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第二章
第百五話 追憶令嬢のお休み
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ごきげんよう。レティシア・ルーンですわ。
海の皇族が予定より早く帰国されました。おかげで私の予定が空きました。
ロキ様達は賓客扱いに慣れず困惑したお顔ですが、慣れてもらうしかありません。そしてロキ様は貴族としての勉強が始まりました。いずれは貴族として生きることもお父様が視野に入れています。ロキ様達のことはお父様が全てを進めてくださるので、私は時々お菓子を献上して見守るだけですわ。エドワードと歳が近いので良いお友達になれますかね。
「お嬢様大変です!!」
課題をしているとシエルが荒々しく扉を開けて入ってきました。いつも落ち着いているシエルの慌てる姿は珍しいです。
「シエル、落ち着いてください。何事ですか?」
シエルが冷静な顔に戻り礼をしました。机に置かれたカップに手を伸ばし、お茶に口をつけながら言葉を待ちます。
「申し訳ありません。アリス・マートン侯爵令嬢がお見えです」
ここで聞こえるはずのない名前に首を傾げます。私に届いていた手紙の処理は全て終えましたが、アリス様からのお手紙はありませんでした。
「先触れは?」
「ありません」
「どちらに?」
「玄関に。エドワード様が対応してます」
お茶飲んでる場合ではありませんわ。カップを置いて支度を整えて急いで玄関に向かいます。
「姉様に無礼を尽くすマートン侯爵家がなんの用ですか」
「私はレティシア様を尊敬してます」
「姉様が尊敬されるのは当然です。マートン侯爵家は信用できません。姉様への数々の無礼、特にお怪我をさせたことは生涯許しません」
笑顔で言い争う二人を止めなければいけません。争う二人の言葉を遮りますか。
「エディ、アリス様への無礼は許しません。ご令嬢への態度ではありません。言葉の重みを自覚なさい」
「姉様、でも」
「エドワード」
不満そうなエドワードの瞳を見つめて優雅に微笑みます。
「失礼しました。ルーン公爵家嫡男エドワード・ルーンと申します」
「こちらこそ突然の訪問申し訳ありません。アリス・マートンと申します」
今回は両方悪いですわ。先触れなしの訪問は非常識です。まして敵対派閥の令嬢が突然押し掛けてくるなどありえないことです。私もよくマートン様と喧嘩しますし相性の悪い相手との応対は苦痛と知ってます。
きちんと謝罪して挨拶をしたエディに優しく笑いかけます。
「エディは自慢の弟ですわ。アリス様、失礼しました。こちらにどうぞ」
「姉様、僕は?」
「エディ、ごめんなさい。また時間を作ります」
「約束ですよ」
エディの授業が終われば一緒に過ごす予定でした。
アリス様が帰ったらきちんとエドワードを褒めにいきましょう。今日のこともですが、今までのことも。教育には誉めて認めることも大事ですから。今は突然訪問をしたお客様が優先です。
アリス様を自室にお連れして、椅子に案内すると扉の閉まる音と共に勢いよく抱きつかれました。
「アリス様?」
「レティシア様」
胸に温かいものが触れ、泣いていることに驚きを隠してリオの真似をして頭を撫でて、そっと背中を叩きます。これは待つしかありません。嫌な予感がしますわ。
さようなら。私の平穏な休日。久しぶりの貴重なお休みでしたのに。ケイト達に会いにいけなくなりましたわ。
「おかあさまと、お、ねえ、さまが」
「ゆっくりでいいですわ。今日は予定がありませんからお付き合いしますわ」
嗚咽が止まるまでしばらく抱き締めていました。リオは私が泣き止むのをこんな心境で待ってるんでしょうか。嗚咽が止まり呼吸も落ち着いているので、手元のチョコをアリス様の口に入れます。
なぜか私の部屋にはいつもチョコが常備してありますの。
「美味しいです」
「良かったですわ」
腕を解いて、椅子にご案内して微笑むアリス様にお茶を渡します。私は正面に座りカップに手を伸ばしお茶を口に入れ、鎮静作用のある茶葉を選んだ自慢の侍女に笑みを深めました。
アリス様がお茶を一気に飲み、息を吸いました。シエルはすぐにお代わりを用意しました。
「お母様とお姉様がノア様に手紙を出させてくれません!!
