どうしてこうなった

ひづき

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 本当に、どうしてこうなった。

 酒場になっている冒険者ギルドの2階ではソランの送別会と称する宴会が続いている。彼らは酒を飲む理由さえあればいいのでソランが抜けたところで気にとめないだろう。

 ジーンに連れ出され、押し込められたのは安宿の一室だ。安宿の中でも性行為をする為の連れ込み宿として知られる場所なので、薄い壁越しに両隣の部屋からは嬌声や肉を打つ音が生々しく聞こえてくる。

「あの、抵抗しなくていいんですか?もう戻れませんよ?」

 不安そうな声でジーンが問う。

「え、逃がす気あったのか?」

「ありませんけど」

 ないのかよ!と内心叫びつつ、ソランは考えた。

「お前、俺で勃つの?」

「もちろん」

 手を捕まれ、向き合っているジーンの股間に導かれる。熱くて、硬くて、窮屈そうに衣類を押し上げている塊に触れた。ようやく理解が追いついたソランは噴火しそうなほど顔を真っ赤に血を上らせて口をパクパクと開閉する。

「も、ものずきな…!」

「ずっと貴方を犯したいと思っていました。他人を避けるようにして過ごす貴方が、その強固な内側に僕を咥えこんで、僕に縋り付いて泣く様が見たいんです」

 笑っているのに、怖い。ソランはジーンの抱く想いの重さに戦いた。後悔しても既に遅い。戦闘力で劣るソランではジーンから逃げられない。

「………い、痛いのは嫌だからな?」

「頑張ります」

 ───また欲しがって貰えるように。そんな言外の囁きに気づかず、ソランは浴室に足を向けた。

「準備、してくる」

「手伝います!」

「要らん!!」

 トイレとバスタブが同じ空間内に併設されている個室内にまで入ってこようとするジーンを押し出して鍵を閉める。そんなぁと情けない声が聞こえたような気がする。当たり前だろと怒鳴り返したい気分で、ソランは扉に背を向けた。

 目の前にある設備と向き合い眉を顰める。冒険者が多く集う街では同性愛も珍しくないからだろうか、ローションが備え付けられているのが目に入った。無理やり襲われでもしない限り、自分が誰かと交合まぐわう日が来るなど思いもしなかったソランは必要な準備についてうろ覚えである。アナルで自慰をする時と同じ要領でいいのだろうか。

「ソランさーん、静かすぎますけど大丈夫ですかー?」

 そんなジーンのセリフから、彼がドア越しに聞き耳を立てていることを知り顔が引き攣った。





 既に体力が底を尽きそうなソランはこれがまだ〝準備〟に過ぎないことを思い出して憂鬱になった。

 バスローブ姿で浴室から出ようとドアを思い切り押したら、ガンッという激しい音がして途中までしか開かない。まさか、と思い覗けば、そのまさか。ジーンが立っていた。寛げた下衣から取り出した陰茎を片手に握っている。しかも勃起している。

「………ずっと聞き耳立ててたのか」

「はい!もうシャワーの水音だけで我慢できずに抜いちゃいました。あ、これはまだ2回目なので安心して下さい。まだまだ勃起出来ますよ!!」

 あらゆる人間に求められる美しい男が、股間の凶器を見せつけてくる。その太さも言葉にならないが、何より長い。あまり他人のそれを目にしたことのないソランとしては、その長さが平均なのか分からない。

「お前、顔に似合わず変態だな」

 誰もが見惚れる美しさが台無しである。何も起こらなければ基本的には物静かな印象がだった。それがここまで残念な中身だったとは予想がである。

 グイッと捕まれ、投げ飛ばすように寝台に転がされる。仰ぎ見ると、視線の先でジーンがシャツを脱ぎ捨て半裸になったところだった。着痩せするタイプらしく、しっかりとした筋肉の凹凸が目を引く。ジーンの視線がソランを射抜く。そこにあるのは明らかな情欲だ。はーはーと荒い浅い呼吸を繰り返しつつ、ジーンがのしかかって来る。まるで飢えた獣だ。

 ソランは視線を泳がせた。こんなオッサンが恥じらったり怯えたりしたところで気持ち悪いだけだろう。感情を表に出さないよう、ぐっと堪える為に目を閉じる。バスローブの合わせ目から差し入れられた手がソランの胸部を撫で回す。他人に触られるなど初めてのことだ。目を閉じる瞼に力が籠る。自分の手とは異なる、熱い手。しっとりと汗をかいているのはソランか、ジーンか。

「…ぁっ」

 乳首を指の腹でふにふにと押し潰される。己で慰める時と違う、鋭い刺激に押し切れなかった声が漏れた。がばっと左右にバスローブを開かれ、外気に触れた肌が泡立つ。その性急さに驚いて目を開くと、べろりっと右目の眼球を舐められた。

「ヒィッ!!」

「酷い悲鳴だなぁ、流石に傷つきます」

 クスクスと笑いながらもジークはソランの両乳首を指で転がすのを辞めない。びくびくっと身体を震わせながらソランは年下の男を睨みつける。

「目を舐められるなんて、思わねぇよ…ッ!!」

「ふふ、貴方の目玉を味わったのは私が初めてなんですね。嬉しい」

「ひぁっ!」

 左乳首を抓られて咄嗟にソランが身を捩ると、すかさずジーンに右乳首を吸われて、腹筋が引き攣る。ちゅぱちゅぱという音が羞恥心を煽る。そのまま上半身を舐め回され、脇の匂いまで嗅がれる。あちこちに吸いつかれ、その度にピリッとした痛みを覚えて震える。

「あ!ゃ、そんな…!」

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