ハルとアキ

花町 シュガー

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番外編 1

新生徒会、発足 1

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【side イロハ】


「ねぇ……なんでおれたち呼ばれてるの?」

「さ、さぁ…ってか月森先輩とタイラも? なんだろう……」

「……取り敢えず、始まるのを待つしかないんじゃないか?」


『お前ら3人、今日は放課後生徒会室に寄れ。いいな』

朝、教室までアキを送ってきた会長に言われた言葉。
3人で何だろうって話して、ハルに聞いても「すぐに分かるよっ」と笑われて終わってしまって。

結局こうして、今生徒会室のソファーに座ってる。

会長とハルは居なくて、「少し待ってて欲しいとの事でしたよ」と先輩とタイラちゃんがお茶を出してくれて。
それを飲みながらほぉっと息を吐いて、2人を待つ。

「懐かしい場所だなぁ……」

グルリと辺りを見渡しながら、隣でアキがクスリと笑った。

「ふふっ、懐かしいの?」

「うん。秘書の机とか初めは思いっきり離したんだよなぁ…しかもレイヤに背を向けて仕事してた。それなのにいつの間にかまた隣同士の距離になって……今も離されてないみたいで安心した。ハルもちゃんとレイヤとやってるんだな。
イロハとカズマはここ来るの2回目…3回目?くらいだっけ?」

「それくらいになるか……? 改めて見るが、綺麗な部屋だよな」

「いやいや、それが始めはやばかったんだぞ……書類ぐっちゃぐちゃでさ、床に散らばった紙の間から辛うじて赤い絨毯見えるくらい」

「えぇ!?」

「クスクス、その話は私も知っています。アキ様がお一人で片付けられたんですよね」

「そうなんです。あ、でもシャンデリアの蜘蛛の巣はレイヤに取ってもらったんですけど」

「ひぇぇ、あの会長様がシャンデリアを掃除なさったんですか!?」

今ここにいるのはアキの事情を知ってる人たち。
だから、こういう話をしても大丈夫。


「悪りぃ、遅れた」

「ごめんね皆んなっ」

「ぁ、レイヤ、ハル」

バタンッと扉が開いて、やや慌てた様子の2人。

「全然待ってないですよ。あの、大丈夫ですか……?」

「問題ない丸雛。ーーん、揃ってんな」

ソファーに座るおれたちを一瞥して、ハルと共にご自分の机へ向かう。
そして何冊かのファイルを手にしながら、前の空いてるソファーへ座った。


「さて、丸雛・矢野元・アキ」


「「「は、はい」」」


改めて名前を呼ばれ、緊張して背筋を伸ばす。



「今回この場に呼んだ理由だが……

お前らには、来期の生徒会入りを頼みたいと思ってる」



「「「ーーぇ?」」」



呆然とするおれたちに、ニヤリと目の前の顔が笑った。

「学力と行動力に関しては問題ねぇし、先生方からの推薦も届いてる。それらを吟味して話し合った結果、2年生だがお前らが適正という結果になった」

生徒会……

来期の、生徒会 入り


「了承するならこの後の話をするが……どうだ?」


「っ!」


(う、そ……)

夏休みのあの日、話をされてからからずっと目指してた。

基本的にこの学園は、3年生にならないと生徒会役員になれない。そんな中2年生からやるのを目標にしたから、もう必死で。
文化祭の実行委員会も、テストだって上位に食い込めるよう必死に食らいついて、梅ちゃん先生にたくさん相談して。

それが

ーー今、現実になってる……?


「イロハ」

ポンっと頭にいつもの大きな手が乗る感触。

「良かったな」

「カ、ズマ……っ!!」

隣へ座っている体に、思いっきり飛びついた。

おれが「目指したい」って言ってから、一緒に頑張ってくれた。
正直カズマが隣にいなかったらここまで来れてなかったかもしれない。

「イロハ、先ずは返事。
会長とハルが待ってるぞ」

「あっ」

パッと離れて改めて前を見ると、目元は笑いながらも真剣にこちらの返事を待つ2人。

「お、お話ありがとうございます!受けさせて、ください!」

緊張で震えてしまったけど、それでも2人は笑ってくれた。

「ん、了解。矢野元はどうする?」

「俺も受けます。任命ありがとうございます」

「あぁ。
後アキ、お前は?」

「俺……? 俺…は………?」

何故か頭に〝?〟がいっぱいの様子のアキ。
それに、先輩が苦笑した。

「アキ様。取り敢えず、この後の話を聞かれてみませんか?」

「え?」

「アキ様のその疑問は、この後の話で解決できるかと」

「は…い……じゃぁ」

渋々というように、会長へコクンっと頷く。


「おし。では、それぞれの役職に関して説明する。

先ずはお前だ、丸雛」


「ぁ、はいっ」


手渡されたのは〝会計〟と書かれているファイル。

「お前には会計を頼みたい」

「かい…けい……」

「そうだ。お前数字とか苦手だろ。行動力はあるがやや早とちりして細かい部分をミスする傾向が見える。
だから会計として、この1年その弱い部分と向き合え。いいな。

次、矢野元」

「はい」

「お前は〝書記〟だ。全体的にバランスが取れてる分、書記として他の役職のサポート等に回れ。今でも十分かもしれないが…もっとだ。
今以上に周りを見ることを身につけていけ」

ずっしり重い〝会計〟と〝書記〟のファイル。
思わずカズマと顔を見合わせる。

会長…いつの間にぼくたちのことそんな見てたの?
苦手なもの・伸ばしたい部分が的確すぎて驚きしかない。
確かにおれは数字とかしっかりしたものが本当に苦手で、でも将来丸雛に関わるなら、売り上げとか利益とか商売に関することに嫌でも向き合わないといけないと思ってた。
そのタイミングを…まさかこういう形で貰えるなんて……

しかも、多分だけど会長がマネジメントしてくださるんだと思う。
信頼できる人に教えられて学べる環境を貰えるなんて、どれだけ幸せなんだろう?

(ーーっ、頑張ろうカズマ!!)

(あぁ、そうだなイロハ)

目だけで会話して、コクンッ!と強く頷いた。



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