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エピソード7-3
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うちの夫はそういう意味では、随分と良い夫のようだ。でも…。
玄関から戻ると、テーブルの上に病院のパンフレットが昨日「とりあえず」と避難させたところにそのまま置いてあることに気づいた。
カウンセラー…か。全く興味がないわけじゃないが、夫がでかけたらちょっともう少し考えてみよう。
そんなことをしているうちに、ちょっと前に仕掛けておいた洗濯機から終わった合図の音が聞こえた。
あと少しで、やっと昨日冷蔵庫にとりあえず入れた食品を仕分けることができる。
きっと朝食くらい一緒に食べれば、二人の関係性ももっと程よく円満にすすむのだろうが、まだまだそういうことに気が回らない匡尋とそういう環境を知らずに生きてきた千草では気づかないのはある意味仕方がなかった。
洗濯をカゴに移し替えている頃、玄関の方で音がすることに気づく。
夫の出勤時間になったようだ。
「行ってきます。ゴミ、これだけ?」
「はい、それだけです。お願いします。行ってらっしゃい。」
朝、おはようの次にこの挨拶という流れだけを見たらきっと、熟年夫婦のようにみえてしまう。
ゴミとカバンで両手が塞がった夫のかわりに玄関の鍵を締め、千草は家事に戻った。手のかかることが一通り終わった頃には、10時を少し回った時間になっていた。
近頃、モヤッとした気分のせいか、少しが重く感じる。結婚してから仕事をやめたせいもあり、運動らしい運動をしてないせいか体力もなくなってきているように感じる。
(少し、散歩の時間とかとらないと…。)
と思いながら居間に戻る。
そこで、ようやく病院のパンフレットを思い出した。
病院はバスで数駅のところだ。近くにホームセンターなんかもありスーパーなどでは買えない小物とかを偶に見に行くので、地理的にも少し不自由しない。
夫の友人というのが気になるが、義妹が言うには職業柄すべてにおいて守秘義務だからといっていたので、きっと夫には伝わらないだろう。
まあ、おそらく知らない街にあるとなっていたなら、その時点で躊躇「行ってみようか」という思いにも駆られなかったと思う。
守秘義務があるとはいえ、遠くなればすべてを終わらせてからの帰る時間にも影響する。
バレなければ夫が帰ってくるまでに普段通りの日常に戻れるというのが、何においてもそれが大前提だからだ。
バレるくらいなら、きちんと話し合いを持てば良い。
でも、そういう勇気が千草の中で芽生えるまでまだまだ時間を要することだったのだ。
ネットで予約できることもハードルが低くて良い。
いくつかの候補にチェックすると、10分後くらいに登録したメールに返事が来た。
簡単な挨拶のあとに
(本日、1人分キャンセルが出ました。もしよろしければ13時~いかがでしょうか?)
と記載があった。
時間が経つともしかすると、行ってみようかという決心すら揺らいでしまうかもしれないので千草は思わずその提案を了承する旨を返事した。
玄関から戻ると、テーブルの上に病院のパンフレットが昨日「とりあえず」と避難させたところにそのまま置いてあることに気づいた。
カウンセラー…か。全く興味がないわけじゃないが、夫がでかけたらちょっともう少し考えてみよう。
そんなことをしているうちに、ちょっと前に仕掛けておいた洗濯機から終わった合図の音が聞こえた。
あと少しで、やっと昨日冷蔵庫にとりあえず入れた食品を仕分けることができる。
きっと朝食くらい一緒に食べれば、二人の関係性ももっと程よく円満にすすむのだろうが、まだまだそういうことに気が回らない匡尋とそういう環境を知らずに生きてきた千草では気づかないのはある意味仕方がなかった。
洗濯をカゴに移し替えている頃、玄関の方で音がすることに気づく。
夫の出勤時間になったようだ。
「行ってきます。ゴミ、これだけ?」
「はい、それだけです。お願いします。行ってらっしゃい。」
朝、おはようの次にこの挨拶という流れだけを見たらきっと、熟年夫婦のようにみえてしまう。
ゴミとカバンで両手が塞がった夫のかわりに玄関の鍵を締め、千草は家事に戻った。手のかかることが一通り終わった頃には、10時を少し回った時間になっていた。
近頃、モヤッとした気分のせいか、少しが重く感じる。結婚してから仕事をやめたせいもあり、運動らしい運動をしてないせいか体力もなくなってきているように感じる。
(少し、散歩の時間とかとらないと…。)
と思いながら居間に戻る。
そこで、ようやく病院のパンフレットを思い出した。
病院はバスで数駅のところだ。近くにホームセンターなんかもありスーパーなどでは買えない小物とかを偶に見に行くので、地理的にも少し不自由しない。
夫の友人というのが気になるが、義妹が言うには職業柄すべてにおいて守秘義務だからといっていたので、きっと夫には伝わらないだろう。
まあ、おそらく知らない街にあるとなっていたなら、その時点で躊躇「行ってみようか」という思いにも駆られなかったと思う。
守秘義務があるとはいえ、遠くなればすべてを終わらせてからの帰る時間にも影響する。
バレなければ夫が帰ってくるまでに普段通りの日常に戻れるというのが、何においてもそれが大前提だからだ。
バレるくらいなら、きちんと話し合いを持てば良い。
でも、そういう勇気が千草の中で芽生えるまでまだまだ時間を要することだったのだ。
ネットで予約できることもハードルが低くて良い。
いくつかの候補にチェックすると、10分後くらいに登録したメールに返事が来た。
簡単な挨拶のあとに
(本日、1人分キャンセルが出ました。もしよろしければ13時~いかがでしょうか?)
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