元カレに囲まれて

第１章 新生活

新生活（１８）

　車が発進した。先生は、行き先を告げない。私も聞かない。
　
　そう遠くないところに、三階建てのアパートが見えてきた。駐車場に入り、私が先に降りた。ロックをかけた彼は、最終確認するみたいに左手を出してきた。手を取り、心の中で謝った。ごめんね、先生。物凄く迷惑かけちゃうかもしれない。でも、今夜この手を離しちゃいけない気がするから――。

「シャワー浴びてこい。熱いお湯でな。買い物に出るけど、すぐ戻る」

　私がシャワーを終えるともう戻ってて、上着を脱いでワイシャツだけになってた。私の頭を抱いて、掠めるようなキスをして、「布団に入ってろ」って……上からボタンを外しながらお風呂場へ向かう姿は、全く未知の大人の世界を感じさせた。

　優しく、愛された。キスも、私が気持ちよくなれるところを教える指も、切ないほど優しかった。初めて貫かれる衝撃は、この人のもの、という幸福感に変わった。求めてくれるのが嬉しくて、何度も応えた。

　果てた後の、幸せなまどろみ。先生は恋人繋ぎにした私の左手を口へ近付けて、薬指にチュッとキスをした。
「好きだ」