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しおりを挟む観光など全くせず、高級ホテルの豪華な部屋に直行した。ドアを締め切るのも待てないとばかりに舌を絡め合い、それだけでもうハレナは限界だった。
「ぁ…、すき…っ、でん…かぁ…っ」
言ってはいけないと思っていた言葉が溢れる。もう抑えられない。
「…ヴィレ、と───」
「ぅ、ん、ヴィレ、ヴィレぇ…っ」
脱がし合いながら縺れるように寝台に転がった。
胸を揉まれながら最奥を抉られると、どうしようもなく気持ちいい。誰よりも近くに来て欲しい、もっと受け入れたいと、はしたなく大きく脚を開き、ヴィナードの肩に爪を立てて喘ぐ。
「んあぁ…っ、いく、いっちゃ………!まだぁ…ッ!」
まだ上り詰めたくない。まだ繋がっていたい。まだ終わりたくない。
「は、う、ハレナ、ハレナ!」
熱い液体を狭い胎内にぶち撒けながらヴィナードはハレナの胸を甘噛みする。
「ひぃう…んん…っ」
素早く硬度を取り戻した肉棒で胎内でねちゃねちゃと白濁を掻き混ぜながら再び動き出されると、ハレナはボロボロと涙を流しながら微笑んだ。彼以外のことなど、何も考えなくて良い。何という幸福だろう。歓喜が止まらず、ヴィナードを締め付け、また絶頂へと上り詰める。
朝も夜も関係なく目交い、時折眠り、ルームサービスで運ばれてきた食事を寝台の上で啄む。もう何日間そうしていたのか分からないほど、ハレナの脳味噌は多幸感でグズグズに溶けていた。
「ヴィレ…?」
いつの間に気を失っていたのだろう。うっすらと目を開けると、幸せそうに微笑みながらハレナの髪を撫でるヴィナードと目が合う。
「ようやく言える。───愛してるよ、ハレナ。どうか僕以外のものにならないで」
面食らい、すぐにハレナは表情を歪める。何とか涙を堪え、唇を噛み締めた。
「拒むわけ、ないでしょう」
数日後、城から迎えの馬車が来たことにハレナは驚く。一方のヴィナードは予想していたこともあり、平然としている。
「僕達兄弟は2人とも父上の実子ではないんだ」
自分などが聞いていいのだろうかと戸惑うハレナをよそに、ヴィナードは嘆息する。
行きと異なり、座り心地は格段に良くなったが、車内の空気はどこか重かった。短い夢が終わろうとしているのだと、嫌でも実感してしまう。
「僕が実子でないという理由で罰せられるのなら、アイツだって同じ罰を受けざるを得ない」
「第二王子はご自身の身の上をご存知なかった、ということですか?」
「さぁ、知っていて棚に上げたのか、知らずに暴挙に出たのかは分からない。どちらにせよ国の頂点である王が外交で国を離れている中、虚偽の権限を振り回し国を混乱させた罰は与えられるだろう」
「……………」
第二王子が罰せられたところで、その後はどうなるのだろう。ヴィナードに背を向けた婚約者や側近達を元の地位に戻すわけにもいかないはずだ。戻したところで互いに不信感は残るに違いない。そんな状況で国の運営などできないというのは、ハレナでも想像が着く。
「僕も側近達の離反の動きを黙認した以上、無罪放免とはならないはずだ」
「え、ヴィレも罪に問われるということですか?」
「恐らくな。第二王子の罪と相殺されるかもしれないが、どのみちほとぼりが冷めるまでは兄弟揃って謹慎かな」
「───何故黙認したのか聞いても?」
踏み込むなど出過ぎた真似だとは重々承知している。しかしその半面、自分が踏み込んでも彼は嫌がらないだろうという確信が何故かあった。予想通りヴィナードは拒む様子こそ見せなかったが、どこか気まずそうに視線を泳がせる。
「あー…、あの、元側近連中、全員僕がハレナを世話係に望んだことに猛反発してきたから、顔を見るのも嫌になったんだよ」
反発だけなら、そうも気まずそうな表情はしないだろう。恐らく彼らはハレナの容姿や体格を中傷したに違いない。何ならヴィナードに趣味が悪いとまで言った恐れさえある。ハレナに対して嘘をつきたくないが本当のことも言いたくない、そんなヴィナードの気持ちが伝わってくる。
ハレナ自身、何故よりによって自分などが選ばれるのか理解に苦しんだ為、側近達の気持ちもわからなくはない。
「それって、まさか、わざと彼らが離反するよう仕向けたのでは─────」
「─────」
返事は無い。目は合わない。ハレナは仕方ない人だと嘆息する。自分の大切なものや好きなものを否定されて腹が立ったのだろうヴィナードの気持ちも分かる気がした。
「もし、貴方の知る俺の魅力とやらを側近連中が知っていたら、それはそれで貴方は怒るんでしょう?」
「………、コロスかもしれない」
こくん、と頷く様は子供のようだ。発言は物騒だが。
「それなら別に言わせておけばいいんですよ。俺も貴方以外に認められたいとは思いませんし」
城に着くと、ヴィナードはそのまま城の中へと騎士達に促されて入っていく。しかしハレナはここまでだと止められ、迷惑費なのか口止め料なのか分からぬ金額を渡されると学園の寮へと戻された。ヴィナードは振り向かなかったし、ハレナもまた振り返ることなく、互いに背を向けて。
これで本当に道を違えたのだと思うと、ハレナの涙腺は緩み出す。
誰かに否定されても、誰にも認められなくても。確かに愛していた。愛されていた。それだけは揺らがない事実だった。
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