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仕切り直しの状況はますます悪化の一途を辿っていた。

王子は負傷。
リーゼロッテ様は結界を張りつつ王子の治療をしているので一時戦線離脱。
王子自身は治療をされながらも結界の間から敵に魔法を放っているものの、身動きが取れない状態のためやっぱりその効率は落ちていた。

なにより痛いのはレイヴァンとアレン。

味方を攻撃しようとしていた先の動揺を引きずって明らかに動きが鈍っている。
攻撃を放とうとするその瞬間、その先にいるのが本当に敵なのか躊躇ためらいが生まれ今や動きはガッタガタ。

カイルが先陣きって敵を切り裂き、俺も魔法で応戦するもキリがない。

ゲームでの動きを知っているだけに歯がゆさが一層募る。
基本は使用キャラ一人を選択してのストーリーモードだが、ゲームではサブキャラを二人まで選択しての協力プレイも可能だった。

痛みも恐れも感じない二次元の存在と同一視したって仕方のないことはわかってる。
だけどゲームでの連携を知ってるだけに互いが邪魔になるような現状がもどかしい。

それに気づいたのはたまたまだった。
暗闇の中、茂みに隠れ光ったナニか。

それが目の前にある沢山のそれと同じ、獣の目だと気づいた瞬間に足は駆けだしていた。

「危ないっ!!」

「避けろ」そう叫ぼうとした。
だけど前方の敵に意識を集中したレイヴァンにそれが間に合わないのもわかった。

だから、滑り込むようにしてレイヴァンの背を突き飛ばした。

「……っぅ」

痛みと熱さの中、突き飛ばされたレイヴァンが目を見開くのが見えた。

そんな場合じゃないのに「美形は驚いた顔も美形だな」なんて現実逃避めいた感想を抱きながら氷の刃でスコルの喉元を貫く。

そのまま腕を引きちぎられるのは勘弁なんで、思いっきり魔力を込めた刃で一撃で止めを刺した。
力を失ったスコルが倒れ、その毛皮をスコル自身の血と俺の血が濡らす。

「ラファエルっ!?」

「平気だっ!それより早くカタをつけないとこちらがもたない」

駆けつけようとするカイルたちを制する。
平気か平気じゃないかといえば全然平気じゃないし、焼け付くように痛いけど……マジでこのままじゃマズイ。

喰いつかれた左肩を抑え、右手で治療を施す。
治療魔法はさほど得意じゃないが、とりあえず止血ぐらいはできるだろう。

もう少しだけ持ちこたえなきゃな……。

痛みを堪え、あざけるように咆哮ほうこうを撒き散らす魔獣どもを睨み据えた。

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