せっかくノア様が遠乗りに誘っていただきましたのに、勝手にお断りの文を出しましたの!!お父様には許可をもらって、準備もしっかりしてましたのに!!」
声を荒げて、目をつり上げて物凄く怒ってますわ。お姉様にそっくりですわ。侯爵の許可があるのに反対する侯爵夫人達って、いえ他の家の事情には口を出してはいけません。文を出すだけなら、グランド伯爵家なら遠くありませんし、
「私の家から出しますか?」
「きっと届きませんわ。侍女の名前で出した手紙もお姉様の手にありました」
うちの手紙がマートン侯爵家に手を出されるなんてありえませんが。でも非常識なマートン様ならありえますか?それなら、
「私がノア様に手紙を書くので中に入れましょう。私の手紙なら届きますわ。手を出せば不敬ですから」
「レティシア様!!」
ようやく止まった涙がまた溢れました。
「泣かないでくださいませ」
「ノア様と遠乗り……」
頭を撫でながら、遠乗りに行きたいというアリス様が泣き止むのを待ちます。お手紙を出すことまでなら手伝えますがそれ以上は…。
「私と交遊がらあると知れたら大変ですし…」
「お父様はご存じですわ」
「ご存じ?」
「お父様はなんでも知ってます。学園にも影を忍ばせお姉様の暴挙は捨て置いています。話しても時間の無駄ですから。マートン侯爵家は自分の行動は自分で責任を取るように躾けられてます。レティシア様へのお姉様の暴挙はお父様の命ではありませんわ」
マートン様の暴挙を捨て置く?
学園に影を忍び込ませてることをうちに話していいんですか?まぁ予想はつくので、調べませんしお父様には伝えませんわ。色々突っ込みたいですが、他家のことは気にしてはいけません。
「私とのことで侯爵からは?」
「お父様はルーン公爵はお嫌いだけど、レティシア様は認めています。だから仲良くしたいなら好きにしなさいって」
「そうですか。私と親しくすることで、マートン侯爵がルーン公爵家に報復することは?」
「ルーン公爵が動かなければ、ありえないと思います。学園のことにも私達のことにも、お父様に助力を求めない限りは動かれません。お父様はお忙しいので」
「私といることで、お母様とお姉様は?」
「ここに来た時点で知ってると思います。巻き込んでしまってごめんなさい」
申し訳なさそうに謝るアリス様。マートン様の非常識に巻き込まれている被害者ですわ。マートン侯爵家が動かないなら先輩として力を貸しましょう。エドワードの無礼への償いもこめて。
「大事な後輩ですもの。もともと目の敵にされてますから気にしないでください。貴方がお姉様達の確執を気にしないなら力になりますわ」
「レティシア様!!」
アリス様も抱きつき癖あるのでしょうか。勢いよく抱きつかれ背中に手を回してゆっくりと叩いて落ち着くのを待ちます。
「お母様とお姉様に何を言われても平気です。負けません。マートン侯爵家の名に恥じない行動をしているかぎりお父様は私の味方ですわ。もしお姉様がレティシア様を責めるなら私がお姉様を言い負かしますわ」
アリス様やっぱり好戦的な性格です。
挑戦的な笑みを浮かべる姿は好印象です。ここまで覚悟を決めてるなら応援しましょう。マートン侯爵さえ敵にまわらないなら大丈夫ですわ。マートン様なら私個人でお相手しますわ。
意気込むアリス様の体を放して、手紙を書く用意をシエルに命じます。
「ほどほどにしてくださいね。遠乗りはいつのご予定ですか?」
「来週です」
「ノア様にお誘いのお手紙を書きましょうか」
「怒らないでしょうか」
「気にしてないと思いますよ。事情を説明すればわかってくれますわ」
「当日邪魔されない?」
「前日は一緒にマール公爵邸にお泊りしましょう。次の日は一緒に行きましょう。邪魔はしませんので、遠乗りにお付き合いしてもいいかしら?」
