19 / 29
第六話「別れた時のあなたのままで」PART2
しおりを挟む
「……聞き及んでいた以上ね……コレを凌いじゃうんだ……さすが女神の使徒だわぁ……」
不意に、黙して語らずだった変異体が口を開く。
それまで、猛烈な数と速度の触手と、手にした二刀の乱撃を見舞われていて、サトルも満身創痍になりながらもそれをしのぎきった所だった。
余裕なんて程遠い……防戦一方であとほんの数撃で力尽きていた……そう思わせる程度には厳しい状況だった。
「……やれやれ……とんだ化物だな……クククッ」
不敵に笑うサトル……予想外の強敵の出現……追い詰められて、逃げることも叶わない……状況は極めて不利だったが……。
サトルの目にはまだ闘志が残っていた。
スライムに屈する気はない……その目はその意思を雄弁に物語っていた。
「あら意外と余裕なのね……さすが、女神の使徒……そう来なくちゃ! でも、ごめんなさいねぇ……これも皇帝陛下直々のご命令でね……けど、不思議ね……貴方、初めましてのはずなのに妙に懐かしい気がするの……なんでかしら?」
酷く馴れ馴れしい口調……けれども、その声に妙に聞き覚えがあるような気がした。
酷く懐かしくも……そして、忘れられないその声の主に思い当たる……。
その声は……。
「そんな……お……ねぇ……ちゃん?」
それは、前世でサトルの姉だったクリスタリアの懐かしい声だった。
けれど、その言い方は正確ではなかった。
……姉に成り代わり、前世の自分を殺した憎むべきスライム……。
それに気付くと共に、サトルに抑えがたい激しい怒りが湧いてくる!
サトルの言葉に、アゴに指を当てて考え込むような素振りを姉に成り代わった異形がする。
それは、良く姉がしていた仕草だった……。
「ああっ! 解ったわっ! あの時の……弟君? でも、なんで? あの子はあの時きっちり殺したはずよぉ……心臓の鼓動が止まって、抱きしめた身体が冷たくなっていく感覚……痺れるくらいに興奮したから、良っく覚えてるわぁ……」
「ああ、きっちり殺されたよ! けど、僕はお前たちを地上から抹殺する存在として、この世界に舞い戻ってきたんだ! お前だけはっ! お前だけはっ! 絶対にっ! 殺すぅううっ!」
叫びと共に両腕に炎を纏い白い鎧の異形……クリスタリアに襲いかかるサトル!
けれども、その一撃が届くよりはるか手前で、両腕両足に触手が絡まり、そのまま壁へ叩きつけられる!
「……駄目よぉ……まだまだお話の途中なんだから……相変わらず慌てんぼさんなんだから……と言うか、私……貴方に感謝してるのよぉ……なんて、素敵なめぐり合わせなのかしらぁ……」
壁に張り付けられた状態で、手足が凍りついていくのをサトルは見ていることしか出来ない。
パワーもスピードも……クリスタリアと名乗った特異個体のほうが上。
おまけに、サトルの持つ炎の加護を打ち消すほどの冷気……尋常な相手ではなかった。
「感謝? 感謝だとっ! ふざけるなっ!」
「だって、私が最強のレベル5になれたのって、あの時君を殺したからなのよぉ……転生者を殺すとすっごいレベル上がるの……全然、知らなかったんけど、おかげで私は有象無象の雑魚スライムから、一気に無敵の存在になれたの……ホント、ありがとねぇ!
おかげで、私ってば……使徒だって、何人も返り討ちにしちゃったくらい強くなったの……。だぁからぁ……この程度じゃ私には、勝てないと思うわ……さてさて、弟クン! これからどうしようかしらね?」
そう言って……彼女は身動きを封じられたサトルへとゆっくりと近づいて行った……。
不意に、黙して語らずだった変異体が口を開く。
それまで、猛烈な数と速度の触手と、手にした二刀の乱撃を見舞われていて、サトルも満身創痍になりながらもそれをしのぎきった所だった。
余裕なんて程遠い……防戦一方であとほんの数撃で力尽きていた……そう思わせる程度には厳しい状況だった。
「……やれやれ……とんだ化物だな……クククッ」
不敵に笑うサトル……予想外の強敵の出現……追い詰められて、逃げることも叶わない……状況は極めて不利だったが……。
サトルの目にはまだ闘志が残っていた。
スライムに屈する気はない……その目はその意思を雄弁に物語っていた。
「あら意外と余裕なのね……さすが、女神の使徒……そう来なくちゃ! でも、ごめんなさいねぇ……これも皇帝陛下直々のご命令でね……けど、不思議ね……貴方、初めましてのはずなのに妙に懐かしい気がするの……なんでかしら?」
酷く馴れ馴れしい口調……けれども、その声に妙に聞き覚えがあるような気がした。
酷く懐かしくも……そして、忘れられないその声の主に思い当たる……。
その声は……。
「そんな……お……ねぇ……ちゃん?」
それは、前世でサトルの姉だったクリスタリアの懐かしい声だった。
けれど、その言い方は正確ではなかった。
……姉に成り代わり、前世の自分を殺した憎むべきスライム……。
それに気付くと共に、サトルに抑えがたい激しい怒りが湧いてくる!
