偽物少女が本物になる日

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オマケ

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出遅れた復讐



※残酷な表現が含まれます、ご注意ください。



「───というわけで、お父様。当時私を虐待していた者達の現在を教えて欲しいの。協力してくれるまで孫には会わせないから、そのつもりでね」

 リアーチェは寝台の上で朗らかに微笑む。

 過保護な夫レミエルから療養してくれと泣いて頼まれた為、出産から2週間経っても未だ病人のような生活を送っているのだ。父親との面会が遅くなったのも、その一環である。

 ヌゲイル男爵は、ふーと重たい息を吐いた。

「あれからもう何年経っていると思っているんだ。全部とうに始末してしまったぞ」

「あら、どんな風に?」

「そうだな───」



 お前を鞭打ちして喜んでいた名ばかりの家庭教師───リンドラー夫人。彼女の夫が我がヌゲイル男爵家の経営する金融会社から多額の借金をしていたので、強面を差し向けて返せと強めの圧をかけさせた。そこに私が救いの手を差し出したよ。借金を帳消しにするから、妻を売るように説得したさ。

 リアーチェの自殺未遂以前、レミエルと会うことが決定した時点で、夫人は真っ先に辞職して逃げていたからな。夫に呼び出して貰い、現れたところを捕まえて。

 あまりに喧しいから、まず舌を抜いたよ。鞭がお好きらしいから、わざわざ加虐趣味者が集う特殊な店に納品してやったさ。死なせないようにと注文をつけて破格の支援金も手渡したから、未だに鞭打ちされてるんじゃないかな。死んだとは聞いていない。



 お前に灰を被せて笑いものにしていた侍女は、誰が何をしていたのか、こと細かく教えてくれたよ。我が身が可愛かったんだろう。自分だけ助かろうと必死だったね。

 灰が雪のように見えて、お嬢様にお似合いだと思ったとか、よくわからないことを言っていたかな。そんなに雪が好きならばと、着の身着のまま雪山に置き去りにしてあげたよ。翌日には喰い散らかされている形跡があったそうだから、周りを売った分苦しまずに済んだと思う。慈悲深いだろう?



 まともな料理を提供しなかった料理人は、必要のない無駄な両手を───

「あ、もういいです」

「もう?」

 話し足りないらしく、ヌゲイル男爵は意外そうな顔をしている。

「お父様が抜け目なく対処して下さったようで安心しましたわ」

 褒められたと思ったのか、ヌゲイル男爵はにこにこと笑っている。

「じゃあ…」

 リアーチェも、ニッコリと愛らしく笑みを返した。

「でも、子供には会わせられませんわ」

「何故だ!!」

「お父様の残虐性が子供に悪影響を与えそうで嫌だからですわ」

「お前のためにやったのに!!」

「頼んでませんし、そもそもの元凶はお父様じゃありませんか」

「ぐ…、」

 自覚があるのか、ヌゲイル男爵は言葉に詰まり、項垂れた。

 ふふふ、とリアーチェは笑う。復讐は始まったばかりだ。



[完]
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