元カレに囲まれて

花宮守

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第1章 新生活

新生活(16)

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 先生のマフラーでぐるぐる巻きにされ、肩を抱かれて、車のところまで行った。助手席に乗り込むと、すぐに暖房をつけてくれた。雪が溶けていく。魔法が解けたみたいな気がして、少し心細くなった。

「先生……ずっと仕事してたの?」
「ああ。学校からまっすぐ来た」
「そうなんだ」
 こんなにかっこいいのに、クリスマスに一人だなんて。

「クリスマスに一人なんだ、とか思ってるだろ」
「あ、うん」
「一人じゃないだろ? お前がいる」
 そんな……そんなこと言って手を重ねられたら、期待しちゃうよ。

 先生はシートベルトをして、ハンドルに手をかけた。
「言うべきじゃないのは百も承知だ。俺が今から言うことは、教師としては完全に間違ってる。だけど、俺自身として間違ってるとは思わない。天城恭一郎は、香原衣純とあのイルミネーションを見たかった」

「先生……」
 ポロっと何かが零れた。私の涙だった。
「衣純……」
「好き……先生のこと」
 言葉も、零れた。
「生徒としては間違ってるのかもしれない。先生を困らせちゃうのも分かってる。でも……」
 シートベルトを外す音がして、抱き寄せられた。
「でも、お前自身としては間違ってない……だろ?」
「うん」
 何度も頷いた。
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