サトルの言葉に、アゴに指を当てて考え込むような素振りを姉に成り代わった異形がする。
それは、良く姉がしていた仕草だった……。
「ああっ! 解ったわっ! あの時の……弟君? でも、なんで? あの子はあの時きっちり殺したはずよぉ……心臓の鼓動が止まって、抱きしめた身体が冷たくなっていく感覚……痺れるくらいに興奮したから、良っく覚えてるわぁ……」
「ああ、きっちり殺されたよ! けど、僕はお前たちを地上から抹殺する存在として、この世界に舞い戻ってきたんだ! お前だけはっ! お前だけはっ! 絶対にっ! 殺すぅううっ!」
叫びと共に両腕に炎を纏い白い鎧の異形……クリスタリアに襲いかかるサトル!
けれども、その一撃が届くよりはるか手前で、両腕両足に触手が絡まり、そのまま壁へ叩きつけられる!
「……駄目よぉ……まだまだお話の途中なんだから……相変わらず慌てんぼさんなんだから……と言うか、私……貴方に感謝してるのよぉ……なんて、素敵なめぐり合わせなのかしらぁ……」
壁に張り付けられた状態で、手足が凍りついていくのをサトルは見ていることしか出来ない。
パワーもスピードも……クリスタリアと名乗った特異個体のほうが上。
おまけに、サトルの持つ炎の加護を打ち消すほどの冷気……尋常な相手ではなかった。
「感謝? 感謝だとっ! ふざけるなっ!」
「だって、私が最強のレベル5になれたのって、あの時君を殺したからなのよぉ……転生者を殺すとすっごいレベル上がるの……全然、知らなかったんけど、おかげで私は有象無象の雑魚スライムから、一気に無敵の存在になれたの……ホント、ありがとねぇ!
おかげで、私ってば……使徒だって、何人も返り討ちにしちゃったくらい強くなったの……。だぁからぁ……この程度じゃ私には、勝てないと思うわ……さてさて、弟クン! これからどうしようかしらね?」
そう言って……彼女は身動きを封じられたサトルへとゆっくりと近づいて行った……。
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
呪う一族の娘は呪われ壊れた家の元住人と共に
焼魚圭
ファンタジー
唐津 那雪、高校生、恋愛経験は特に無し。
メガネをかけたいかにもな非モテ少女。
そんな彼女はあるところで壊れた家を見つけ、魔力を感じた事で危機を感じて急いで家に帰って行った。
家に閉じこもるもそんな那雪を襲撃する人物、そしてその男を倒しに来た男、前原 一真と共に始める戦いの日々が幕を開ける!
※本作品はノベルアップ+にて掲載している紅魚 圭の作品の中の「魔導」のタグの付いた作品の設定や人物の名前などをある程度共有していますが、作品群としては全くの別物であります。
天地伝(てんちでん)
当麻あい
ファンタジー
「なあ、お前には人の心ってなにかわかるか?」
天狗のタイマが、鬼の八枯れ(やつがれ)と共に、現代の明治大正時代へ転生し、生き抜いてゆく、一つの妖怪伝記物語。
前作、『逢魔伝』シリーズものですが、独立した作品として、お楽しみいただけます。
あの世から、明治大正時代へ転生します。完結。
『Nightm@re』という異世界に召喚された学生達が学校間大戦とLevel上げで学校を発展させていく冒険譚。
なすか地上絵
ファンタジー
■概要
突然、『Nightm@re』という地球にそっくりな異世界に連れてこられた高校生たち。自分達の学校を自由に創り変えながら、生き残りをかけて戦う『学校間大戦』。友情あり恋愛ありのちょっぴり切ないダークファンタジー小説。※物語三章から一気にファンタジー要素が増えます。
*過去にエブリスタで書いた物語です。
*カテゴリーランキング最高3位
*HOT男性向け最高26位
うちのポチ知りませんか? 〜異世界転生した愛犬を探して〜
双華
ファンタジー
愛犬(ポチ)の散歩中にトラックにはねられた主人公。
白い空間で女神様に、愛犬は先に転生して異世界に旅立った、と聞かされる。
すぐに追いかけようとするが、そもそも生まれる場所は選べないらしく、転生してから探すしかないらしい。
転生すると、最初からポチと従魔契約が成立しており、ポチがどこかで稼いだ経験値の一部が主人公にも入り、勝手にレベルアップしていくチート仕様だった。
うちのポチはどこに行ったのか、捜索しながら異世界で成長していく物語である。
・たまに閑話で「ポチの冒険」等が入ります。
※ 2020/6/26から「閑話」を従魔の話、略して「従話」に変更しました。
・結構、思い付きで書いているので、矛盾点等、おかしなところも多々有ると思いますが、生温かい目で見てやって下さい。経験値とかも細かい計算はしていません。
沢山の方にお読み頂き、ありがとうございます。
・ホトラン最高2位
・ファンタジー24h最高2位
・ファンタジー週間最高5位
(2020/1/6時点)
評価頂けると、とても励みになります!m(_ _)m
皆様のお陰で、第13回ファンタジー小説大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます。
※ 2020/9/6〜 小説家になろう様にもコッソリ投稿開始しました。
かわいいは正義(チート)でした!
孤子
ファンタジー
ある日、親友と浜辺で遊んでからの帰り道。ついていない一日が終わりを告げようとしていたその時に、親友が海へ転落。
手を掴んで助けようとした私も一緒に溺れ、意識を失った私たち。気が付くと、そこは全く見知らぬ浜辺だった。あたりを見渡せど親友は見つからず、不意に自分の姿を見ると、それはまごうことなきスライムだった!
親友とともにスライムとなった私が異世界で生きる物語。ここに開幕!(なんつって)
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる