451 / 536
番外編 1
新生徒会、発足 1
しおりを挟む【side イロハ】
「ねぇ……なんでおれたち呼ばれてるの?」
「さ、さぁ…ってか月森先輩とタイラも? なんだろう……」
「……取り敢えず、始まるのを待つしかないんじゃないか?」
『お前ら3人、今日は放課後生徒会室に寄れ。いいな』
朝、教室までアキを送ってきた会長に言われた言葉。
3人で何だろうって話して、ハルに聞いても「すぐに分かるよっ」と笑われて終わってしまって。
結局こうして、今生徒会室のソファーに座ってる。
会長とハルは居なくて、「少し待ってて欲しいとの事でしたよ」と先輩とタイラちゃんがお茶を出してくれて。
それを飲みながらほぉっと息を吐いて、2人を待つ。
「懐かしい場所だなぁ……」
グルリと辺りを見渡しながら、隣でアキがクスリと笑った。
「ふふっ、懐かしいの?」
「うん。秘書の机とか初めは思いっきり離したんだよなぁ…しかもレイヤに背を向けて仕事してた。それなのにいつの間にかまた隣同士の距離になって……今も離されてないみたいで安心した。ハルもちゃんとレイヤとやってるんだな。
イロハとカズマはここ来るの2回目…3回目?くらいだっけ?」
「それくらいになるか……? 改めて見るが、綺麗な部屋だよな」
「いやいや、それが始めはやばかったんだぞ……書類ぐっちゃぐちゃでさ、床に散らばった紙の間から辛うじて赤い絨毯見えるくらい」
「えぇ!?」
「クスクス、その話は私も知っています。アキ様がお一人で片付けられたんですよね」
「そうなんです。あ、でもシャンデリアの蜘蛛の巣はレイヤに取ってもらったんですけど」
「ひぇぇ、あの会長様がシャンデリアを掃除なさったんですか!?」
今ここにいるのはアキの事情を知ってる人たち。
だから、こういう話をしても大丈夫。
「悪りぃ、遅れた」
「ごめんね皆んなっ」
「ぁ、レイヤ、ハル」
バタンッと扉が開いて、やや慌てた様子の2人。
「全然待ってないですよ。あの、大丈夫ですか……?」
「問題ない丸雛。ーーん、揃ってんな」
ソファーに座るおれたちを一瞥して、ハルと共にご自分の机へ向かう。
そして何冊かのファイルを手にしながら、前の空いてるソファーへ座った。
「さて、丸雛・矢野元・アキ」
「「「は、はい」」」
改めて名前を呼ばれ、緊張して背筋を伸ばす。
「今回この場に呼んだ理由だが……
お前らには、来期の生徒会入りを頼みたいと思ってる」
「「「ーーぇ?」」」
呆然とするおれたちに、ニヤリと目の前の顔が笑った。
「学力と行動力に関しては問題ねぇし、先生方からの推薦も届いてる。それらを吟味して話し合った結果、2年生だがお前らが適正という結果になった」
生徒会……
来期の、生徒会 入り
「了承するならこの後の話をするが……どうだ?」
「っ!」
(う、そ……)
夏休みのあの日、話をされてからからずっと目指してた。
基本的にこの学園は、3年生にならないと生徒会役員になれない。そんな中2年生からやるのを目標にしたから、もう必死で。
文化祭の実行委員会も、テストだって上位に食い込めるよう必死に食らいついて、梅ちゃん先生にたくさん相談して。
それが
ーー今、現実になってる……?
