525 / 536
番外編 2
Taylor Richardson家 in 新しい我が家
しおりを挟む
※P458「Taylor Richardson家 in 飛行機」の次くらいの時系列です。
【side: ヒデト】
「おにいさまっ!おはよー!!」
「はよっ!」
「ん、おはよう」
燦々と降り注ぐ日本とは違う陽の光。
パンの焼ける音、淹れたてのコーヒー。蜂蜜やミルクを溶かしたような甘ったるい時間。
Taylor Richardson家の朝は、大体こうして始まる。
こっちに着いてまだ日も浅く、学校の手続きも終わってないから毎日ボーッとしていて。
この屋敷は街から少し離れた場所にあるから、静かで心地いい。
慌ただしかった日々が昔のことのように感じる。つい最近だったのにな。
(さて、今日は なにしtーー)
「おにいさまっ!かくれんぼしましょ!!」
「しましょ!」
「あぁ、いいぞ」
「「やったー!!」」
探検ごっこ・お庭遊び・おままごと・屋敷の周りの散歩・etc…
ここに着いてから毎日振り回されっぱなしだ。
これまで一緒に過ごせてなかった分、その空白を埋めるよう誘われるもの全てに付き合ってる
が、
(結構体力使うぞこれ……)
世の母親、父親はすごい。
保育園・幼稚園の先生もすごい。
まじで底なし。
お前らの体力どうなってんの? そんな短い睡眠で回復すんの? 昼寝って偉大だな、ってか子どもすごくね??
キャンキャン元気に飛び回る小さいの × 2。
外でもやんちゃしてたし体力あるほうだと思ったのにな…舐めてたわ……
「じゃーんけーんぽいっ!あ、おにいさまの負け!」
「おにぃさま、おに!」
「おーわかった」
「それじゃ、30びょうちゃんと数えるのよ!」
キャー!と走り去っていく背中。
すれ違う屋敷の人たちが笑ってる。
引越しの荷解きが終わり、ひと段落。
アイツは仕事で毎日外出。夜にはちゃんと帰ってくる。
お袋は俺たちが遊んでるのをいつも微笑ましく鑑賞。
屋敷の人たちにも楽しそうに話しかけられて。
(なんだこの、穏やかな時間は)
今まで散々悩んだ分のボーナスみたいな。
いや、別にいいけど。でもなんかむず痒くて居た堪れない。
「29、30。行くぞ」
(あっちに走ってったから、そんな遠くには行ってないだろうし……あ、)
開始早々見つけてしまうのも、いつものこと。
子どもと遊ぶの気ぃ遣う…すぐ見つけたら怒られるし、泣くし、隠れる場所も簡単なとこじゃないとダメだし、けど簡単すぎてもダメだしでマジで難しい。マニュアルとかねぇのか。
ってかそもそも何でそんなとこ隠れた、見つかるに決まってんだろおい、もうちょっと頭使え、一体何考えてんだーー
「っ、くく、」
こういうのを多分、可愛いとか愛しいとかって言うんだと思う。
(弟は見つけたし、先に妹見つけて声かけとくか)
年上なぶん少し知恵があるから、難易度は若干上。
気づかずに通過し「ほう……」っと安堵のため息が吐かれるのを想像して、心の中で笑ながらわざとらしく足音を立ててやった。
***
妹が鬼をして、また俺が鬼になって、弟が鬼をして、一緒に数を数えてやって。
広い屋敷内を、あっちへこっちへぐるりぐるり。
そんなことを何度も繰り返し、また俺が鬼の番がきた。
「あの子、いないわねぇ……」
今回は先に妹が見つかったから声をかけ、弟を探している。
低い身長と手を繋いでいるので前屈みになり背中が痛い。歩くのも遅いし、いっそ俺が抱きかかえてしまったほうがらく。
それでも「手を繋ぎたい」と言う主張を優先し、なんとか歩いてく。
(こんなに見つからねぇこと無かったな…毎回すぐ分かるとこいんのに)
何処だ? 遠くまで行った? いやアイツの足でそこまでは行けないはず。
お袋のところか? 飽きて行ったはワンチャンあるな。
一度、訪ねてみるかーー
ヒソッ
「おにいさまっ!」
「ん?」
「あそこあそこ」
小さな手が指差す先。
窓とカーテンの間に、小さな丸い影。
ゆっくりカーテンを開けると、窓からの暖かい光に包まれスゥスゥ眠っている弟がいた。
あぁなるほど、寝てたのか。
そりゃ物音たたないし分からねぇな。結構遊んだもんな。
暖かいもんな、此処。すごく。
何故だか優しい気分になりながら、穏やかに寝息をたてる頭をひと撫でしてゆっくり抱える。
小声で「わたしもだっこして!」という妹も抱き上げ、来た道をゆっくり戻っていって。
(……これは、多分また笑われるな)
歩く振動で眠くなるのか、うつらうつら舟を漕ぎだす妹。
部屋へ着くまでに寝てしまうんだろう。
すれ違う屋敷の人たちに、微笑ましく見られながら
お袋に「あらあら」と苦笑され、片方持つように手を伸ばされながら
こうやって、高校生の俺の日常は過ぎていくんだろう。
大学へ進んだら、もしかしたら屋敷を出るかもしれない。
社会人になればきっと出ていく。
たから、それまでに
此処から通える高校へ 行っているうちに
俺は、歳の離れた兄妹たちの兄を
精一杯やろうと 思う。
(おにいさまっ、おきたー!あそんで!!)
