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しおりを挟む斬撃が早すぎて目で追えない。
バトル漫画やライトノベルでそんな表現をよく目にするが、実際に目の当たりにしたのははじめてだった。
四角いフィールドの中を武器を構えた二人が飛び交う。
空中に浮かぶスクリーンに映し出される映像。
一人は双剣を握った細身の男。
蛇のようにしなる高い位置で結わえた鮮やかな赤髪が動きに合わせて残像をつくる。
柔軟な体捌きで紙一重の位置で相手の攻撃を避ける彼の口元には、スリルを楽しんでいるかのように弧が描かれている。
弾丸のようにスピードを増して突っ込んでいった双剣の刃をもう一人の男は後ろに飛び難なく避けると、腰を屈めて足に力を込めた。
下方から上方へ振り上げられた一撃。
赤い血飛沫を散らしながら、赤髪の男が吹っ飛んだ。
その瞬間、歓声と悲鳴が上がった。
フィールドのギリギリの位置で止まった赤髪が口元を歪めて上体を起こす。
傷口を抑える手から滴る赤。だがそう深くはないらしい。
すぐさま治療要員が駆け寄り傷を癒す。
フィールドの中央に佇んだ男は剣を振り払い、血の雫を落としたあとで剣を鞘へとしまった。
スクリーンに大写しになる男の姿。
歓声が黄色い声を帯びたものが多くなった。
銀に薄く虹を映しこんだような髪色。
いや、何色だよ?!って感じだが、実際にそんな色なのだ。
基本的には銀髪?なんだけど、ガラスとかダイヤモンドの表面に光の影響で彩光が煌めくことあんじゃん?あんな感じなわけ。
美しすぎる顔立ちはどこか人間離れした凄みを感じさせる。
薄い唇に涼やかな目元、非の打ち所がない僻むのも馬鹿らしい程の男前。
ゼリファン・ラングスウェル。
この国の英雄にして希望。
「光の剣」「輝く剣」を意味するクラウ・ソラスの若き隊長様だ。
「流石ゼリファン様っ!!」
興奮したカイルの声にも「ああ……」と呆然と頷くことしか出来ない。
それぐらい、直に目にするクラウ・ソラスのメンバーの闘いは、ゼリファンの姿は凄かった。
さて、そもそも現在の状況を説明すると。
校外学習の真っ只中である。
毎年この時期に行われる深淵の森での魔獣狩り。
春になり生殖により数が増え、また狂暴性を増している魔獣による被害を抑えるための間引きという現実問題と、学生たちに実戦の経験を積ませるというのが狙いの恒例行事。
この前説明した通り、高貴の生まれの者はその魔力から戦闘力が高く将来的に魔獣討伐に関わる者も多く、だが身分故に実戦経験が足りない者も多いからな。
もちろん、実戦経験の覚束ない学生ばかりでは危険すぎるので毎年派遣されるのがクラウ・ソラス。
そして学年混合で作ったグループでの魔獣狩りに先立ち、やはり毎年行われるのは魔法で作った簡易フィールドで行われるクラウ・ソラスメンバーによる模擬試合だ。
これは生徒たちへと不測の事態が起きても「彼らがいるので大丈夫ですよ!」アピールと、何より彼らの実力を目の当たりにするためだろう。
彼らに憧れを抱いてクラウ・ソラスへ入団を目指す学生たちも多いからな。
ゼリファン隊長たちの戦闘はもちろん、その前の数組の闘いも実に見応えがあった。
俺的にはもう大満足したんでこのまま帰りてぇー。
だが……そういうわけにはいかないんですよね。
はぁ……。
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