「イロハ」
ポンっと頭にいつもの大きな手が乗る感触。
「良かったな」
「カ、ズマ……っ!!」
隣へ座っている体に、思いっきり飛びついた。
おれが「目指したい」って言ってから、一緒に頑張ってくれた。
正直カズマが隣にいなかったらここまで来れてなかったかもしれない。
「イロハ、先ずは返事。
会長とハルが待ってるぞ」
「あっ」
パッと離れて改めて前を見ると、目元は笑いながらも真剣にこちらの返事を待つ2人。
「お、お話ありがとうございます!受けさせて、ください!」
緊張で震えてしまったけど、それでも2人は笑ってくれた。
「ん、了解。矢野元はどうする?」
「俺も受けます。任命ありがとうございます」
「あぁ。
後アキ、お前は?」
「俺……? 俺…は………?」
何故か頭に〝?〟がいっぱいの様子のアキ。
それに、先輩が苦笑した。
「アキ様。取り敢えず、この後の話を聞かれてみませんか?」
「え?」
「アキ様のその疑問は、この後の話で解決できるかと」
「は…い……じゃぁ」
渋々というように、会長へコクンっと頷く。
「おし。では、それぞれの役職に関して説明する。
先ずはお前だ、丸雛」
「ぁ、はいっ」
手渡されたのは〝会計〟と書かれているファイル。
「お前には会計を頼みたい」
「かい…けい……」
「そうだ。お前数字とか苦手だろ。行動力はあるがやや早とちりして細かい部分をミスする傾向が見える。
だから会計として、この1年その弱い部分と向き合え。いいな。
次、矢野元」
「はい」
「お前は〝書記〟だ。全体的にバランスが取れてる分、書記として他の役職のサポート等に回れ。今でも十分かもしれないが…もっとだ。
今以上に周りを見ることを身につけていけ」
ずっしり重い〝会計〟と〝書記〟のファイル。
思わずカズマと顔を見合わせる。
会長…いつの間にぼくたちのことそんな見てたの?
苦手なもの・伸ばしたい部分が的確すぎて驚きしかない。
確かにおれは数字とかしっかりしたものが本当に苦手で、でも将来丸雛に関わるなら、売り上げとか利益とか商売に関することに嫌でも向き合わないといけないと思ってた。
そのタイミングを…まさかこういう形で貰えるなんて……
しかも、多分だけど会長がマネジメントしてくださるんだと思う。
信頼できる人に教えられて学べる環境を貰えるなんて、どれだけ幸せなんだろう?
(ーーっ、頑張ろうカズマ!!)
(あぁ、そうだなイロハ)
目だけで会話して、コクンッ!と強く頷いた。
0
お気に入りに追加
352
あなたにおすすめの小説
彼の理想に
いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。
人は違ってもそれだけは変わらなかった。
だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。
優しくする努力をした。
本当はそんな人間なんかじゃないのに。
俺はあの人の恋人になりたい。
だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。
心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件
水野七緒
BL
一見チャラそうだけど、根はマジメな男子高校生・星井夏樹。
そんな彼が、ある日、現代とよく似た「別の世界(パラレルワールド)」の夏樹と入れ替わることに。
この世界の夏樹は、浮気性な上に「妹の彼氏」とお付き合いしているようで…?
※終わり方が2種類あります。9話目から分岐します。※続編「目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件」連載中です(2022.8.14)
五年目の浮気、七年目の破局。その後のわたし。
あとさん♪
恋愛
大恋愛での結婚後、まるまる七年経った某日。
夫は愛人を連れて帰宅した。(その愛人は妊娠中)
笑顔で愛人をわたしに紹介する夫。
え。この人、こんな人だったの(愕然)
やだやだ、気持ち悪い。離婚一択!
※全15話。完結保証。
※『愚かな夫とそれを見限る妻』というコンセプトで書いた第四弾。
今回の夫婦は子無し。騎士爵(ほぼ平民)。
第一弾『妻の死を人伝てに聞きました。』
第二弾『そういうとこだぞ』
第三弾『妻の死で思い知らされました。』
それぞれ因果関係のない独立したお話です。合わせてお楽しみくださると一興かと。
※この話は小説家になろうにも投稿しています。
※2024.03.28 15話冒頭部分を加筆修正しました。
心からの愛してる
マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。
全寮制男子校
嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります
※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください
王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)
かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。
はい?
自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが?
しかも、男なんですが?
BL初挑戦!
ヌルイです。
王子目線追加しました。
沢山の方に読んでいただき、感謝します!!
6月3日、BL部門日間1位になりました。
ありがとうございます!!!
インチキで破廉恥で、途方もなく純情。
亜衣藍
BL
運命の番は幻だった!?オメガである奏の心は、アルファとベータの間で揺れ動く!
主人公の奏は、オメガの男体。
同じオメガでも女体の方は蝶よ花よと持てはやされますが、妊娠し難い男体のオメガは、カーストの最下層という位置付です。
奏は先輩の研究を引き継ぎ、オメガの発情を止める治療法を開発しようとしますが……?
自分の手でオメガの未来を変えようと奮闘する、健気な主人公の奏!
奏は無事に幸せを掴むことが出来るのか!?
一風変わったオメガバース!
必見です(^^)/
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる