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しおりを挟むパチパチと眸を瞬いて目の前のレイヴァンを見る。
ゲーム画面で何度も目にした芸術品のような綺麗めイケメン。
冴え冴えとしたその美貌はしかし苦悩と悔恨に塗れていた。
不謹慎だよな、流石に。
口元に浮かびそうになる笑みをなんとか隠す。
怪我を負わせたことを悔やみ、親友を傷つけるところだった事実に懊悩する後輩を前に笑うとかない。絶対ダメだ。
けど、とても人間らしく悩み苦しむレイヴァンの姿に覚えたのは好感だった。
ゲームの中の恰好よくてお気に入りのキャラよりずっといい。
「気にしないでください。あれは不可抗力です。誰が悪いわけでもない」
「いいえ。僕が迂闊だったんです。現に夢幻鳥にすぐさま気づいたエバンス先輩の対処は完璧でした。それにそもそも冷静なら夢幻鳥の幻覚にかかることもなかった……」
首を振る動きに合わせて見事なプラチナブロンドが揺れた。
その後もいくつか慰めの言葉を連ねるもどれも頑なに否定されてしまう。
うう~ん。頑固だなぁ……。
優秀そうだし、あんま挫折とか経験したこともないのかもな。
真面目で責任感があるのはいいことだが、自分を責め落ち込んだレイヴァンの様子がいいことだとも思えない。
「確かにあんなに取り乱されるお姿は意外でした」
きっと月並みな慰めの言葉をいくらかけたところで彼の心は軽くならないのだろう。
そう思って方法を変えた俺の言葉にレイヴァンの表情が一瞬傷ついた色を帯びた。
だけどすぐに唇を噛みしめ「はい、情けない限りです」と俯く彼に、責めてるわけじゃないんだけどなと苦く笑う。
「それって悪いことなんですか?」
「えっ……?」
ぽっかーんとした顔は意外と幼くて可愛かった。
男に可愛いとか微妙だけど。
「もちろん、冷静な判断を失うのは失態とも言えます。でも私たちは学生で、しかも貴方は新入生です。はじめから全て完璧に、そんなことは無理です。様々な経験を積み、自身を高めるために私たちは学園に通っているのでしょう?きっとこれから、君はもっと強くなる」
雰囲気を変えるように悪戯めいた笑みを浮かべてレイヴァンを覗きこむ。
「それにあんな風になりふり構わず取り乱したからこそ伝わることもあると思いますよ?」
「例えば……」そう言いながら、汗で張り付いた髪を肌から離すようにそっと指で払った。
「走り回ってまで私を探して下さったことに吃驚しました。本気でそこまで心配してくださってたんだなって」
「それは当然ですっ!」
「はい。でも言葉だけでは伝わりにくいことも世の中には沢山あります。ラインハルト殿下もきっとお心強いことでしょうね」
「……ラインハルトが?」
あんな失態を晒したのに?と俺の言葉を揶揄と捉えたのか眉を曇らすレイヴァンに柔らかく微笑う。
「あの時、怪我をされた殿下のお姿を見たからこそお二人はあんなに動揺なさったのでしょう?自分のことをそれ程に心配してくださる友人が側に居るというのはとても心強いことだと思いますよ?ラインハルト殿下のようなお立場なら尚更に。
勿論、冷静沈着で何事にも動じない方は頼もしいでしょう。だけど、そんな方が立場や権力に傅くのでなく、本当に自分を想っていてくれるのだと信じられる相手ならもっとずっと心強い筈です」
「まだ私たちは学生なのですから」これからだ、と小さく笑った。
そうしてきっと、彼らはそんな風になっていける。
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