ハルとアキ

花町 シュガー

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番外編 1

SNS

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クーさんから頂いたSNSのイラストを元に書いています。

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【side 佐古】



リーン…ゴーン……


この学園の1日の終了を告げる、鐘の音。


(はぁ……終わった)

こちらへ来て早ひと月ほど。
やっと英国の地にも慣れ始めてきた。

編入したこの学園も、それなりに敷居は高いものの案外居心地はいい。

制服はクソだりぃんだがな。
日本と違って動きづれぇしキツイし……どっちかというとスーツ着てるみてぇな感覚になる。
今は着崩さずにちゃんとしてるが、本当はもう今すぐ脱いでしまいたい。

ーーT. Richardsonとしてそれは出来ないが。

やっぱ4年も着崩してんのはヤバかったか。
って、今更反省しても遅ぇんだよ……


「Hideー‼︎」


「uh?」


「Let's go home together!」


「OK」


「Wait Wait!! I’ll go too!」「And I!!」と寄ってくるクラスの奴らに笑って、俺も帰る準備を始める。

T.Richardsonの名を背負って生きていくと決めた以上、それに恥じない行動をすると誓った。
敷居の高い名門中の名門を受け、編入試験で見事高得点を取り上位者のクラスに転入して。
培ってきた学力や英語力は何処へ行っても嘘をつかないんだと、身をもって実感した。

初めての海外、初めての学園、正直右も左もわからない。
日本での学園の雰囲気もあった分緊張しながら初日を迎えたが、寧ろ緊張してたのはクラスメイトの方だった。

『あのT.Richardsonの息子が、このクラスに来るらしい』

世界中で知らない人はいないくらい有名なブランド。
そこの息子が来るなんて、正直コネや繋がりは欲しいが…何よりも粗相をしたら真っ先に自分の親に殺される……
そんな感じでガチガチに緊張してるクラスメイトの雰囲気に、初日から壇上で笑ってしまって。

そっから、一気に打ち解けた。

(まぁ男子校ってのは変わらねぇし、このクラスの雰囲気は前のAクラスと似てんな)

堅苦しいのはごめんだ。俺が普通の出だし、そういうのは向いてない……けれど、これから身につけていかないといけないと思う。
ーーだが、変な偏見や差別的な物の見方は絶対に覚えたくない。

ここは上位クラスというということもあり、その辺はしっかりしていた。
だから今こうして少しずつ慣れていけてる自分がいるわけで……


「Aww, hang on~!!」と何かをバタバタ探しながら準備する友人をみんなで待ちつつ、手持ち無沙汰にスマホを触る。


「………ん」


去り際に丸雛から「このアプリ入れとくねっ!おれたちのことフォローしといて!!」と勝手に入れられたSNS。
たまたま開くと、偶然にも新着に懐かしい顔が上がっていた。

(はぁー、ったくこいつらは……)

「アキが野良猫っぽいから」とかいう謎な理由でその辺うろついてた野良猫をアイコンにしたらしい龍ヶ崎レイヤ。
そいつが、つい数分前ご丁寧にタグまで付けてアキへキスしている写真を投稿している。

『レイヤ!この写真載せないでって言ったのにー!!』というアキのコメントからして、明らかに会長が独断で上げたもの。

ポソッ
「はぁぁ……」

星野、お前『アキ様なんて可愛らしい…(//∇//)』とか顔文字付けて打ってる場合じゃねぇよ。
親衛隊だろうが…会長に文句のひとつでも言ってやれ……

(ーーん、矢野元)

そういえば、こいつらも上手くいったんだっけな。
前回のSkypeで報告があった。
去年の夏にアキと一緒に感じた、丸雛の一人称への疑問。あれが無事解決した話とその詳細と…それから2人のことと。
正直、結果的にあいつらが笑ってんならいい。
今回のことも、画面越しに幸せそうに笑ってる2人の顔を見れたから安心した。


『俺も今度イロハとの写真載せようかな』


載せたいなら載せりゃいいじゃねぇか。

まぁこいつらみたいなのじゃなく、ちゃんと互いに許可したものを載せるべきだがな。

(ま、楽しみにしてるって事で)

矢野元のコメントの下に付いてるイイネ。
タップするとハートが赤く色づいた。

んんー…で、こいつらのは……

まぁ、幸せそうではあるな。なんか無性に腹が立つけど。
なんで腹立つんだ? 謎だ……

でも、アキが幸せそうなら別にいいか。
驚いてはいるが、心なしか少し嬉しそうな表情。

「しょうがねぇな」と苦笑して、こいつらの写真にもハートを押してやった。


「OK!! Let’s go……Hide?」

「Oops, never mind. What were U looking for?」

「HOMEWORK!!!!」

「OMG—This is what's most important. U'll get scolded by the teacher AGAIN!」

「That’s enough!!!!」

「ハハッ」

涙目の友人に笑いながら鞄を背負う。

この学園にも寮はあるが、俺は家から通ってる。
今まで離れてたし、幼い妹弟がいる分なるべく一緒に過ごしたいと思う。


(なぁ、みんな)


こっちの学園でも、俺はなんとかやって行けそうだ。
宿題は日本と比べて少ねぇし、自由度が高い分授業も楽しい。
何より、こうしていい友人が出来てる。
日本に帰るのはまだ先だろうが……次会うときにいろいろ話してやるよ。

(まぁ、それまでにある程度自分の家のことも知っとかねぇとな)

アキやハルや丸雛や矢野元や…会長や星野だって、みんはそれぞれの家を背負っていた。
俺も、次会うまでにはT.Richardsonとして恥じない人になりたいと思う。

再会は、きっとまだまだ先のこと。
だが、また会える日を楽しみにして俺はこの地で自分の名字に食らいついていく。

(……やっぱ、後で俺もコメントしとくか)

『ちゃんとアキの許可取りやがれ』って。

日本での懐かしい日々を思い出しながら、今の友人たちと笑いあって

学園を後にしたーー









(お、アキ佐古からイイネが来たぞ。もっと載せて見せてやろうぜ)

(は!? ちょ、見て見てこのコメント!ちゃんと俺の許可取れって書いてる!!俺が許可するやつだけな!? な!?!?)

(わーカズマ!佐古くんからコメントにイイネもらってるよ!!おれたちも載せようー!)

(そうだな、取るか)

(わぁ即行動。撮ろー! はい、ピース!!)



fin.

素敵なイラスト、本当にありがとうございます。

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