来週なら予定を調整すればなんとかなりますわ。海の皇族が三日も早く帰ってくれたので、そこに予定を入れ直しましょう。前日はお茶会が終わった後にアリス様と合流しましょう。
「マール公爵邸にお泊りしてもいいんですか?」
「マール公爵夫妻は優しいから心配しないで。マートン侯爵の許可が取れたらですが」
「ありがとうございます。お父様はお任せください」
「前日はルーン公爵邸に送ってもらってください。一緒にマール公爵邸に行きましょう」
「はい。」
「私の手紙もアリス様に届かないのが困りましたわ」
「お父様宛に書いていただければ」
「それはできません。ハンナの名前なら届きますか?」
「お母様に中身を見られてしまいますわ」
「アリス様、これあげますわ。」
暗号表その一を渡します。ケイトと使っている簡単な暗号なので知られても困りません。ルーンの暗号とは一切関連のないものです。私の私的なものなので、その三まであります。
「ハンナの手紙の裏にこの暗号でお手紙を書きます。お姉様達に見つからないように保管できますか?」
「ありがとうございます。お任せください」
これで後は手回しするだけですわ。
参加する予定のなかった派閥のお茶会に参加の返事を送ります。そして伯母様には明日のお茶会の後にお泊りしていいかと手紙を。
次にリオに友達との遠乗りに付き合ってほしいと日付を指定してお願いの手紙を。
アリス様の安全のためには私とノア様だけでは不安です。
アリス様の手紙が書き終わりましたわね。
ノア様には遠乗りは私とリオもご一緒していいかの一筆を添えアーモンドのお菓子と一緒に手紙を送りましょう。
全ての手配を終え、暗くなる前にアリス様は満足されて帰っていきました。
その後はエディと一緒に過ごしました。
中々平穏な休みになりませんでした。私のお休みはなくなりましたが、仕方ありませんわ。
明日はリール公爵邸のお茶会です。念のためバイオリンの練習をしましょう。
海の皇族が予定より早く帰国されました。おかげで私の予定が空きました。
ロキ様達は賓客扱いに慣れず困惑したお顔ですが、慣れてもらうしかありません。そしてロキ様は貴族としての勉強が始まりました。いずれは貴族として生きることもお父様が視野に入れています。ロキ様達のことはお父様が全てを進めてくださるので、私は時々お菓子を献上して見守るだけですわ。エドワードと歳が近いので良いお友達になれますかね。
「お嬢様大変です!!」
課題をしているとシエルが荒々しく扉を開けて入ってきました。いつも落ち着いているシエルの慌てる姿は珍しいです。
「シエル、落ち着いてください。何事ですか?」
シエルが冷静な顔に戻り礼をしました。机に置かれたカップに手を伸ばし、お茶に口をつけながら言葉を待ちます。
「申し訳ありません。アリス・マートン侯爵令嬢がお見えです」
ここで聞こえるはずのない名前に首を傾げます。私に届いていた手紙の処理は全て終えましたが、アリス様からのお手紙はありませんでした。
「先触れは?」
「ありません」
「どちらに?」
「玄関に。エドワード様が対応してます」
お茶飲んでる場合ではありませんわ。カップを置いて支度を整えて急いで玄関に向かいます。
「姉様に無礼を尽くすマートン侯爵家がなんの用ですか」
「私はレティシア様を尊敬してます」
「姉様が尊敬されるのは当然です。マートン侯爵家は信用できません。姉様への数々の無礼、特にお怪我をさせたことは生涯許しません」
笑顔で言い争う二人を止めなければいけません。争う二人の言葉を遮りますか。
「エディ、アリス様への無礼は許しません。ご令嬢への態度ではありません。言葉の重みを自覚なさい」
「姉様、でも」
