指先で描く恋模様

三神 凜緒

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第二章

乙女たちの食事風景

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人が人に惹かれるのに理由などなく、人が人を憎む事にも理由などない。そこに理屈を並べてしまったら、それはただの思い込みでしかない。
きっとそこにいて欲しいと思うのはただの本能であり、感情は後からついて来るもの。
な~んて、爬虫類や魚類などの生物なら思うかな?

でもある程度の知能が生まれると、生物は異性への想いに本能以外の感情を織り交ぜていく。それは何も人間だけの特別な物じゃない。鳥類や哺乳類などにもみられる当たり前の現象。
だからアタイもまた、この想いに何らかの理屈を求めて彷徨ってるんだろうか……


「現実はいつだって非情だよね~?」
「いきなり、どしたの?」
「現実が理想通りであった方が、実際珍しいんじゃない? 一体何を憂いてるの……」

その日の昼食は、いつも一緒にいる東谷君がおらず、樹はかなりテンションが下がっていた。
最近定番になっている三人で、学生ホールのテーブルを囲んでの食事。
周りを見回せば女子はアタイ達しかおらず、真っ黒な学ランが食事中も活発に動いているのが視界の端に写る。
明日か明後日には、東谷君も風邪が治り登校すると思うんだけど、想い人が傍にいないという状態は恋する乙女にとってはかなりのダメージみたい……

「ほぼ男子しかいない学校と言っても、それで数少ない女子に人気が集まるかといえば、そんな事もなく。異性という物を感じないのか、アホな男子学生の関心は大体が美人の先生などに向かれるのは何故だ!」
「……力こぶしを作りながら力説する内容がそれなの?」

立ち上がり腕を振り上げながら力説すると、何やら周りの男子生徒の視線を集めてるような気がする。アタイが視線を周りに向ければ、男子たちは慌てて視線を外すと、下手な口笛を吹いたり、目の前の弁当に一心不乱に向かい合ったりと、怪しい挙動をし始める。
そんな様子を、苦笑いしながら樹も見ていたようで、大きくため息を吐いていた。

「はあ~~、確かに東谷君も工藤先生にメロメロな部分がない事もないけど~」
「実際誰の趣味なのか、女教師は全員美人な気がするよね……うん。これは由々しき問題だ」

まさかとは思うが、それってあの鳥羽校長の趣味なのかな? なんて勘ぐっちゃうけど、女好きそうには見えないんだけど‥坊主でも結局男だという事なの?
実際の所、それで問題が起こってる訳じゃないから、別に良いのかも知れないけど~
色々と納得できないものを感じながら、しぶしぶイスに座り直すと、周りの男子も落ち着いたのか、あからさまにホっとしている。

「その女教師の選考基準と、美桜の悩みがどう繋がるの?」
「直接繋がる訳じゃないんだけどさ~アタイもああいう魅力があれば、先輩も振りむいてくれるのかな~って……思っちゃって」
「そっちか…参考になるかどうか分からないけど~工藤先生の魅力って言えばさ~」
「うんうん!」

人差し指を立て、視線を上に向けながら唸りながら必死に思い出してくれている。
その内、アタイだけじゃなくて、葵まで前のめりになりながら樹の一挙手一投足に注目を集めると、その視線が恥ずかしいのか、頬を赤くしてコホンと咳をした。

「お金をかけてない小物などを使ったおしゃれに、姿勢の良さや字の綺麗さ? それに古典などの知識もあるよね。後は、化粧や香水などは最小限にして、近づきやすい雰囲気を醸し出してるよね」
「へえ~」
「ボクの見た限りだけどね? 正直真似出来るものといえば、持っている小物とか、ちょっと可愛いアクセサリーなどを付けたりする位じゃない?」
「そっか~~基本的に非の打ちどころがないよね~工藤先生って……」
「要約するとこれはさ~基本的にアタイたちでは無理だって事では?」
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