(あそんでー!)
(……お前ら、もう少し休憩というものを…)
((??))
fin.
※久しぶりすぎて年齢もろもろを再度書いておきます。
・ヒデト: 17歳 / 高校2年生 / 黒髪黒目の日本人 / 母親の連れ子
・妹: 3歳 / 金髪青目の英国と日本のハーフ / 再婚相手との子
・弟: 2歳 / 金髪青目の英国と日本のハーフ / 再婚相手との子
【side: ヒデト】
「おにいさまっ!おはよー!!」
「はよっ!」
「ん、おはよう」
燦々と降り注ぐ日本とは違う陽の光。
パンの焼ける音、淹れたてのコーヒー。蜂蜜やミルクを溶かしたような甘ったるい時間。
Taylor Richardson家の朝は、大体こうして始まる。
こっちに着いてまだ日も浅く、学校の手続きも終わってないから毎日ボーッとしていて。
この屋敷は街から少し離れた場所にあるから、静かで心地いい。
慌ただしかった日々が昔のことのように感じる。つい最近だったのにな。
(さて、今日は なにしtーー)
「おにいさまっ!かくれんぼしましょ!!」
「しましょ!」
「あぁ、いいぞ」
「「やったー!!」」
探検ごっこ・お庭遊び・おままごと・屋敷の周りの散歩・etc…
ここに着いてから毎日振り回されっぱなしだ。
これまで一緒に過ごせてなかった分、その空白を埋めるよう誘われるもの全てに付き合ってる
が、
(結構体力使うぞこれ……)
世の母親、父親はすごい。
保育園・幼稚園の先生もすごい。
まじで底なし。
お前らの体力どうなってんの? そんな短い睡眠で回復すんの? 昼寝って偉大だな、ってか子どもすごくね??
キャンキャン元気に飛び回る小さいの × 2。
外でもやんちゃしてたし体力あるほうだと思ったのにな…舐めてたわ……
「じゃーんけーんぽいっ!あ、おにいさまの負け!」
「おにぃさま、おに!」
「おーわかった」
「それじゃ、30びょうちゃんと数えるのよ!」
キャー!と走り去っていく背中。
すれ違う屋敷の人たちが笑ってる。
引越しの荷解きが終わり、ひと段落。
アイツは仕事で毎日外出。夜にはちゃんと帰ってくる。
お袋は俺たちが遊んでるのをいつも微笑ましく鑑賞。
屋敷の人たちにも楽しそうに話しかけられて。
(なんだこの、穏やかな時間は)
今まで散々悩んだ分のボーナスみたいな。
いや、別にいいけど。でもなんかむず痒くて居た堪れない。
「29、30。行くぞ」
(あっちに走ってったから、そんな遠くには行ってないだろうし……あ、)
開始早々見つけてしまうのも、いつものこと。
子どもと遊ぶの気ぃ遣う…すぐ見つけたら怒られるし、泣くし、隠れる場所も簡単なとこじゃないとダメだし、けど簡単すぎてもダメだしでマジで難しい。マニュアルとかねぇのか。
ってかそもそも何でそんなとこ隠れた、見つかるに決まってんだろおい、もうちょっと頭使え、一体何考えてんだーー
「っ、くく、」
こういうのを多分、可愛いとか愛しいとかって言うんだと思う。
(弟は見つけたし、先に妹見つけて声かけとくか)
年上なぶん少し知恵があるから、難易度は若干上。
気づかずに通過し「ほう……」っと安堵のため息が吐かれるのを想像して、心の中で笑ながらわざとらしく足音を立ててやった。
***
妹が鬼をして、また俺が鬼になって、弟が鬼をして、一緒に数を数えてやって。
広い屋敷内を、あっちへこっちへぐるりぐるり。
そんなことを何度も繰り返し、また俺が鬼の番がきた。
「あの子、いないわねぇ……」
今回は先に妹が見つかったから声をかけ、弟を探している。
低い身長と手を繋いでいるので前屈みになり背中が痛い。歩くのも遅いし、いっそ俺が抱きかかえてしまったほうがらく。
それでも「手を繋ぎたい」と言う主張を優先し、なんとか歩いてく。
(こんなに見つからねぇこと無かったな…毎回すぐ分かるとこいんのに)
何処だ? 遠くまで行った? いやアイツの足でそこまでは行けないはず。
お袋のところか? 飽きて行ったはワンチャンあるな。
一度、訪ねてみるかーー
ヒソッ
「おにいさまっ!」
「ん?」
「あそこあそこ」
小さな手が指差す先。
窓とカーテンの間に、小さな丸い影。
ゆっくりカーテンを開けると、窓からの暖かい光に包まれスゥスゥ眠っている弟がいた。
あぁなるほど、寝てたのか。
そりゃ物音たたないし分からねぇな。結構遊んだもんな。
暖かいもんな、此処。すごく。
何故だか優しい気分になりながら、穏やかに寝息をたてる頭をひと撫でしてゆっくり抱える。
小声で「わたしもだっこして!」という妹も抱き上げ、来た道をゆっくり戻っていって。
(……これは、多分また笑われるな)
