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しおりを挟む過剰戦力すぎだろ……!
そうツッコんでいられた狩りから一転、場は突如として緊迫した雰囲気に転じた。
茂みから爛々とした目をギラつかせて現れたのはスコルだった。
しかも一匹じゃない。
次から次へと茂みの中から姿を現す。
囲まれると厄介だと思ったのだろう、カイルが大剣を手にスコルの群れへと走り寄る。薙ぎ払われた刃に赤い雫が昏い森へ雨のように降り注ぐ。
カイルを補助するようにアレンも続く。
傷を負ったスコルが甲高い咆哮をあげた。
耳を覆いたくなるようなその音は「嘲るもの」や「高笑い」を語源にするその名に相応しいほどに響き渡る。
そして……、
正に嘲笑うかのようなスコルの雄叫びに、他の魔獣も集まりだした。
「……まずいぞ」
カイルのこめかみから一筋汗が伝った。
「どうしてっ……こんな魔獣が出る程の深層ではない筈だ……!」
「とにかくこの場を持ちこたえなくては……」
リーゼロッテ様を後ろ手に庇いながら周囲を見渡す王子の声に、同じくこわばった表情のレイヴァンが手を前に翳して魔力を溜める。
俺も魔力を練りながら周囲に視線を走らせた。
じわじわとこちらを取り囲もうとするスコルの群れ。
そして樹々の間を飛び交うホーンモモンガに極採色の羽を広げた夜啼き鳥。
ホーンモモンガはともかく、王子のいうとおり通常なら出会う筈のない魔物ばかりだ。
深層部で魔獣同士の争いでもあり逃げてきた魔獣か、などと考えるも悠長に考え込んでいる時間はない。
理由はともかく目の前に大量の魔獣がいるのは事実。
幸いというべきか、それとも不幸にもというべきか。
俺らが通ってきた道筋では他のグループと行き交うこともなかったし、近場に人気はなさそうだ。
風の魔力で魔獣の対処をしながらも忙しなく周囲の様子を窺う。
ギリッと奥歯を噛みしめた。
戦況は芳しくない。
じりじりと追いつめられているのを肌で感じる。
それによりみんなに焦りや不安が生まれていることも。
連携がとれてない。
一人一人の戦闘能力はそれなりに高い。
だけど急な事態に対応しきれていないことと、誰かと共に闘うという経験がないのだろう。
それぞれの力を全然活かしきれていなかった。
味方に当たるのを恐れて攻撃に躊躇いが生まれる。
防御に徹しきれず、攻撃に徹しきれていない。
その状態に歯噛みする。
空中へと走らせた視界の端に黄緑色の物体が過った。
「ラインハルト様っ!!」
リーゼロッテ様の悲鳴に視線を転ずれば、王子へと飛びかかる一匹のスコルの姿があった。
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