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第六話「別れた時のあなたのままで」PART3

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 ミリア達は「暗がりの迷宮」の廊下をひた走っていた。
 
 地上には多数のスライムがいて、ダンジョン内からもスライムが湧き出して来ていて、進むに進めなかったのだけど。
 
 上空待機中のはずの飛行艇プライマイオスの援護砲撃と、地下でサトルと一緒にいたはずのアメリアと武装神父の小隊が援軍として駆けつけてくれたので、彼らに後背を任す形で、ミリア達はダンジョン内へ強行突入を敢行した!
 
 ダンジョン内には多数のスライムがひしめいていたのだけど。
 ルーク達の案内で、最短コースを強行突破し一層を突破……そうして、辿り着いた二層はまったくもって静かなものだった。
 
 けれども、その廊下や扉が凍りついている……そして、ジッとしていると凍りつきそうなほどの冷気が、どこからともなく吹き込んでくる。
 
「……ルーク、サレナ……このダンジョンはいつもこうなのか?」

 訝しげな様子でミリアが尋ねる。

「……そんな訳ないよ……ここのボスだって、クレイゴーレムだし……冷気系のモンスターなんて見たこともない」

「ああ、そんな仕掛けだってないはずだ……それにあれを見ろ」

 ルークが指差す先には、このダンジョンの住民だったと思わしきゴブリンの氷像があった。
 いずれも一瞬で凍りついたようで、立ったまま凍りつき、その目は驚愕に見開かれたままだった。
 
「……在来のモンスターも巻き沿え……か……少なくともこのダンジョン由来の敵じゃないと言うことか……」

「そうね……今のところ、高位の冷気系モンスターが相手ってとこかしら? アイスゴーレムとかなら見た事あるけど、ドラゴンとかは勘弁ね……」

「うううっ……わ、私……帰っちゃ駄目ですかねぇ……」

「それが出来たら、苦労はしないぜ……ミリアさん達、ほっといたら二人だけで行っちまいそうだし……とことん、付き合うしか無いだろ……にしても……報酬金貨十枚は破格とか思ったけど、うまい話にゃ裏がある……ごもっともだ」

「すまんな……報酬は金貨でもう10枚は上乗せさせてもらう……その代わり、もう少し付き合ってもらうぞ」

「わぁお……ミリアさん、太っ腹! ……まぁ、ここで逃げるとかあり得ないしね……ファトリも諦める! ここは冒険者魂って奴の見せ所よ……当てにしてるんだからっ!」

 そう言って、サレナはファトリの背中をバンと叩く……「ひぁっ!」などと言いながら、ファトリも覚悟を決めたように表情を引き締める。
 
 ルーク達にとって、このダンジョンは定期的に通っている庭同然……その言葉に嘘はなく、すでに正確なマッピングが出来ており、ミリア達もすんなり、ボスルームの前に到達する。
 
 周囲の冷気はますます厳しくなり、ファトリとレインの環境維持魔術がなければ、凍死していても不思議ではないほどだった。
 
 ミリアも嫌が応にでも緊張するのだが、ルークが当然のように扉の反対側に待機する。
 
 頷き合って、扉を蹴り開けると……ブワッと冷気が吹き出す……。
 
 その向こう側でまず目に入ったのは、白い鎧のようなものを着た何本もの触手を持つ、異形の騎士。
 そして……手足を氷漬けにされ壁に張り付けられた紅い竜人……サトルの姿だった。
 
「サトルッ! 今、助けるっ!」
 
「ミリア! それにレインかっ! 僕に構わず、今すぐ逃げろ!」

 ミリア達に気付いたサトルが叫ぶ!
 
 けれども、ミリアの行動は素早かった……即座に切り札と言える身体強化を発動! 初手から大剣を引き抜いての全力攻撃を仕掛ける!
 
 白い騎士もその触手を使って、ミリアを迎え撃とうとするが、その人間の限界を超えた動きに触手の迎撃は追いつかず、手にした剣でその斬撃を受け止める!

 
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