120 / 128
120
しおりを挟む「は?」
思わずフォークを操る手を止めた。
パチリと瞬いた俺のナナメ前ではなんてことなさそうに王子が優雅に食事を続けている。
「まだ先だが予定でもあるのか?」
「いえ、そうではなく……」
躊躇いの理由はそこじゃない、断じてそこじゃなくて!
“今度兄上の誕生日パーティーがある。招待状を送ったからもうじき届くはずだ”
まるで友人を遊びにでも誘うようにさらっと零されたそんなお誘い。
いや、こうして食事や行動を共にすることも増えたし、畏れ多くも友人扱いは百歩譲っていいとする。
「えー、俺らもいいんすか?」
「……どうして私まで?王太子殿下とはご面識もなければ、私はしがない一貴族ですし……」
肉にかじりつきながら興味津々で声をあげるカイルとは対照的に、俺はフォークを置いて言葉を濁した。
王子……ラインハルト様の兄上、しかも今度誕生日を迎える長兄はつまりは次期国王たる王太子殿下だ。
その誕生日パーティーといえば、王城で開かれる盛大なもの。
当然多くの貴族たちが招待されるが、招待客は各家の当主や後継者、特別に親しい者など格のある者達ばかりだろう。
招待客の同伴者という形でそれ以外の貴族が参列することはあれど……しがない伯爵家の次男坊の俺が直接招待される意味がわからない。
っか、ぶっちゃけ出たくない。
豪華絢爛な王族主催のパーティーに興味がないではないが、それはあくまでちょっとチラ見してみたいぐらいの好奇心。
現実問題として、そんなお偉いさんがたの集まりで粗相でもしたら……って考えるとカイルのように純粋には喜べねー。
「相変わらずだな。普通の貴族なら尻尾を振って飛びつくぞ?」
クツと喉を鳴らして王子が楽し気に笑った。
そして王子だけでなく、スープを口に運んでるレイヴァンの唇と目元もちょっと弧を描いている。
なんでそんな機嫌よさそうなん?
権力に群がる貴族共に慣れている彼らには、俺のような「触らぬ神に祟りなし」精神の小物は逆に新鮮なのだろうか……。
「まぁ、ともかく。招待は決定だ。一度兄上たちにも紹介したいと思っていたしな。兄上たちも話をしてみたいと言っていた」
はっ?!
待って!!なんでっ??
王太子殿下の誕生日パーティーに招待ってだけでもビビッてんのに、まさかの主役にご挨拶とか……。
内心焦りまくっている俺にさらにレイヴァンたちがしれっと追い込みをかけてきた。
「僕も両親に紹介したいと思ってたので丁度よかったです。家に招待しようと思いつつ、なかなか学園の休みと父の都合がつかなくて……」
「でしたら私もお兄様をご紹介しますわ。留学していたのでこの学園の生徒ではありませんでしたけど、ラファエル様やカイル様とは一つ違いで御歳も近いんですの」
は?の形のままポカンと口が固まる。
レイヴァンのご両親といえば宰相でもある侯爵夫妻、リーゼロッテ様のお兄様は次期公爵と、これまたVIP中のVIPだ。
しかもレイヴァン!!
その “両親に紹介” ってどういう意味でなのっ??
普通に学園で親しい友人、もしくは先輩って紹介だよね?
まさか “付き合ってます” ってカミングアウトじゃないよね?!
心中大パニックでレイヴァンを見れば、にっこりと極上の笑顔を返されたんだけど……その笑顔の意味ってなにーーーー???
レイヴァーンーーーーーー?!
240
お気に入りに追加
855
あなたにおすすめの小説
泣かないで、悪魔の子
はなげ
BL
悪魔の子と厭われ婚約破棄までされた俺が、久しぶりに再会した元婚約者(皇太子殿下)に何故か執着されています!?
みたいな話です。
雪のように白い肌、血のように紅い目。
悪魔と同じ特徴を持つファーシルは、家族から「悪魔の子」と呼ばれ厭われていた。
婚約者であるアルヴァだけが普通に接してくれていたが、アルヴァと距離を詰めていく少女マリッサに嫉妬し、ファーシルは嫌がらせをするように。
ある日、マリッサが聖女だと判明すると、とある事件をきっかけにアルヴァと婚約破棄することになり――。
第1章はBL要素とても薄いです。
悪役令息は断罪を利用されました。
いお
BL
レオン・ディーウィンド 受
18歳 身長174cm
(悪役令息、灰色の髪に黒色の目の平凡貴族、アダム・ウェアリダとは幼い頃から婚約者として共に居た
アダム・ウェアリダ 攻
19歳 身長182cm
(国の第2王子、腰まで長い白髪に赤目の美形、王座には興味が無く、彼の興味を引くのはただ1人しか居ない。
モブらしいので目立たないよう逃げ続けます
餅粉
BL
ある日目覚めると見慣れた天井に違和感を覚えた。そしてどうやら僕ばモブという存存在らしい。多分僕には前世の記憶らしきものがあると思う。
まぁ、モブはモブらしく目立たないようにしよう。
モブというものはあまりわからないがでも目立っていい存在ではないということだけはわかる。そう、目立たぬよう……目立たぬよう………。
「アルウィン、君が好きだ」
「え、お断りします」
「……王子命令だ、私と付き合えアルウィン」
目立たぬように過ごすつもりが何故か第二王子に執着されています。
ざまぁ要素あるかも………しれませんね
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
ギャルゲー主人公に狙われてます
白兪
BL
前世の記憶がある秋人は、ここが前世に遊んでいたギャルゲームの世界だと気づく。
自分の役割は主人公の親友ポジ
ゲームファンの自分には特等席だと大喜びするが、、、
旦那様と僕
三冬月マヨ
BL
旦那様と奉公人(の、つもり)の、のんびりとした話。
縁側で日向ぼっこしながらお茶を飲む感じで、のほほんとして頂けたら幸いです。
本編完結済。
『向日葵の庭で』は、残酷と云うか、覚悟が必要かな? と思いまして注意喚起の為『※』を付けています。
麗しの眠り姫は義兄の腕で惰眠を貪る
黒木 鳴
BL
妖精のように愛らしく、深窓の姫君のように美しいセレナードのあだ名は「眠り姫」。学園祭で主役を演じたことが由来だが……皮肉にもそのあだ名はぴったりだった。公爵家の出と学年一位の学力、そしてなによりその美貌に周囲はいいように勘違いしているが、セレナードの中身はアホの子……もとい睡眠欲求高めの不思議ちゃん系(自由人なお子さま)。惰眠とおかしを貪りたいセレナードと、そんなセレナードが可愛くて仕方がない義兄のギルバート、なんやかんやで振り回される従兄のエリオットたちのお話し。完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる