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青春小説

「何者」朝井リョウ

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こんなに人のリアルな生々しさを表現できるのか。
読んでいて始終恥ずかしかった。
その恥ずかしいと感じたこと自体が、自分の恥ずかしいところなのだと突き付けられた気がする。
そして恥を恥と分かっていながらも、恥をかきながらあがく姿が格好いいのだと、教えられた。

これは就活をする大学生5人の物語。
それぞれのスタンスで就活期を迎える。

就活生の、ある種狂気を孕んだあの空気感を鮮明に思い出した。
(二度と思い出したくなかったのに)

登場人物5人のうち2人が、本当に見ていてイタい。
恥ずかしすぎて、何度本を放り投げようかと思ったか分からない。
でもそれは、自分自身がそういったことを就活のときにしていたからだった。
イタかった過去の自分を見せつけられて、「もうやめてくれぇ……」と悲鳴をあげながら読み進めた。

話は変わるが、大衆文学より純分文学が好きな私にとって、「何者」を手に取りながら鼻で笑っていた。
ハッ、直木賞? 所詮大衆文学でしょ? みたいな感じで。
どうせサラサラっと読んで「あー今回もいまいちだったな」と思うのだろうとたかをくくっていた。
それなのに、中盤当たりで「ちょっと待って……。これ、めちゃくちゃ面白いのでは……?」とのめり込んでしまい、読了後は「はー……すっげ……すげぇ作品だったわこれ……」となっていた。

私のこの斜に構えた態度が正に、「何者」で描かれていたものだった。
だからこそ、「何者」を読了したときのダメージ(良い意味で)がとんでもなかった。

「楽しい」「悲しい」「辛い」という、よくある感情の揺さぶりではなく、「恥ずかしい」という感情を揺さぶられたのはこれが初めてだった。

最後は、「恥ずかしい」と思っていた子が格好良く見えたり、感情移入していた登場人物が急に恥ずかしい奴に変貌したりと、胸のざわめきが止まらなかった。
ラストはなぜか鳥肌が立ち、思わず涙が出てしまった。

読んでよかった。
出会えてよかったと思えた作品。

結論としては、みんなに読んで欲しい素晴らしい小説。

解説で声を出して笑ったのは初めてだった。
最初から最後まで楽しめた。

------------

比べること自体が烏滸がましいが、「若者」を読んで思い知った。
浅井リョウは表現者。
私は文字で公開オナニーしているだけの人。

それでも私はそれを楽しんでいるから何も問題はないが、一度表現者と思わせるようなものを生み出してみたいものだと思った。

自分の実力のなさを、表現力のなさを思い知ることができたという点でも、「若者」を読んで良かった。

もっと色んなジャンルの本を手に取ってみたくなった。
そう思わせてくれた「若者」に感謝しかない。
大衆文学すげえ。
きっと私が今まで手に取ってこなかったジャンルもきっとすげぇんだろうな。
おらワクワクしてきたぞ。
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