「エドワード」
不満そうなエドワードの瞳を見つめて優雅に微笑みます。
「失礼しました。ルーン公爵家嫡男エドワード・ルーンと申します」
「こちらこそ突然の訪問申し訳ありません。アリス・マートンと申します」
今回は両方悪いですわ。先触れなしの訪問は非常識です。まして敵対派閥の令嬢が突然押し掛けてくるなどありえないことです。私もよくマートン様と喧嘩しますし相性の悪い相手との応対は苦痛と知ってます。
きちんと謝罪して挨拶をしたエディに優しく笑いかけます。
「エディは自慢の弟ですわ。アリス様、失礼しました。こちらにどうぞ」
「姉様、僕は?」
「エディ、ごめんなさい。また時間を作ります」
「約束ですよ」
エディの授業が終われば一緒に過ごす予定でした。
アリス様が帰ったらきちんとエドワードを褒めにいきましょう。今日のこともですが、今までのことも。教育には誉めて認めることも大事ですから。今は突然訪問をしたお客様が優先です。
アリス様を自室にお連れして、椅子に案内すると扉の閉まる音と共に勢いよく抱きつかれました。
「アリス様?」
「レティシア様」
胸に温かいものが触れ、泣いていることに驚きを隠してリオの真似をして頭を撫でて、そっと背中を叩きます。これは待つしかありません。嫌な予感がしますわ。
さようなら。私の平穏な休日。久しぶりの貴重なお休みでしたのに。ケイト達に会いにいけなくなりましたわ。
「おかあさまと、お、ねえ、さまが」
「ゆっくりでいいですわ。今日は予定がありませんからお付き合いしますわ」
嗚咽が止まるまでしばらく抱き締めていました。リオは私が泣き止むのをこんな心境で待ってるんでしょうか。嗚咽が止まり呼吸も落ち着いているので、手元のチョコをアリス様の口に入れます。
なぜか私の部屋にはいつもチョコが常備してありますの。
「美味しいです」
「良かったですわ」
腕を解いて、椅子にご案内して微笑むアリス様にお茶を渡します。私は正面に座りカップに手を伸ばしお茶を口に入れ、鎮静作用のある茶葉を選んだ自慢の侍女に笑みを深めました。
アリス様がお茶を一気に飲み、息を吸いました。シエルはすぐにお代わりを用意しました。
「お母様とお姉様がノア様に手紙を出させてくれません!!
せっかくノア様が遠乗りに誘っていただきましたのに、勝手にお断りの文を出しましたの!!お父様には許可をもらって、準備もしっかりしてましたのに!!」
声を荒げて、目をつり上げて物凄く怒ってますわ。お姉様にそっくりですわ。侯爵の許可があるのに反対する侯爵夫人達って、いえ他の家の事情には口を出してはいけません。文を出すだけなら、グランド伯爵家なら遠くありませんし、
「私の家から出しますか?」
「きっと届きませんわ。侍女の名前で出した手紙もお姉様の手にありました」
うちの手紙がマートン侯爵家に手を出されるなんてありえませんが。でも非常識なマートン様ならありえますか?それなら、
「私がノア様に手紙を書くので中に入れましょう。私の手紙なら届きますわ。手を出せば不敬ですから」
「レティシア様!!」
ようやく止まった涙がまた溢れました。
「泣かないでくださいませ」
「ノア様と遠乗り……」
頭を撫でながら、遠乗りに行きたいというアリス様が泣き止むのを待ちます。お手紙を出すことまでなら手伝えますがそれ以上は…。
「私と交遊がらあると知れたら大変ですし…」
「お父様はご存じですわ」
「ご存じ?」
「お父様はなんでも知ってます。学園にも影を忍ばせお姉様の暴挙は捨て置いています。話しても時間の無駄ですから。マートン侯爵家は自分の行動は自分で責任を取るように躾けられてます。レティシア様へのお姉様の暴挙はお父様の命ではありませんわ」
マートン様の暴挙を捨て置く?
