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しおりを挟むミーハー根性を満たし大満足だった俺ですが、何故にこんな小洒落たカフェにいるんでしょう?
女の子に大人気な小洒落たカフェ。
さらにはVIP感満載の個室……で、向き合う俺ら。
テーブルを挟んで向かいあうのは王都屈指の人気を誇るだろう超絶イケメン。
その目の前に居るのが俺というしょっぱい事実。
「本当にそれだけでいいのか?遠慮することはないぞ」
そう言ってメニューを渡してこようとするゼリファンにいいえと首を振る。
武器屋で野次馬根性を発揮し、武器をプロデュースした結果、何故かお礼にと食事に誘われた。
そして連れて来られたのがこのお洒落なカフェだ。
恐縮しつつ頼んだのは一番人気だというガレットのランチ。
カリモチッ食感のガレットに有機トマトに自家製のオニオンコンフィ、チーズ、卵、アンチョビ、ハム、ハーブが包まれ、グリーンサラダとスープがついてる。
さらには「足りないだろう」と追加されたデザートもあとで運ばれてくる予定だ。
もう充分である。
おっ、チーズとアンチョビが効いててうまい!
「随分と闘いなれていたな。指揮はよくするのか?」
「えー……と、たまに。学園での実習や、あとは領地で領民相手に簡易の魔獣対策としてでしょうか」
ゲームで、とか言えねぇしな。
「殿下らと組んだのはあの場がはじめてだと聞いたが」
「夢幻鳥のこともあって皆さま動きに迷いが生じていましたので。差し出がましいとは思ったのですがつい口出しを……」
「実に見事だった。あの指揮がなければ死者は免れなかっただろう。引率を任されていた者として俺からも礼を言おう」
軽く頭を下げてきたゼリファンに慌てて顔の前で手を振った。
「い、いえっ。とんでもないです!お礼を申し上げるのはこちらの方ですのでっ。流石の見事な闘いぶりでした!」
マーナガルムの一件を口にすれば「手加減する余裕もなかったしな」とフッと笑う姿は大人の色気が半端ない。
ここに座ってるのが綺麗なお姉さんじゃないのがほんと申し訳ねぇな。
譲った魔道具の代金は貰ったのだが「安すぎるだろう」との問いに俺が意見を出して親方が半分趣味で作ってくれてるようなもので……と説明すれば興味を覚えたのか色々聞かれたり。
武器や魔獣の話をしたりしていたら何気に話しが弾んだ。
遠慮してると思っているのかやたらと「食え」と促してくるゼリファンの注文したお肉などもちょこちょこ分けてもらったら、デザートを食べきる頃にはそれなりな時間も経過しお腹もいっぱい。
「奢って頂いて申し訳ありません。それに折角の休日でしたのに……」
「構わない。むしろ破格の成果があったしな」
トンっ、と叩いた先にはその背に似合いすぎる大剣。
「では、またな」
夕日を背に去っていく姿はなんの映画だよ、ってくらい絵になった。
こうして、俺の予期せぬ休日は終わりを遂げた。
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