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5 これが私の本当の姿
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突然モニターの映像がみだれる。俺がじっとモニターを見ると、なにか黒い影が横切る。男たちも異変に気づいたようだが、そのまま進み続けた。進んだ先は行き止まりで、来た道を戻ろうとするとまた映像が乱れ、元に戻る。
俺はあっと声をあげた。一人減っている。何が起きたのか分からなかったが、先ほどまでは五人いたのに四人になっている。男たちはあからさまに動揺していた。一人は行き止まりの壁を触るがただの壁だ。仕方なく、男たちは迷路をあるき続けた。
今度は、一枚の扉が見えた。こんな扉あったけと俺は首をかしげる。館には一度入ったことがあったが、扉なんてなかったはずだ。モニターは切り替わり、扉の先の部屋を映し出す。中は真っ暗で中央に置かれたアンティーク調の椅子にライトがあたっていた。その椅子には一体の少女の人形が置かれている。よく見ると、映画にもなって有名なアナベル人形にそっくりだった。
「最近一部でホラー映画の鑑賞会が流行っているらしいよ、現代の驚かし方も学ばなきゃってことで」
長く生きている妖怪たちが現代に適応しようとする姿は、俺たち人間の手本のようだが、なんだかシュールだ。
俺はくすっと笑うが、モニターに映る男たちはそんな場合ではないらしい。慌てて部屋を出ようとするが扉は開かない。アナベル人形の首がゆっくりとひとりでに回り始める。すると扉が開き、男たちは散り散りになって逃げていった。
モニターには、先程メイジーに絡んでいた男が映された。男はにやにや笑っているものの、動きが硬い。ふと上を見上げる。モニターも一緒になって天井を移すが何も映らない。
男のいる通路の先に女性の姿が見えた。体は暗くてよく見えないが、長い髪をしているほっそりとした女性だ。男はそちらへ手を振ってみせた。女も気づいたようで男へ近づいてくる。男はホッとしたように顔を緩めるが、すぐ顔がこわばった。近づいてくる女がどんどん巨大になってくる。男は逃げようとするが、後ろを振り返るといつのまにか道は壁で塞がれていた。巨大な女の姿がよく見えるようになると、首から下は人間ではなく鳥で、体が見えなかったのは、空中を飛んでいるからだった。その女が口を開くと、それは耳まで裂け、その巨大な口は、腰が抜け呆然としていた男を飲み込んだ。女はモニターに向かってニヤッと口を歪めると、モニターは切り替わり、なにもない迷路が映し出された。
俺の心臓はバクバクと鼓動している。アレは確かにセツナさんだったが、体は猛禽類のようだった。先程の出来事に体が固まっていると、ユウナさんが立ち上がり、少しビクッとしてしまった。
「多分これで充分だと思うよ。あの人たちもこれ以上ここにいたいとは思わないはず」
ユウナさんはフフッと笑う。外からは蝉の声が聞こえ始め、止まっていた時間が動き出したようだった。
俺はあっと声をあげた。一人減っている。何が起きたのか分からなかったが、先ほどまでは五人いたのに四人になっている。男たちはあからさまに動揺していた。一人は行き止まりの壁を触るがただの壁だ。仕方なく、男たちは迷路をあるき続けた。
今度は、一枚の扉が見えた。こんな扉あったけと俺は首をかしげる。館には一度入ったことがあったが、扉なんてなかったはずだ。モニターは切り替わり、扉の先の部屋を映し出す。中は真っ暗で中央に置かれたアンティーク調の椅子にライトがあたっていた。その椅子には一体の少女の人形が置かれている。よく見ると、映画にもなって有名なアナベル人形にそっくりだった。
「最近一部でホラー映画の鑑賞会が流行っているらしいよ、現代の驚かし方も学ばなきゃってことで」
長く生きている妖怪たちが現代に適応しようとする姿は、俺たち人間の手本のようだが、なんだかシュールだ。
俺はくすっと笑うが、モニターに映る男たちはそんな場合ではないらしい。慌てて部屋を出ようとするが扉は開かない。アナベル人形の首がゆっくりとひとりでに回り始める。すると扉が開き、男たちは散り散りになって逃げていった。
モニターには、先程メイジーに絡んでいた男が映された。男はにやにや笑っているものの、動きが硬い。ふと上を見上げる。モニターも一緒になって天井を移すが何も映らない。
男のいる通路の先に女性の姿が見えた。体は暗くてよく見えないが、長い髪をしているほっそりとした女性だ。男はそちらへ手を振ってみせた。女も気づいたようで男へ近づいてくる。男はホッとしたように顔を緩めるが、すぐ顔がこわばった。近づいてくる女がどんどん巨大になってくる。男は逃げようとするが、後ろを振り返るといつのまにか道は壁で塞がれていた。巨大な女の姿がよく見えるようになると、首から下は人間ではなく鳥で、体が見えなかったのは、空中を飛んでいるからだった。その女が口を開くと、それは耳まで裂け、その巨大な口は、腰が抜け呆然としていた男を飲み込んだ。女はモニターに向かってニヤッと口を歪めると、モニターは切り替わり、なにもない迷路が映し出された。
俺の心臓はバクバクと鼓動している。アレは確かにセツナさんだったが、体は猛禽類のようだった。先程の出来事に体が固まっていると、ユウナさんが立ち上がり、少しビクッとしてしまった。
「多分これで充分だと思うよ。あの人たちもこれ以上ここにいたいとは思わないはず」
ユウナさんはフフッと笑う。外からは蝉の声が聞こえ始め、止まっていた時間が動き出したようだった。
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