94 / 106
94
しおりを挟む俺、なんかやった……?
心当たりが思う浮かばないまま、内心ビクビクしてリーゼロッテ様を見る。
リーゼロッテ様は見るからにお怒りだ。
そんな仁王立ちの彼女と裏庭で向きあった俺。
あの場で “お話し” とやらをするつもりはなかったようで場所を移した俺たち。
王子らはついてこようとしたがきっぱりお断りされた。
……だが、王子やレイヴァンは当然のように納得しないし、俺としても王子殿下の婚約者様と二人っきりというのは避けたい。
と、いうことで食堂のガラス越しの裏庭に落ち着いた。
ここなら姿は見えるけど会話は聞こえない。
リーゼロッテ様は背を向けてるから気づいてないけど……俺からはガラス越しに丸見えな不審者たちが気になって仕方がない。
「それで、お話しというのは?」
唇を引き結んだままのリーゼロッテ様に問いかければ、肩眉がピクリと上がって俺の肩もビクリとあがる。
「ラファエル様」
静かな声が俺を呼んだ。
「私、お二人がお付き合いされたことは大変喜ばしく思っておりますの。レイヴァン様があれほど感情を豊かに出されるお相手はラファエル様だけですし、ラファエル様は優秀でお人柄も素晴らしく、申し分ない方だと思っておりますわ」
「いえ、そのようなことは……」
「謙遜は必要ありませんわ。それに誠実な方だとも信じておりますわ」
なんかやたら誠実に力が込められたな……。
そしてじりじりと近寄ってくる不審者たちがめっちゃ気になってイマイチ集中できないんですが。
気になるのはわかるけどガラスに張り付くのはやめなさい。他の生徒に気付かれたら大変だからレイヴァンも王子も自重して。んでもってカイルとアレンは面白がってねーで二人を止めろ。
「押し切った、とレイヴァン様は仰っていましたが……ラファエル様も彼のことはお好きですのよね?」
「もちろん。そうでなければ付き合ったりしませんよ」
上目遣いで躊躇がちに問われた言葉に迷わず返せば、華奢な肩がほっとしたように下りた。
あからさまに安堵するその姿を見て俺の気持ちも少しほぐれた。
急なお呼び出しは驚いたが、ようは友人を心配してのことなのだろう。
……さっきまでご機嫌だったのになんで急変したのかは謎だけど。
そんなことを思っているとその答えを告げるように再び問われた。
「じゃあシエル様のことは?」
「シエル……?」
何故にシエル……?
首を傾げる俺にリーゼロッテ様はひどく真剣な表情のまま「ええ」と頷く。
「可愛い甥っ子ですが……?」
「あくまで親戚としての愛情で、レイヴァン様への感情とは別ですか?」
「え?ええ。それは当然……」
困惑しながらも答えれば、リーゼロッテ様の表情は微妙なものへと変化した。
安堵と不満、言いたいけれど言いにくいことがありそうな、なんともいえない表情に。
数秒の沈黙。
唇をもごもごと動かして、真っ赤になったり、目を逸らして俯いたりと挙動不審な様子を見せたリーゼロッテ様が意を決したように顔をあげた。
頬を色づけたまま淡いピンク色の唇が開いた。
188
お気に入りに追加
718
あなたにおすすめの小説
3人の弟に逆らえない
ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。
主人公:高校2年生の瑠璃
長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。
次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。
三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい?
3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。
しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか?
そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。
調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m
【完結】悪役令嬢の妹ですが幸せは来るのでしょうか?
まるねこ
恋愛
第二王子と結婚予定だった姉がどうやら婚約破棄された。姉の代わりに侯爵家を継ぐため勉強してきたトレニア。姉は良い縁談が望めないとトレニアの婚約者を強請った。婚約者も姉を想っていた…の?
なろう小説、カクヨムにも投稿中。
Copyright©︎2021-まるねこ
自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!!
ゆずこしょう
恋愛
ティアナ・ノヴァ(15)には1人の変わった友人がいる。
ニーナ・ルルー同じ年で小さい頃からわたしの後ろばかり追ってくる、少しめんどくさい赤毛の少女だ。
そしていつも去り際に一言。
「私はヒロインなの!あなたはモブよ!」
ティアナは思う。
別に物語じゃないのだし、モブでいいのではないだろうか…
そんな一言を言われるのにも飽きてきたので私は学院生活の3年間ニーナから隠れ切ることに決めた。
聞き分けよくしていたら婚約者が妹にばかり構うので、困らせてみることにした
今川幸乃
恋愛
カレン・ブライスとクライン・ガスターはどちらも公爵家の生まれで政略結婚のために婚約したが、お互い愛し合っていた……はずだった。
二人は貴族が通う学園の同級生で、クラスメイトたちにもその仲の良さは知られていた。
しかし、昨年クラインの妹、レイラが貴族が学園に入学してから状況が変わった。
元々人のいいところがあるクラインは、甘えがちな妹にばかり構う。
そのたびにカレンは聞き分けよく我慢せざるをえなかった。
が、ある日クラインがレイラのためにデートをすっぽかしてからカレンは決心する。
このまま聞き分けのいい婚約者をしていたところで状況は悪くなるだけだ、と。
※ざまぁというよりは改心系です。
※4/5【レイラ視点】【リーアム視点】の間に、入れ忘れていた【女友達視点】の話を追加しました。申し訳ありません。
公爵令嬢の私を捨てておきながら父の元で働きたいとは何事でしょう?
白山さくら
恋愛
「アイリーン、君は1人で生きていけるだろう?僕はステファニーを守る騎士になることにした」浮気相手の発言を真に受けた愚かな婚約者…
兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜
藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。
__婚約破棄、大歓迎だ。
そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った!
勝負は一瞬!王子は場外へ!
シスコン兄と無自覚ブラコン妹。
そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。
周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!?
短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています
カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。
噂好きのローレッタ
水谷繭
恋愛
公爵令嬢リディアの婚約者は、レフィオル王国の第一王子アデルバート殿下だ。しかし、彼はリディアに冷たく、最近は小動物のように愛らしい男爵令嬢フィオナのほうばかり気にかけている。
ついには殿下とフィオナがつき合っているのではないかという噂まで耳にしたリディアは、婚約解消を申し出ることに。しかし、アデルバートは全く納得していないようで……。
※二部以降雰囲気が変わるので、ご注意ください。少し後味悪いかもしれません(主人公はハピエンです)
※小説家になろうにも掲載しています
◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました
(旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)
【完結】殿下! それは恋ではありません、悪役令嬢の呪いです。
Rohdea
恋愛
───婚約破棄されて追放される運命の悪役令嬢に転生ですって!?
そんなのどんな手を使っても回避させて貰うわよ!
侯爵令嬢のディアナは、10歳になったばかりのある日、
自分が前世で大好きだった小説の世界の悪役令嬢に転生した事を思い出す。
(殿下が私に冷たいのはそういう事だったのね)
だけど、このままではヒロインに大好きな婚約者である王子を奪われて、婚約破棄される運命……
いいえ! そんな未来は御免よ! 絶対に回避!
(こうなったら殿下には私を好きになって貰うわ!)
しかし、なかなか思う通りにいかないディアナが思いついて取った行動は、
自分磨きをする事でも何でもなく、
自分に冷たい婚約者の王子が自分に夢中になるように“呪う”事だった……!
そして時は経ち、小説の物語のスタートはもう直前に。
呪われた王子と呪った張本人である悪役令嬢の二人の関係はちょっと困った事になっていた……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる