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エピソード7-5
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なんだかどことなく、様子が少し変だ。
今日は飲まないとか言ってたきがするのに、なぜか持ってきたのはビールと一度も買ったことのない飲み物。
手渡す寸前に気づいたようで、千草にビールを差し出してきたがよくわからない方の飲み物のほうを受け取った。
だけど今度は自分の分のビールを飲むでもなく開けもせずに、手わすらしている。こんな短い時間で何かあったのだろうか。
不思議だったが、追求するまではしなかった。仕事関係の何かがあったのかもしれないと思ったからだ。
それでも何か取り繕うと、
「寒くない?」
「疲れてない?」
と気遣いをみせてくれた。ちょっとした優しさは変わらない。
また喉が乾きそうだなぁと思いつつも受け取った飲み始めて少しすると、少団体が夫を見つけたらしく近づいていた。
その時、千草からは見えなかったが割と嫌な顔をしていたのかもしれない。
ちょっと若い男性が
「別に、冷やかしじゃないですから。」
と、なにかに答えるように苦笑いしながら声をかけてきた。
慌てて立ち上がり、軽く会釈をしたら恐縮された。
どうやら皆、夫の同僚や部下らしい。
この先が大人が楽しめるスポットがあるらしく、連ねてそっち向かうところだそうだ。何人かの手には釣り竿や網が見える。本格的なキャンプとかではないからか、海辺で遊ぶような格好の人もいる。
彼らのスーツ姿なんて、縁がないから仕事中はキリリとしているのだろうけれど、今は会社のイベントに参加しているというのを忘れてしまったら、大学生の小団体に見える。
「モリです」と挨拶した女性は、同性の自分から見てもとてもキレイな体のラインをしていた。ジムとかで汗を流している姿が容易に想像できる。ただなんだか、とても気になった。
夫がやけにソワソワしていたが、理由はあえて聞かなかった。もしかすると、本当はモリさんのような女性好みなのかもしれない。
年齢は私と同じくらいのように見えるけれど、不思議と若くも年上にも見える。不思議な女性だ。
なんとなく、一瞬目が合い微笑みかけられたと思ったがすぐに視線を外されたきがした。
ふと、夫が自分より先にあの人と出会っていたら私はここに居なかったかもしれないなどと考えてしまった。千草は最近日増しに自分に自信を持てなくなっている。
「タカハシ」と名乗った人が一緒に行きませんかと誘ってくれたが、夫は「考えておく」と応えて、さっきまで座っていたところに腰掛けた。
それを合図のように、
「じゃ、またお昼に。」
と言って彼らは去っていった。
その小団体が去っても、夫は少し気もそぞろだった。
手わすらの理由は彼らが理由なのかもしれないと思った。
その後、夫はなんとなく落ち着かないなかでなんの脈略もない話しをした。千草が
「汐音が犬を飼いたいって言い出したらどうしましょう。」
と相談し夫がそれにたいして答え出そうとしたタイミングで呼ばれてしまい有耶無耶になった。
気づけばなんだかんだと小一時間ほど過ぎていた。もうすぐお昼になる。
ここに一人でいても仕方がないので、汐音がいるテントへと戻った。
預けられていた子どもはさっきより人数が増えていたが、さっきとは違う子だった。
人見知りが忘れられている理由は簡単で、小さい犬の存在だ。しかも、さっきより頭数が増えよく見るとおとなしい犬種の大きい犬もいるし、ゲージに入れられている猫もいた。
動物たちも子どもたちに慣れているようで、触られるのを苦にしていない。
ちょうど汐音が大きい犬の背中を撫でようとしていた。
あの子が飼いたいと言ったら、一緒に勉強して飼うのも悪くないかもとその姿を見て思った。
そこへ、さっき挨拶した「森さん」と「高橋さん」がやってきた。
まさか、このあと思いもよらない展開が待ち受けているなんて、汐音の微笑ましい光景を眺めている千草には考えつかなかった。
今日は飲まないとか言ってたきがするのに、なぜか持ってきたのはビールと一度も買ったことのない飲み物。
手渡す寸前に気づいたようで、千草にビールを差し出してきたがよくわからない方の飲み物のほうを受け取った。
だけど今度は自分の分のビールを飲むでもなく開けもせずに、手わすらしている。こんな短い時間で何かあったのだろうか。
不思議だったが、追求するまではしなかった。仕事関係の何かがあったのかもしれないと思ったからだ。
それでも何か取り繕うと、
「寒くない?」
「疲れてない?」
と気遣いをみせてくれた。ちょっとした優しさは変わらない。
また喉が乾きそうだなぁと思いつつも受け取った飲み始めて少しすると、少団体が夫を見つけたらしく近づいていた。
その時、千草からは見えなかったが割と嫌な顔をしていたのかもしれない。
ちょっと若い男性が
「別に、冷やかしじゃないですから。」
と、なにかに答えるように苦笑いしながら声をかけてきた。
慌てて立ち上がり、軽く会釈をしたら恐縮された。
どうやら皆、夫の同僚や部下らしい。
この先が大人が楽しめるスポットがあるらしく、連ねてそっち向かうところだそうだ。何人かの手には釣り竿や網が見える。本格的なキャンプとかではないからか、海辺で遊ぶような格好の人もいる。
彼らのスーツ姿なんて、縁がないから仕事中はキリリとしているのだろうけれど、今は会社のイベントに参加しているというのを忘れてしまったら、大学生の小団体に見える。
「モリです」と挨拶した女性は、同性の自分から見てもとてもキレイな体のラインをしていた。ジムとかで汗を流している姿が容易に想像できる。ただなんだか、とても気になった。
夫がやけにソワソワしていたが、理由はあえて聞かなかった。もしかすると、本当はモリさんのような女性好みなのかもしれない。
年齢は私と同じくらいのように見えるけれど、不思議と若くも年上にも見える。不思議な女性だ。
なんとなく、一瞬目が合い微笑みかけられたと思ったがすぐに視線を外されたきがした。
ふと、夫が自分より先にあの人と出会っていたら私はここに居なかったかもしれないなどと考えてしまった。千草は最近日増しに自分に自信を持てなくなっている。
「タカハシ」と名乗った人が一緒に行きませんかと誘ってくれたが、夫は「考えておく」と応えて、さっきまで座っていたところに腰掛けた。
それを合図のように、
「じゃ、またお昼に。」
と言って彼らは去っていった。
その小団体が去っても、夫は少し気もそぞろだった。
手わすらの理由は彼らが理由なのかもしれないと思った。
その後、夫はなんとなく落ち着かないなかでなんの脈略もない話しをした。千草が
「汐音が犬を飼いたいって言い出したらどうしましょう。」
と相談し夫がそれにたいして答え出そうとしたタイミングで呼ばれてしまい有耶無耶になった。
気づけばなんだかんだと小一時間ほど過ぎていた。もうすぐお昼になる。
ここに一人でいても仕方がないので、汐音がいるテントへと戻った。
預けられていた子どもはさっきより人数が増えていたが、さっきとは違う子だった。
人見知りが忘れられている理由は簡単で、小さい犬の存在だ。しかも、さっきより頭数が増えよく見るとおとなしい犬種の大きい犬もいるし、ゲージに入れられている猫もいた。
動物たちも子どもたちに慣れているようで、触られるのを苦にしていない。
ちょうど汐音が大きい犬の背中を撫でようとしていた。
あの子が飼いたいと言ったら、一緒に勉強して飼うのも悪くないかもとその姿を見て思った。
そこへ、さっき挨拶した「森さん」と「高橋さん」がやってきた。
まさか、このあと思いもよらない展開が待ち受けているなんて、汐音の微笑ましい光景を眺めている千草には考えつかなかった。
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