねたに違いない。こいつが古き良き時代より生き長らえてきた者たち、ってわけだ。
サフソルムはどこへ行ったか。ゆっくりと辺りを見渡したが見つけられなかった。
ぼくはそばに置かれていた本を手に取った。これが終われば無事にレネアのところへ帰れるはずだ――。そのときにはレネアに歌を聞いてもらう機会があるだろう。もしかしたらマグナスよりぼくに好意を持つようになるかもしれないな。ぼくが彼女のことを好きかどうかっていうのはちょっと分からないことではあるけれど。レネアは顔もきれいだし、気持ちも優しい。なにせぼくの歌をいいと思ってくれているのだから。だから何が起こるのかはわからないといえる。まぁいずれにしろ、あの宮殿にしばらく住まわせてもらえるのならそれはそれでいいことだ。うん。
ぼくはゆったりとした気持ちになって、葉っぱのしおりを頼りに本を開いた。そこにはこう書かれていた。
『あまりにも飛ぶことから遠ざかっていたものは体が重く感じるものであるし、少し恐怖を覚えるものかもしれない。元々の能力と頭を目覚めさせるためにハチミツと卵の殻(蛇の殻が特に望ましい)、そして琥珀の石も同時に用意して渡すこと。次いで「いざ飛ばん。太古の眠りから目覚めし時。美しき目の空駆ける者よ」と唱えるべし』
顔をあげ、ネコを探した。
ハチミツならちょうど食料の袋に入っているから問題ない。琥珀の石はベルナーからもらったものを使うことにした。マグナスは確かに飛ぶことから長く遠ざかっているに違いなく、久しぶりに飛ぶとなると恐怖を覚えるものかどうかは不明だったが、マグナスが再び翼を持つにあたっては万全の態勢を整えておくに越したことはなかった。よって今ここでぼくが琥珀の石をケチるわけにいかないのは明白だった!
それと――。蛇か。海から蛇が出てきた恐怖を思い出し、最も苦手なものになりかねないなと思った。
ゆっくりと立ち上がって、――頭はまだくらくらした――、卵の殻を探すことにした。でも正直、そんなものがどこにあるのか見当もつかなかった。
ぼくは辺りを歩き回った。すると何かの卵の殻を半分だけ見つけた。しゃがみこんで拾い、まじまじと眺めた。灰色のような、薄黄色のような、はっきりいって何の殻であるかは全く分からなかった。
でも、これでいいような気がした。なんなら後でサフソルムに確認してみたらいい。
赤い鳥たちのいるところにネコはいるに違いなかった。ぼくは真珠の粉の入った箱、不死の花、卵の殻とハチミツに、琥珀と本を持って、ゆらゆらと夢心地の気分で歩いていった。
ぼくが目を開けたとき、全ては……、全ては終わってはいなかった。
目を開けると少し白っぽくなった、明るい空が見えた。
体を起こそうとしたけど、起こせなかった。仕方なしに頭をまわすと海の遠くに山のような何かがいくつか浮かんでいるのが見えた。
目だけを動かして足元のずっと遠くを見ると大きな赤い鳥が見え、しかも一羽だけではなく四羽が相談をするように固まってギィギィ鳴いていた。
ぼくはもう一度海のほうを見た。波がそれらにあたっては砕けていた。危険はあるのかないのか、でも好奇心のが勝った。近くの岩につかまってやっと半分だけ身を起こした。
目の前の海から沖合まで三つの固まりが並んでいた。それらの一つずつが山のように大きくて、島にしか見えなかった。時折ブオーッとそれぞれの島から水があがって霧になって空に消えていった。海は透明で、一番近くの島の水面下を見ることができた。真っ黒な体に一面にくっついている噴火口みたいな岩のほかに、少しどんよりとした表情の大きな目が見えた。
つまり、とぼくは思った。サフソルムがいるなら尋ねたに違いない。こいつが古き良き時代より生き長らえてきた者たち、ってわけだ。
サフソルムはどこへ行ったか。ゆっくりと辺りを見渡したが見つけられなかった。
ぼくはそばに置かれていた本を手に取った。これが終われば無事にレネアのところへ帰れるはずだ――。そのときにはレネアに歌を聞いてもらう機会があるだろう。もしかしたらマグナスよりぼくに好意を持つようになるかもしれないな。ぼくが彼女のことを好きかどうかっていうのはちょっと分からないことではあるけれど。レネアは顔もきれいだし、気持ちも優しい。なにせぼくの歌をいいと思ってくれているのだから。だから何が起こるのかはわからないといえる。まぁいずれにしろ、あの宮殿にしばらく住まわせてもらえるのならそれはそれでいいことだ。うん。
ぼくはゆったりとした気持ちになって、葉っぱのしおりを頼りに本を開いた。そこにはこう書かれていた。
『あまりにも飛ぶことから遠ざかっていたものは体が重く感じるものであるし、少し恐怖を覚えるものかもしれない。元々の能力と頭を目覚めさせるためにハチミツと卵の殻(蛇の殻が特に望ましい)、そして琥珀の石も同時に用意して渡すこと。次いで「いざ飛ばん。太古の眠りから目覚めし時。美しき目の空駆ける者よ」と唱えるべし』
顔をあげ、ネコを探した。
ハチミツならちょうど食料の袋に入っているから問題ない。琥珀の石はベルナーからもらったものを使うことにした。マグナスは確かに飛ぶことから長く遠ざかっているに違いなく、久しぶりに飛ぶとなると恐怖を覚えるものかどうかは不明だったが、マグナスが再び翼を持つにあたっては万全の態勢を整えておくに越したことはなかった。よって今ここでぼくが琥珀の石をケチるわけにいかないのは明白だった!
それと――。蛇か。海から蛇が出てきた恐怖を思い出し、最も苦手なものになりかねないなと思った。
ゆっくりと立ち上がって、――頭はまだくらくらした――、卵の殻を探すことにした。でも正直、そんなものがどこにあるのか見当もつかなかった。
ぼくは辺りを歩き回った。すると何かの卵の殻を半分だけ見つけた。しゃがみこんで拾い、まじまじと眺めた。灰色のような、薄黄色のような、はっきりいって何の殻であるかは全く分からなかった。
でも、これでいいような気がした。なんなら後でサフソルムに確認してみたらいい。
赤い鳥たちのいるところにネコはいるに違いなかった。ぼくは真珠の粉の入った箱、不死の花、卵の殻とハチミツに、琥珀と本を持って、ゆらゆらと夢心地の気分で歩いていった。
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