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第二章
三人の趣味趣向
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変な夢から覚め、起きればそこは、阿鼻叫喚の地獄絵図だった。
この前の研修旅行の時も、勝手に抜け出して心労が祟っていた担任が、ほんのちょっぴり落ち込んで、精神安定剤(ラムネ味の薬らしい)をがぶ飲みして、息が出来ずに悶えて生徒たちに介抱されていた……って、なんでじゃ!?
しかも、周りには呆れた表情の二人がいるし…ほんとに何があったんだろ?
一時限目までのわずかな間寝てただけだと思うんだけど…あれ? もしかして、もっと長い間寝てたのかな?
あまりの自体に焦って時計を確認すれば、予想通りの時間のまま…あと五分で一時限目が始まる所。
そして、訳の分からないまま担任の熊田先生は、最近中年太りで悩み始めた体を二人の男子に肩を借り、保健室まで運ばれる事になった…まるでケガ人のようだな!?
「熊田先生可哀そうだね~。研修旅行の件と合わせて、ボクたちのせいで心労が祟ってるのかな?」
「いや~この前の健康診断で糖尿病と診断されて、ナーバスになりやすいみたいだよ?」
「精神安定剤(ラムネ味?の薬…だと思うな~?)の飲みすぎかい…!?」
結局、担任の熊田先生は何事もなくラムネを吐き出す事が出来、今は美人の保険医さんにカウンセラーを受けておる! 運んだ男子曰く、かなりデレデレだったみたい!
って、まさか……熊田先生まさかそれが狙いだとか言わないよね~?
「そんで、何~んでそんなに眠い訳?」
「ちょっと…深夜まで映画の新作の情報集めをね…ふあっ…あ~~あっ」
「美桜は相変わらず映画好きだよね~?」
腕を伸ばして背伸びしたり、大きなあくびを何度もしていくと、少しずつ眠気が薄れていくのを感じる。何でこんな事で解消されるかは分からないけど~
実はあれこれと悩んで眠れなくなって、結局暗い室内でずっとスマホ画面とにらめっこしていたのだ。
「あらあら~大きな口だね~」
「夜のスマホは眠れなくなる原因になるよ~? ちゃんと寝る二時間前には使用を停止しないと!」
「葵はいつも、家の母さん以上に母さんな言葉を言うね…」
「不摂生な事ばかりしてる美桜が悪い」
樹にはしない、アタイに対してする葵の小言に口元を歪ませながら、保健室に運ばれた熊田先生を見て、樹は何かを思い出したのは少し影のある表情で悩んでいた。
その悩みを吹き飛ばすように、アタイは樹の肩を抱くと、大袈裟に新作映画の話をし始める。
「聞いてよ聞いてよ~、この冬に始まる新作映画何だけど…現代に甦った阿修羅様が、六本の腕を使ってサバイバルゲームで三人同時プレイして、無双する話なんだけどさ~!」
「ゲームするだけの話が映画になったんだ…しかもわざわざ特撮使って…」
「どこに需要を求めているのか意味分からない話よね?」
どう~考えてもB級映画しにしかならない感じの内容に、二人ともテンションはだだ下がりしていた。それは毎回アタイが映画の話を持ち出すと起こる定番の反応だから、特に落ち込みなどはしないんだけど、その布教活動自体を諦めた訳ではない!
「美桜ってそういえば、映画大好きだったね…」
「それも恋愛小説とか、定番には全くノータッチだよね?」
「それの何が悪い!?――――え~っと…ん…」
樹だって漫才ばかり見ていて、葵に至っては子供向けのアニメとか好きなくせに~!
などとワナワナと心の中で愚痴りながらも、そんな事はおくびにも出さずにコホンと咳払いしてから、ニコっと笑みを作る。
「二人とも~やっぱり良い作品ってのはテレビよりも、大画面で観るだけの価値があると思わない?」
「お金ないもん~」
「人混みに入ると具合が悪くなってダメ」
「ああ~さいですか…」
それを言われちゃ~おしまいです。と力なく机に突っ伏しでスライムの様に体を脱力させていく。
あ~もうダメかもしんない…結局誰も、アタイの趣味を理解してくんないし~と、突っ伏しながらため息を吐いている間も耳に二人の声が聞こえてくる。
「…この前も『犬猫≪けんびょう≫の集い』とかって、犬と猫が力を合わせて、人間を襲う空飛ぶサメと戦う映画観てたよね? サメにも猫にも犬にも翼生えていたけど」
「『この世に鰹節を生み出した人類に仇なす奴をボクは許さない!』って、猫の戦士のキメセリフは爆笑した~無駄にイケボなのもグッドだったよね~」
「握ってる鰹節に念力送ると、光の剣になってサメを両断していたね?」
「必殺剣の名前は確か…『鯖鯖剣!』って言って、毎回相方の犬に『お前の持ってるのは鰹じゃぼけ~!』っていうツッコミと共に閃光が走るんだよね~」
黙って聞いていれば…二人ともアタイの勧めた映画しっかりと観とるじゃないか!
