ハルとアキ

花町 シュガー

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番外編 2

Taylor Richardson家 in 新しい我が家

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※P458「Taylor Richardson家 in 飛行機」の次くらいの時系列です。




【side: ヒデト】


「おにいさまっ!おはよー!!」

「はよっ!」


「ん、おはよう」


燦々と降り注ぐ日本とは違う陽の光。
パンの焼ける音、淹れたてのコーヒー。蜂蜜やミルクを溶かしたような甘ったるい時間。

Taylor Richardson家の朝は、大体こうして始まる。

こっちに着いてまだ日も浅く、学校の手続きも終わってないから毎日ボーッとしていて。
この屋敷は街から少し離れた場所にあるから、静かで心地いい。
慌ただしかった日々が昔のことのように感じる。つい最近だったのにな。

(さて、今日は なにしtーー)


「おにいさまっ!かくれんぼしましょ!!」


「しましょ!」


「あぁ、いいぞ」


「「やったー!!」」


探検ごっこ・お庭遊び・おままごと・屋敷の周りの散歩・etc…

ここに着いてから毎日振り回されっぱなしだ。
これまで一緒に過ごせてなかった分、その空白を埋めるよう誘われるもの全てに付き合ってる

が、


(結構体力使うぞこれ……)


世の母親、父親はすごい。
保育園・幼稚園の先生もすごい。

まじで底なし。
お前らの体力どうなってんの? そんな短い睡眠で回復すんの? 昼寝って偉大だな、ってか子どもすごくね??

キャンキャン元気に飛び回る小さいの × 2。
外でもやんちゃしてたし体力あるほうだと思ったのにな…舐めてたわ……

「じゃーんけーんぽいっ!あ、おにいさまの負け!」

「おにぃさま、おに!」

「おーわかった」

「それじゃ、30びょうちゃんと数えるのよ!」

キャー!と走り去っていく背中。
すれ違う屋敷の人たちが笑ってる。

引越しの荷解きが終わり、ひと段落。
アイツは仕事で毎日外出。夜にはちゃんと帰ってくる。
お袋は俺たちが遊んでるのをいつも微笑ましく鑑賞。
屋敷の人たちにも楽しそうに話しかけられて。

(なんだこの、穏やかな時間は)

今まで散々悩んだ分のボーナスみたいな。
いや、別にいいけど。でもなんかむず痒くて居た堪れない。

「29、30。行くぞ」

(あっちに走ってったから、そんな遠くには行ってないだろうし……あ、)

開始早々見つけてしまうのも、いつものこと。
子どもと遊ぶの気ぃ遣う…すぐ見つけたら怒られるし、泣くし、隠れる場所も簡単なとこじゃないとダメだし、けど簡単すぎてもダメだしでマジで難しい。マニュアルとかねぇのか。

ってかそもそも何でそんなとこ隠れた、見つかるに決まってんだろおい、もうちょっと頭使え、一体何考えてんだーー


「っ、くく、」


こういうのを多分、可愛いとか愛しいとかって言うんだと思う。


(弟は見つけたし、先に妹見つけて声かけとくか)

年上なぶん少し知恵があるから、難易度は若干上。
気づかずに通過し「ほう……」っと安堵のため息が吐かれるのを想像して、心の中で笑ながらわざとらしく足音を立ててやった。




***





妹が鬼をして、また俺が鬼になって、弟が鬼をして、一緒に数を数えてやって。
広い屋敷内を、あっちへこっちへぐるりぐるり。

そんなことを何度も繰り返し、また俺が鬼の番がきた。

「あの子、いないわねぇ……」

今回は先に妹が見つかったから声をかけ、弟を探している。
低い身長と手を繋いでいるので前屈みになり背中が痛い。歩くのも遅いし、いっそ俺が抱きかかえてしまったほうがらく。
それでも「手を繋ぎたい」と言う主張を優先し、なんとか歩いてく。

(こんなに見つからねぇこと無かったな…毎回すぐ分かるとこいんのに)

何処だ? 遠くまで行った? いやアイツの足でそこまでは行けないはず。
お袋のところか? 飽きて行ったはワンチャンあるな。

一度、訪ねてみるかーー


ヒソッ

「おにいさまっ!」


「ん?」


「あそこあそこ」


小さな手が指差す先。
窓とカーテンの間に、小さな丸い影。

ゆっくりカーテンを開けると、窓からの暖かい光に包まれスゥスゥ眠っている弟がいた。

あぁなるほど、寝てたのか。
そりゃ物音たたないし分からねぇな。結構遊んだもんな。
暖かいもんな、此処。すごく。

何故だか優しい気分になりながら、穏やかに寝息をたてる頭をひと撫でしてゆっくり抱える。

小声で「わたしもだっこして!」という妹も抱き上げ、来た道をゆっくり戻っていって。

(……これは、多分また笑われるな)

歩く振動で眠くなるのか、うつらうつら舟を漕ぎだす妹。
部屋へ着くまでに寝てしまうんだろう。

すれ違う屋敷の人たちに、微笑ましく見られながら
お袋に「あらあら」と苦笑され、片方持つように手を伸ばされながら

こうやって、高校生の俺の日常は過ぎていくんだろう。

大学へ進んだら、もしかしたら屋敷を出るかもしれない。
社会人になればきっと出ていく。

たから、それまでに

此処から通える高校へ 行っているうちに


俺は、歳の離れた兄妹たちの兄を

精一杯やろうと 思う。













(おにいさまっ、おきたー!あそんで!!)

(あそんでー!)

(……お前ら、もう少し休憩というものを…)

((??))


fin.

※久しぶりすぎて年齢もろもろを再度書いておきます。
・ヒデト: 17歳 / 高校2年生 / 黒髪黒目の日本人 / 母親の連れ子
・妹: 3歳 / 金髪青目の英国と日本のハーフ / 再婚相手との子
・弟: 2歳 / 金髪青目の英国と日本のハーフ / 再婚相手との子


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