学園に影を忍び込ませてることをうちに話していいんですか?まぁ予想はつくので、調べませんしお父様には伝えませんわ。色々突っ込みたいですが、他家のことは気にしてはいけません。
「私とのことで侯爵からは?」
「お父様はルーン公爵はお嫌いだけど、レティシア様は認めています。だから仲良くしたいなら好きにしなさいって」
「そうですか。私と親しくすることで、マートン侯爵がルーン公爵家に報復することは?」
「ルーン公爵が動かなければ、ありえないと思います。学園のことにも私達のことにも、お父様に助力を求めない限りは動かれません。お父様はお忙しいので」
「私といることで、お母様とお姉様は?」
「ここに来た時点で知ってると思います。巻き込んでしまってごめんなさい」
申し訳なさそうに謝るアリス様。マートン様の非常識に巻き込まれている被害者ですわ。マートン侯爵家が動かないなら先輩として力を貸しましょう。エドワードの無礼への償いもこめて。
「大事な後輩ですもの。もともと目の敵にされてますから気にしないでください。貴方がお姉様達の確執を気にしないなら力になりますわ」
「レティシア様!!」
アリス様も抱きつき癖あるのでしょうか。勢いよく抱きつかれ背中に手を回してゆっくりと叩いて落ち着くのを待ちます。
「お母様とお姉様に何を言われても平気です。負けません。マートン侯爵家の名に恥じない行動をしているかぎりお父様は私の味方ですわ。もしお姉様がレティシア様を責めるなら私がお姉様を言い負かしますわ」
アリス様やっぱり好戦的な性格です。
挑戦的な笑みを浮かべる姿は好印象です。ここまで覚悟を決めてるなら応援しましょう。マートン侯爵さえ敵にまわらないなら大丈夫ですわ。マートン様なら私個人でお相手しますわ。
意気込むアリス様の体を放して、手紙を書く用意をシエルに命じます。
「ほどほどにしてくださいね。遠乗りはいつのご予定ですか?」
「来週です」
「ノア様にお誘いのお手紙を書きましょうか」
「怒らないでしょうか」
「気にしてないと思いますよ。事情を説明すればわかってくれますわ」
「当日邪魔されない?」
「前日は一緒にマール公爵邸にお泊りしましょう。次の日は一緒に行きましょう。邪魔はしませんので、遠乗りにお付き合いしてもいいかしら?」
来週なら予定を調整すればなんとかなりますわ。海の皇族が三日も早く帰ってくれたので、そこに予定を入れ直しましょう。前日はお茶会が終わった後にアリス様と合流しましょう。
「マール公爵邸にお泊りしてもいいんですか?」
「マール公爵夫妻は優しいから心配しないで。マートン侯爵の許可が取れたらですが」
「ありがとうございます。お父様はお任せください」
「前日はルーン公爵邸に送ってもらってください。一緒にマール公爵邸に行きましょう」
「はい。」
「私の手紙もアリス様に届かないのが困りましたわ」
「お父様宛に書いていただければ」
「それはできません。ハンナの名前なら届きますか?」
「お母様に中身を見られてしまいますわ」
「アリス様、これあげますわ。」
暗号表その一を渡します。ケイトと使っている簡単な暗号なので知られても困りません。ルーンの暗号とは一切関連のないものです。私の私的なものなので、その三まであります。
「ハンナの手紙の裏にこの暗号でお手紙を書きます。お姉様達に見つからないように保管できますか?」
「ありがとうございます。お任せください」
これで後は手回しするだけですわ。
参加する予定のなかった派閥のお茶会に参加の返事を送ります。そして伯母様には明日のお茶会の後にお泊りしていいかと手紙を。
次にリオに友達との遠乗りに付き合ってほしいと日付を指定してお願いの手紙を。
アリス様の安全のためには私とノア様だけでは不安です。
アリス様の手紙が書き終わりましたわね。
ノア様には遠乗りは私とリオもご一緒していいかの一筆を添えアーモンドのお菓子と一緒に手紙を送りましょう。
全ての手配を終え、暗くなる前にアリス様は満足されて帰っていきました。
その後はエディと一緒に過ごしました。
中々平穏な休みになりませんでした。私のお休みはなくなりましたが、仕方ありませんわ。
明日はリール公爵邸のお茶会です。念のためバイオリンの練習をしましょう。
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