歩く振動で眠くなるのか、うつらうつら舟を漕ぎだす妹。
部屋へ着くまでに寝てしまうんだろう。
すれ違う屋敷の人たちに、微笑ましく見られながら
お袋に「あらあら」と苦笑され、片方持つように手を伸ばされながら
こうやって、高校生の俺の日常は過ぎていくんだろう。
大学へ進んだら、もしかしたら屋敷を出るかもしれない。
社会人になればきっと出ていく。
たから、それまでに
此処から通える高校へ 行っているうちに
俺は、歳の離れた兄妹たちの兄を
精一杯やろうと 思う。
(おにいさまっ、おきたー!あそんで!!)
(あそんでー!)
(……お前ら、もう少し休憩というものを…)
((??))
fin.
※久しぶりすぎて年齢もろもろを再度書いておきます。
・ヒデト: 17歳 / 高校2年生 / 黒髪黒目の日本人 / 母親の連れ子
・妹: 3歳 / 金髪青目の英国と日本のハーフ / 再婚相手との子
・弟: 2歳 / 金髪青目の英国と日本のハーフ / 再婚相手との子
0
お気に入りに追加
352
あなたにおすすめの小説
壁穴奴隷No.19 麻袋の男
猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。
麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は?
シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。
前編・後編+後日談の全3話
SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。
※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。
※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。
当たって砕けていたら彼氏ができました
ちとせあき
BL
毎月24日は覚悟の日だ。
学校で少し浮いてる三倉莉緒は王子様のような同級生、寺田紘に恋をしている。
教室で意図せず公開告白をしてしまって以来、欠かさずしている月に1度の告白だが、19回目の告白でやっと心が砕けた。
諦めようとする莉緒に突っかかってくるのはあれ程告白を拒否してきた紘で…。
寺田絋
自分と同じくらいモテる莉緒がムカついたのでちょっかいをかけたら好かれた残念男子
×
三倉莉緒
クールイケメン男子と思われているただの陰キャ
そういうシーンはありませんが一応R15にしておきました。
お気に入り登録ありがとうございます。なんだか嬉しいので載せるか迷った紘視点を追加で投稿します。ただ紘は残念な子過ぎるので莉緒視点と印象が変わると思います。ご注意ください。
お気に入り登録100ありがとうございます。お付き合いに浮かれている二人の小話投稿しました。
彼の理想に
いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。
人は違ってもそれだけは変わらなかった。
だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。
優しくする努力をした。
本当はそんな人間なんかじゃないのに。
俺はあの人の恋人になりたい。
だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。
心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。
この愛のすべて
高嗣水清太
BL
「妊娠しています」
そう言われた瞬間、冗談だろう?と思った。
俺はどこからどう見ても男だ。そりゃ恋人も男で、俺が受け身で、ヤることやってたけど。いきなり両性具有でした、なんて言われても困る。どうすればいいんだ――。
※この話は2014年にpixivで連載、2015年に再録発行した二次小説をオリジナルとして少し改稿してリメイクしたものになります。
両性具有や生理、妊娠、中絶等、描写はないもののそういった表現がある地雷が多い話になってます。少し生々しいと感じるかもしれません。加えて私は医学を学んだわけではありませんので、独学で調べはしましたが、両性具有者についての正しい知識は無いに等しいと思います。完全フィクションと捉えて下さいますよう、お願いします。
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる