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しおりを挟む孝太郎の引き締まってはいるが滑らかな尻の谷間に綾人の男性器が直接、押し当てられていた。ナマだ。ズボンも下着もその間には無い。孝太郎の尻と綾人の男性器が直に触れ合っていた。勿論、コンドーム等も綾人は装着していなかった。
今はまだ、ただ押し当てているだけだった。その存在を強くアピールするように、綾人は下腹部を孝太郎の臀部にぐりぐりと擦り付ける。
孝太郎ほどの馬鹿デカさは無かったが綾人の性器もしっかりと硬くはなっていた。きっちりと屹立していた。自己主張はしていた。
「分かるか?」と綾人は囁いた。
「なん、嘘だろ」と孝太郎は戸惑っていた。
「これが。何だか。分かるか?」
無造作なリズムで腰を動かしながら綾人は問うた。孝太郎は、
「え、ちん、え? 嘘」
明らかに困惑していた。逃げる事も暴れる事も忘れてしまっているようだった。
「これから何をされるのか。分かるか?」
「え? 何で? 何が」
「孝太郎のに比べると小さくて申し訳ないが」
「え? え? え?」
綾人が適当に腰を動かしているとたまに引っ掛かるくぼみがあった。暗がりの中、目を見開いて確認をせずともそれが何だかはすぐに分かった。孝太郎の尻穴だ。
焦らすみたいに、脅すみたいに、綾人は亀頭の先端でもって何度も孝太郎の尻穴を掻き弾いた。そのたびに孝太郎は「ひッ」だの「あうんッ」だのと軟弱な悲鳴を上げていた。
「初めてか?」
腰の動きはひとまず止めた。孝太郎の背中に胸を合わせて綾人はぺたりと覆い被さる。耳元で呟いた。
「え?」
「尻穴を男に犯されるのは初めてかと聞いたんだよ」
「え、あ。あた、当たり前、だうんッ」
孝太郎が素直に答えてくれていた最中に綾人は最高に力強く腰を前に突き出した。本来は出口である孝太郎のくぼみに綾人の硬い肉棒がめきめきと無理矢理に押し込められていた。
「い、ぎッ」と孝太郎が息を詰まらせる。
女性器とは違って肛門から愛液は分泌されない。潤滑油と成り得るものは互いの汗くらいしかなかった。握り拳の隙間にもう一方の手の指を強引に押し入れるような行為を尻穴と性器という共に敏感な部位で行っているのだ。
「痛いか?」
挑発するように尋ねていた綾人の性器にもそれなりの痛みは走っていた。しかし。止まれない。止まらない。肉体的苦痛を感じながらも綾人は腰を動かし続ける。
「ん。いッ」
「痛いか? 痛いか? 痛い? なあ? 孝太郎」
腰を前後に動かしながら綾人が笑う。ゆっくりとだったがその分、確実な動きで綾人は孝太郎の尻穴を掘っていた。力強く分け入るように挿入し、亀頭の傘で掻き出すつもりでズルリと引き抜く。
「いた、く、ない。いたく、ないぞ」
何の意地だかプライド何だか孝太郎は否定をしたが、誰が何処からどう見ても木下孝太郎は痛がっていた。
「そうか。痛くないか。そうだよな。初めてだろうが尻に処女膜は無いもんな」
単純に前後させていた腰に綾人は別の動きを加えてみる。自身の下っ腹に力を込めて性器を上向かせると、孝太郎の尻の中でもそれまでは当たっていなかった辺りを意識して小突く。引っ掻く。くすぐる。
「んッ、んッ、んんッ」
孝太郎の反応を見ながら綾人は器用に動きを変える。孝太郎の弱点を探っていた。深く押し込めば苦しむ。素早く抜けば良い声を上げる。ずっぽんと完全に尻穴から性器が引き抜かれた後、再びの挿入時に太い亀頭部分が肛門を押し広げる瞬間が一番、痛そうにしていた。綾人の強引な行為によって孝太郎の肛門は浅くか深くか切れてしまっているのだろう。処女膜は無くとも鮮血は流されていた。
「どうだ。ここだろう? ん? なあ?」
「あ。はんッ。んあッ。ぐぬッ。ああッ」
動き続ける綾人の汗と孝太郎の冷や汗と血と、愛液ではないにせよ内臓である尻の内側が完全に乾いているとは思えないからその粘液か何かでか、もしくはもっと単純な話で無理をさせ続けた孝太郎の肛門が一時的に広がってしまったのか、最初に比べると幾らかスムーズに肉棒の出し入れが出来るようになってきた頃、
「綾人は、処女、破った事があるのか?」
息も絶え絶えに言葉を詰まらせながら孝太郎が問うてきた。
「無いな」
綾人は深く考えもせずに応えた。
答えたというよりは適当に受け流しただけだった。
「処女じゃない、女、とは?」
「無いな」
綾人が答えた瞬間、きゅっと孝太郎の尻穴が強く締まった。
「ん?」と綾人は眉間に浅いしわを寄せる。
綾人の言葉に孝太郎が反射的な反応を示した事は分かる。笑みをこぼしたりやそれこそ今の綾人のように眉根を寄せるなどと同じ無意識で無自覚な反応であろう。が、その尻穴を締めるという反応がどういった意味を持っていたのかが分からない。
「孝太郎は」
同じ問いを聞き返そうとして綾人は止めた。気付いてしまったのだ。
綾人が女性経験の無い童貞だったと知った瞬間、孝太郎は尻を引き締めた。おそらくは下半身に力を込めたのだ。腹筋を使って「ふッ!」と嘲笑ったのではないか。
童貞の和泉綾人を下に見て、小馬鹿にしたのではないか。
「孝太郎は女とヤッたことがあるのか?」なんて聞くだけ無駄だった。
童貞を嘲笑う孝太郎の価値観で言うなら、木下孝太郎に女性経験があれば孝太郎の「勝ち」で、無かったとしても綾人と同じという事で「引き分け」なのだ。結果に孝太郎の「負け」が無いのならその答えを求める意味は無かった。
「え? な、なんだ?」
「何でも。ねえ、よっと」
「ん。はんッ。あッ。つよ、強い」
和泉綾人は童貞だった。いや。過去形ではなくて現在もまだ童貞なのか。同性とのアナルセックスは「セックス」に含まれるのだろうか。
「セックス」に勝ち負けがあるとは思わないが、もしもこの行為に勝ち負けがあるとするならばそれはやはり先に相手を絶頂へと導いた方の勝ちなのではないだろうか。無理矢理に犯されて無様にいかされる。頭では嫌なのに体は気持ち良いのだ。他人に肉体を支配される感覚に陥るのではないだろうか。それはきっと最高の屈辱だろう。
「孝太郎」
大きく腰を振りながら綾人が囁く。
「孝太郎。孝太郎。孝太郎」
優しく優しく孝太郎の鼓膜をくすぐる。
「分かるか? 孝太郎の中に俺のモノが出たり、入ったり、出たり、入ったり」
「ん。ふッ。ふッ。ふッ。ふッ。ふッ」
「動いてるのが分かるだろう? 感じるか? 感じてるな? これが俺だぞ」
「あふッ。ああ。ふッ。痛ッ!」
孝太郎が鋭い悲鳴を上げた。不意に綾人が孝太郎の腰を強く叩いたのだ。
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