クズくずクズ

ひづき

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 恥じらいには耐えられても、恐怖心は別で。意図を持って窄まった穴に指を添えられるとマヒロの身体は痛みを思い出して強ばってしまう。

「───先輩?」

 問いかけにも応えられず、固く目を閉じて、これから襲ってくるであろう痛みに備える。

「先輩、もしかしてタチでした?」

 タチって何だろう。そんな疑問からマヒロは恐る恐る目を開ける。やけに心配そうな表情の後輩と目が合った。

「俺、下手くそで、受け止めきれなくて。いつも素股かフェラで勘弁して貰ってたんだ」

 最初の、泣き叫んでも終わらない痛みが蘇ってくる。もちろんクズ野郎のを全て挿入できたことなんかない。

「顔色が悪い。無理して思い出さないで下さい」

 だから、女に走ったクズ野郎に失望はしても怒りは湧いていない。マヒロの財産を己のものだと偽ったことに関する怒りはまた別だが。

「失望しただろう?捨てられて当然だよな。お前も面倒臭いって呆れるだろう?」

「いいえ!予想外に美味しい事態で興奮して来ました!僕の手で先輩をメスに出来るなんて光栄です!!」

「は?はぁ!?」

 ぱくん、と萎えていた陰茎を再び口に含まれ、びくんっと身悶える。先程の気持ち良さが蘇ってきて期待に鼓動が高まる。じゅるじゅると音を立ててなぶられ、あっという間に硬度を取り戻した己を恥じていると、ヌメリを帯びた指が窄まった秘部を突く。ビクッと怯えれば、気にするなとばかりに陰茎に絡まる舌が容赦なく先端を弄る。

「あ、あ、あ、そんな───」

 入ろうとはせず、彼の指が皺の一本一本をなぞるように擽る。一方で緩急をつけた口淫がマヒロの意識を乱して何も考えられない。

「や、やだ、」

 皺をなぞられるだけのもどかしさに腰が揺れる。綻んだ穴に、指の関節一つ分がぬぽんっと入り込んだ。

「あ、う…?」

 口を離され、陰茎が外気に切なく震える。

「痛くないでしょう?」

 くいくいと、あらぬ所で後輩の指が動く。射精間際だったこともあり、登り詰めた興奮から降りられず、マヒロは呆然としたまま子供のように頷いた。

「ん」

「ほら、大丈夫。僕は貴方が望まない限り痛いことなんてしませんから」

 そう微笑むと、後輩は指を差し入れた穴の周りに舌を這わせ始めた。

「ひ…っ」

 舌が周囲の皺を伸ばすように、唾液を塗り込むようにぐちゅぐちゅと音を立てる。予想もしないところを舐められる羞恥心にマヒロは身悶えた。弱々しい抵抗しか出来ない。力が入らない。身体のどこに力を入れたらいいのか、混乱した頭ではわからない。舌と同時進行で中央の指がゆっくり抜き差しされる。内臓を撫でられ、理性だか本能だか分からない部分が、背徳感に悦びを見出す。

「ふ、ぁ、あ、」





 ぬるま湯に浸かるような、決定打のない微弱な快楽に喘がされる。全身のあらゆるところを舐められ、匂いを嗅がれ、羞恥に震え、求められている歓びに心が震え。気づけば後輩の、カツトの指を3本以上咥えて、しかも内臓を撫でられるのが気持ちいいことなのだと教え込まされ、貰えない決定打に涙が滲む。痛くは無い。しかし、これはこれで拷問のようだ。

「も、いれてぇ」

「いや、でも───」

 まだ狭い、傷つけたくないとカツトが逡巡する。マヒロはそんなカツトの首にしがみついて、耳元で甘く切なく喘ぐ。

「おねが…、とどめ、さして」

 ゴクリとカツトの喉が鳴る。

 空洞がはくはくと喘ぐ。宛てがわれた切っ先の熱さに心が震える。

「あ、あああああッ」

 痛くないといえば嘘になる。だけど、裂かれるような痛みでは無い。割り開かれる痛みだ。すぐにそれは歓びに変わる。内臓を異物に我が物顔で蹂躙されるのが気持ちいい。頭が馬鹿になりそうだ。

「うぅ…」

 獣のように低く唸るカツトの額に滲む汗に手を伸ばすが、触れる前に手首を掴まれてシーツの上に縫い止められた。野生に抗う美しい獣。待ての出来る利口な獣。

「かわいいな、おまえ」

 きゅんきゅんと心が収縮する、内臓が蠕動する。我慢の限界だとばかりに肩を甘噛みされ、凶器が抜き差しされ始めた。

「ん!あ!はげし…っ」





 □□□□□□□□



「今日は出勤するつもりだ」

 いつになく心が満たされて、とても身体が軽い。一晩中喘がされて実質2~3時間しか眠っていないはずだが、そうとは思えないほど体調が良い。

「僕は先輩をこの家から一歩も外に出したくありません」

 カツトの重たい発言を聞いてもマヒロは動じない。むしろ喜びすら覚える。

「四六時中一緒にいたら俺に飽きるさ。俺は面白みのない人間だからな」

 彼を信じていないわけではないが、それでも心のバランスを保つ為には逃げ場が必要だ。

「先輩のスマホに位置共有アプリを入れさせて下さい」

「構わない。機械音痴だからカツトがやってくれ」

 朝食に添えられたスープを飲みながらマヒロはポケットから取り出したスマホをカツトに投げ渡す。カツトは不満げだが躊躇いなくマヒロの端末を操作し始めた。

 昨日ここを訪れた時に着ていた私服なので、出勤前にスーツを取りに行かないといけないなとマヒロは考えつつ、カリカリに焼かれたベーコンを口に運ぶ。塩加減が素晴らしい。


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