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第一章 第一の秘密
第八話
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ユンと出会ったのは十年前。俺が基幹学校の二年生、十三歳になった頃だった。
俺は機械のこともそうだが、色々なことに興味があった。勿論、αについても興味の対象だったが、街で見かけるαは街の秩序を守る一方傍若無人に振る舞っていたので、他のαを知りたいと俺はブロックⅡのαの居住地区にある中高等教育学校に近付いた。
辺りを見回し高い塀をよじ登ると、広い芝生のエリアと遠くに校舎が見えた。そして、そこには同世代のαの子供たちが居て、何か格闘技のようなことをして遊んでいるようだった。その時はちょうど昼休みの時間だったのだろう。
「おい、あそこに誰かいるぞ!」
と、遊んでいた集団の一人が俺に気付いて声を上げた。慌てた俺はバランスを崩し、あろうことか敷地内に転落してしまった。
「こいつαじゃない!」
「え? じゃあΩ?」
「そんな訳ないだろ、βだよ!」
同じくらいの子供たちにあっという間に周囲に囲まれる。
「なんだβか。綺麗な顔してるからΩかと思った」
「Ωだったら、高等に上がる前に予行練習ができたのにな」
何の話をしているのか分からないが、とりあえずこの子供たちは、街で見かけるαの大人を幼くしただけの存在なのだと直感した。きっと、このままでは恐ろしいことが起こる。
「何してるんだ、お前達」
と、俺を囲んでいる集団の後ろから頭一つ大きな少年が現れた。そして俺を見下ろして「誰だ、こいつ」と眉根を寄せる。
「先輩! こいつβのくせに学校に侵入してきたんです!」
「β?」
「Ωって独特の匂いがするんですよね? こいつは特にしないのでβかなって」
先輩と呼ばれた少年は、俺の顔を掴んで上向かせると、まるで値踏みをするように見た。その視線が俺の顔だけでなく身体にも向けられると背筋がぞくっとした。逃げなければと立ち上がろうとしたが、少年の指示で羽交い絞めにされてしまう。
「βには違いないが、面は悪くない。そろそろ息抜きに行くつもりだったし、ちょうど良かった」
そう言うと、少年はベルトを外しズボンのチャックを下ろした。その頃には性教育も受けていたので、どういうことをするのかは大体わかっていたし、街中を探索している時に軍人に強姦されるβを見たことがあった。きっと、俺も同じ目に遭うのだと分かった。
「止めろ! 触るな! 離せクソ――」
バチンと左半分の頭に衝撃が走った。衝撃と共に傾いた頭をゆっくりと持ち上げると、少年が冷たい眼で俺を見下ろしていた。左の頬がじんじんと痛む。
「無事に居住区に帰りたければ言うことを聞いた方がいいぞ。俺はお前を簡単に殺せるし、例え殺したとしても、一枚反省文を書いて提出すればいいだけだからな」
それが、この世界の真理だ。αは絶対的な力を持っている。βは成す術もなく蹂躙され、使い潰されるのだ。生まれた瞬間から、俺とこの少年には大きな差があり、それは生涯縮まることは無い。
「先輩、顔はやめてくださいよ。萎えるじゃないですか」
「だから平手にしただろう。俺だってゾンビとセックスなんかしたくないからな」
少年が俺のズボンに手を掛けた。嫌だ、誰か――誰かなんて、いない。αに目を付けられたら、ただでは済まない。助けなんて来ない。
俺は機械のこともそうだが、色々なことに興味があった。勿論、αについても興味の対象だったが、街で見かけるαは街の秩序を守る一方傍若無人に振る舞っていたので、他のαを知りたいと俺はブロックⅡのαの居住地区にある中高等教育学校に近付いた。
辺りを見回し高い塀をよじ登ると、広い芝生のエリアと遠くに校舎が見えた。そして、そこには同世代のαの子供たちが居て、何か格闘技のようなことをして遊んでいるようだった。その時はちょうど昼休みの時間だったのだろう。
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と、遊んでいた集団の一人が俺に気付いて声を上げた。慌てた俺はバランスを崩し、あろうことか敷地内に転落してしまった。
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「え? じゃあΩ?」
「そんな訳ないだろ、βだよ!」
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「Ωだったら、高等に上がる前に予行練習ができたのにな」
何の話をしているのか分からないが、とりあえずこの子供たちは、街で見かけるαの大人を幼くしただけの存在なのだと直感した。きっと、このままでは恐ろしいことが起こる。
「何してるんだ、お前達」
と、俺を囲んでいる集団の後ろから頭一つ大きな少年が現れた。そして俺を見下ろして「誰だ、こいつ」と眉根を寄せる。
「先輩! こいつβのくせに学校に侵入してきたんです!」
「β?」
「Ωって独特の匂いがするんですよね? こいつは特にしないのでβかなって」
先輩と呼ばれた少年は、俺の顔を掴んで上向かせると、まるで値踏みをするように見た。その視線が俺の顔だけでなく身体にも向けられると背筋がぞくっとした。逃げなければと立ち上がろうとしたが、少年の指示で羽交い絞めにされてしまう。
「βには違いないが、面は悪くない。そろそろ息抜きに行くつもりだったし、ちょうど良かった」
そう言うと、少年はベルトを外しズボンのチャックを下ろした。その頃には性教育も受けていたので、どういうことをするのかは大体わかっていたし、街中を探索している時に軍人に強姦されるβを見たことがあった。きっと、俺も同じ目に遭うのだと分かった。
「止めろ! 触るな! 離せクソ――」
バチンと左半分の頭に衝撃が走った。衝撃と共に傾いた頭をゆっくりと持ち上げると、少年が冷たい眼で俺を見下ろしていた。左の頬がじんじんと痛む。
「無事に居住区に帰りたければ言うことを聞いた方がいいぞ。俺はお前を簡単に殺せるし、例え殺したとしても、一枚反省文を書いて提出すればいいだけだからな」
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