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序章

呼声

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(……て)

(誰…)

(…がい)

(…けて)

(ゆう…)


なんだ? 声?


(お…しま…)

(このまま………バンが…)


女の人の声? 小さいし掠れてよく聞き取れないな。

「なあ、なんか女の人の声聞こえなかったか?」

「へ? ……なんも聞こえねぇっすけど?」

「おかしいな。あ、やっぱ聞こえるじゃん」


(たす……ださ…)

(…者様)

(エス……おす…ください…)


「…自分には何も聞こえねぇっすよ。それに、こんな山ん中、誰もいないんじゃないっすか?」

「いやいや、聞こえるって。なんか『おす、ください』とかって。俺ちょっと見てくるから、お前は先戻ってろ。みんなによろしく言っといて。あとで連絡する」

「え? お酢ください? あ、ちょっ、まっ、待ってください! 先輩!? 先ぱーい!」




(助け…さい)

(お願い……)


やっぱ気のせいじゃないよな。助けを呼んでるっぽいけど。なんだ? 事件か? 警察に電話した方がいいのかな?

「誰か! 誰かいますか? 助けが必要ですか?」


(エステ……をどうか)

(お願いし……けて……)


声が近くなってきたな。エステ? こんな山の中で? 意味わからん。


(お願いしま………様)

(エステ……国をどうか……)

(もう時間が………せん)


声はだいぶ近くなったけど姿は見えんな。なんなんだ?

「どこですか? 誰かいますか? 警察に連絡しますか?」


(助けてください!どうか! 私の願いをお聞き届けください)

(このままでは戦が始まってしまいます)

(勇者様、どうかエステバン王国を、民をお救い下さい!)


は? エステバン? 王国? 民? 勇者? やべー、これ関わっちゃマズイやつ? 中二病的な? いや、イっちゃってる系?
ここは聞かなかったことにして帰っとくべきか? いや、でもこんな山ん中の道外れたところで女の人(子?)が一人ってオカシイよな。一応無事なのか、姿は確認しとくべきか? 声が弱々しいからもしかしたら遭難者かもだし。


(どうかお救いください。もう時間がありません!)


あ、なるほど『くい』ね。お酢とかオスじゃなかったのね。


(私にできることならなんでもします! だからどうか!)


なんでもしますって、女の子がそんなこと簡単に言っちゃダメだろ~。可愛い子だったら悪いお兄さん(俺)に喰われちゃうよ?

ん? この崖の下になんか祠みたいのがあるな。あのあたりから聞こえる気がするけど…。高さは2mってとこか。お! 向こうから下りられそうだな。ちょっと行ってみるか。

「ふ~、やっと着いた。大丈夫ですか~? って、あれ? 誰もいない? え、なんか青い光が…もしかして心霊現象とか? って、わ! なんだこれ! 吸い込まれる!? うわっ! わああああぁぁぁぁぁぁ……」
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