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65.ユーリアの話
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65.ユーリアの話
「まずいものってなんだよ?」
「そんなこと口に出すのもはばかられるね。イとスの付くお方のあれに決まってるだろ」
「あれって……」ユーリアはいつになく声の調子を下げた。
「知らんよ。実物を見たことはないんだからな。書かれていることを守らなかったら村のお仕置きよりひどいことになるんじゃないか」
「フォ…フォブ! どうしたらいいんだよ。湖に捨てるのは?」
「そのほうが怖いだろうよ」
ユーリアは少し涙が出そうになったが、フォブに明かりをつけてもらって紙の正体を確かめてみることにした。「ひょっとしたらいいことが書いてあるかもしれない」
「それはないと思うがな」
二つ折りになった紙を開くと、中身はこう書かれていた。
・なすべきことをなすべし。
下記日時の下記場所にて出会った者と酒を飲むべし。
「これだけ?」ユーリアは少し拍子抜けしていった。
日にちは三日後で、場所はここからまた随分と遠い場所だと判明した。――ユーリアは知らない場所だったが、フォブはちゃんと知っていた。
文章の下には署名があった。イェンドートとスタティラウスの名前だった。
「おっかねぇ」フォブはつぶやいた。
「もし、こいつをしなかったらどうなる?」
「命をとられるとか、記憶をとられるとか、違う生き物に変えられるとか」
「おっかなすぎるよ! 今までに本当にそんな目に遭った奴は?」
「おれの親方のひいじいさんの時代につむじ風に巻き上げられて海に落っこちた者がいた」
「それってこの、イとスの人たちによるものなの?」
フォブは注意深い声をだした。「イとスの人たちの意に反することしたと噂だったらしい。目撃者によると、つむじ風に巻き上げられたときには風がでっかい女の手に見えたって話だ。大体普通は大人しくいうことを聞くものだろうからな。それをやらなければそれなりの……」
「仕方ない、酒を飲むだけだよ、フォブ」
「ああ、地図描いてやる」
「うん。でもフォブも行ってくれるんだろ?」
「おれは仕事があるっていっただろう?」
「三日後だから休みもらえばいい」
フォブは再びため息をつき、紙と書くものを取り出すと地図を描いた。
ユーリアは地図を受け取った。「酒を飲むだけだよ、フォブ。だっておれに何かあったとき困るじゃない。一人じゃ無理だよ」
二人はそこでとりあえずは分かれることにした。そして三日後の夕方の決められた時刻に地図の場所で間違いなく落ち合うことにした。
そしていまユーリアは文字通り飛ぶように駆けて、何とか目的地の近くにたどり着いた。
足と羽根の動きをゆるめながら、蟻に捕まったことはやっぱり恥ずかしくていえないなと思った。遠くにフォブを見つけてユーリアは手をあげた。
「まずいものってなんだよ?」
「そんなこと口に出すのもはばかられるね。イとスの付くお方のあれに決まってるだろ」
「あれって……」ユーリアはいつになく声の調子を下げた。
「知らんよ。実物を見たことはないんだからな。書かれていることを守らなかったら村のお仕置きよりひどいことになるんじゃないか」
「フォ…フォブ! どうしたらいいんだよ。湖に捨てるのは?」
「そのほうが怖いだろうよ」
ユーリアは少し涙が出そうになったが、フォブに明かりをつけてもらって紙の正体を確かめてみることにした。「ひょっとしたらいいことが書いてあるかもしれない」
「それはないと思うがな」
二つ折りになった紙を開くと、中身はこう書かれていた。
・なすべきことをなすべし。
下記日時の下記場所にて出会った者と酒を飲むべし。
「これだけ?」ユーリアは少し拍子抜けしていった。
日にちは三日後で、場所はここからまた随分と遠い場所だと判明した。――ユーリアは知らない場所だったが、フォブはちゃんと知っていた。
文章の下には署名があった。イェンドートとスタティラウスの名前だった。
「おっかねぇ」フォブはつぶやいた。
「もし、こいつをしなかったらどうなる?」
「命をとられるとか、記憶をとられるとか、違う生き物に変えられるとか」
「おっかなすぎるよ! 今までに本当にそんな目に遭った奴は?」
「おれの親方のひいじいさんの時代につむじ風に巻き上げられて海に落っこちた者がいた」
「それってこの、イとスの人たちによるものなの?」
フォブは注意深い声をだした。「イとスの人たちの意に反することしたと噂だったらしい。目撃者によると、つむじ風に巻き上げられたときには風がでっかい女の手に見えたって話だ。大体普通は大人しくいうことを聞くものだろうからな。それをやらなければそれなりの……」
「仕方ない、酒を飲むだけだよ、フォブ」
「ああ、地図描いてやる」
「うん。でもフォブも行ってくれるんだろ?」
「おれは仕事があるっていっただろう?」
「三日後だから休みもらえばいい」
フォブは再びため息をつき、紙と書くものを取り出すと地図を描いた。
ユーリアは地図を受け取った。「酒を飲むだけだよ、フォブ。だっておれに何かあったとき困るじゃない。一人じゃ無理だよ」
二人はそこでとりあえずは分かれることにした。そして三日後の夕方の決められた時刻に地図の場所で間違いなく落ち合うことにした。
そしていまユーリアは文字通り飛ぶように駆けて、何とか目的地の近くにたどり着いた。
足と羽根の動きをゆるめながら、蟻に捕まったことはやっぱり恥ずかしくていえないなと思った。遠くにフォブを見つけてユーリアは手をあげた。
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