不思議な力で元気を取り戻すと、何も言わずに二人の頭を撫でる。
三人で馬鹿みたいに笑っていると、先程まであった騒動が何だったのかも思い出せなくなった。
この前の研修旅行の時も、勝手に抜け出して心労が祟っていた担任が、ほんのちょっぴり落ち込んで、精神安定剤(ラムネ味の薬らしい)をがぶ飲みして、息が出来ずに悶えて生徒たちに介抱されていた……って、なんでじゃ!?
しかも、周りには呆れた表情の二人がいるし…ほんとに何があったんだろ?
一時限目までのわずかな間寝てただけだと思うんだけど…あれ? もしかして、もっと長い間寝てたのかな?
あまりの自体に焦って時計を確認すれば、予想通りの時間のまま…あと五分で一時限目が始まる所。
そして、訳の分からないまま担任の熊田先生は、最近中年太りで悩み始めた体を二人の男子に肩を借り、保健室まで運ばれる事になった…まるでケガ人のようだな!?
「熊田先生可哀そうだね~。研修旅行の件と合わせて、ボクたちのせいで心労が祟ってるのかな?」
「いや~この前の健康診断で糖尿病と診断されて、ナーバスになりやすいみたいだよ?」
「精神安定剤(ラムネ味?の薬…だと思うな~?)の飲みすぎかい…!?」
結局、担任の熊田先生は何事もなくラムネを吐き出す事が出来、今は美人の保険医さんにカウンセラーを受けておる! 運んだ男子曰く、かなりデレデレだったみたい!
って、まさか……熊田先生まさかそれが狙いだとか言わないよね~?
「そんで、何~んでそんなに眠い訳?」
「ちょっと…深夜まで映画の新作の情報集めをね…ふあっ…あ~~あっ」
「美桜は相変わらず映画好きだよね~?」
腕を伸ばして背伸びしたり、大きなあくびを何度もしていくと、少しずつ眠気が薄れていくのを感じる。何でこんな事で解消されるかは分からないけど~
実はあれこれと悩んで眠れなくなって、結局暗い室内でずっとスマホ画面とにらめっこしていたのだ。
「あらあら~大きな口だね~」
「夜のスマホは眠れなくなる原因になるよ~? ちゃんと寝る二時間前には使用を停止しないと!」
「葵はいつも、家の母さん以上に母さんな言葉を言うね…」
「不摂生な事ばかりしてる美桜が悪い」
樹にはしない、アタイに対してする葵の小言に口元を歪ませながら、保健室に運ばれた熊田先生を見て、樹は何かを思い出したのは少し影のある表情で悩んでいた。
その悩みを吹き飛ばすように、アタイは樹の肩を抱くと、大袈裟に新作映画の話をし始める。
「聞いてよ聞いてよ~、この冬に始まる新作映画何だけど…現代に甦った阿修羅様が、六本の腕を使ってサバイバルゲームで三人同時プレイして、無双する話なんだけどさ~!」
「ゲームするだけの話が映画になったんだ…しかもわざわざ特撮使って…」
「どこに需要を求めているのか意味分からない話よね?」
どう~考えてもB級映画しにしかならない感じの内容に、二人ともテンションはだだ下がりしていた。それは毎回アタイが映画の話を持ち出すと起こる定番の反応だから、特に落ち込みなどはしないんだけど、その布教活動自体を諦めた訳ではない!
「美桜ってそういえば、映画大好きだったね…」
「それも恋愛小説とか、定番には全くノータッチだよね?」
「それの何が悪い!?――――え~っと…ん…」
樹だって漫才ばかり見ていて、葵に至っては子供向けのアニメとか好きなくせに~!
などとワナワナと心の中で愚痴りながらも、そんな事はおくびにも出さずにコホンと咳払いしてから、ニコっと笑みを作る。
「二人とも~やっぱり良い作品ってのはテレビよりも、大画面で観るだけの価値があると思わない?」
「お金ないもん~」
「人混みに入ると具合が悪くなってダメ」
「ああ~さいですか…」
それを言われちゃ~おしまいです。と力なく机に突っ伏しでスライムの様に体を脱力させていく。
あ~もうダメかもしんない…結局誰も、アタイの趣味を理解してくんないし~と、突っ伏しながらため息を吐いている間も耳に二人の声が聞こえてくる。
「…この前も『犬猫≪けんびょう≫の集い』とかって、犬と猫が力を合わせて、人間を襲う空飛ぶサメと戦う映画観てたよね? サメにも猫にも犬にも翼生えていたけど」
「『この世に鰹節を生み出した人類に仇なす奴をボクは許さない!』って、猫の戦士のキメセリフは爆笑した~無駄にイケボなのもグッドだったよね~」
「握ってる鰹節に念力送ると、光の剣になってサメを両断していたね?」
「必殺剣の名前は確か…『鯖鯖剣!』って言って、毎回相方の犬に『お前の持ってるのは鰹じゃぼけ~!』っていうツッコミと共に閃光が走るんだよね~」
黙って聞いていれば…二人ともアタイの勧めた映画しっかりと観とるじゃないか!
不思議な力で元気を取り戻すと、何も言わずに二人の頭を撫でる。
三人で馬鹿みたいに笑っていると、先程まであった騒動が何だったのかも思い出せなくなった。
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