ハルとアキ

花町 シュガー

文字の大きさ
上 下
439 / 536
番外編 1

2

しおりを挟む


「………ん……?」

きつく閉じていた目を開けると、何故か外。

空は暗く、恐らく夜の時間帯の筈だ。
雪がふわりふわりと舞っていて、目の前には大きな建物があって。
ここは一体……?

(どっかの屋敷の、庭…か……?)

なんか見覚えがある屋敷のような建物、でも俺の家ではない。
ってか俺さっきまで室内にいたよな? 今は外って…しかも朝じゃなくて夜だし……

「ったく、どうなってやがる……」

取り敢えず寒い。
誰か人を探して屋敷に入ろうと足を踏み出して


「ーーは?」


不思議な服の感触に、思考が停止した。


(赤……?)

赤いズボン、赤い服、大きなベルト、分厚いブーツ。
下を向くとズレ落ちてきた頭の上の真っ赤な三角帽子。
ふわふわの白い綿がモコモコしてて、今まで着てた部屋着とは違う感覚。

これは……


「サンタクロース…だと……?」


俗に言うサンタクロースの格好そのもの。

は、え? なんで俺サンタになってんだ?
ついに頭が逝ったか? 現実??

今日がクリスマスイブだからとか?んなわけーー


「あっ! サンタさんだー!!」


「っ!」


幼い、元気な可愛らしい声。
振り返ると、屋敷1階の窓から顔を出してる子どもがいた。

その顔を見て

(は……?)

脳で考えるより先に、体が動き出した。











「わぁ……っ!ほんとにサンタさんだった!!」

窓の外に立つ俺をキラキラしながら「ほわぁ…!」と見つめてくる子ども。

(間違いねぇ……アキだ)

幼かろうが何だろうがすぐに分かる。
この一生懸命俺を見てるこいつは、アキだ。
見た目からして4、5歳程か……?

(ってことは、ここは小鳥遊の屋敷か)

どうりで見た事あるわけだ。
にしても、なんでこいつはこんなに幼い……?

「…おい」

「?」

「お前、俺が誰だかわかんねぇのか?」

「えっ? サンタさんだよね?」

わからねぇ……か。
成る程、少しずつ頭の中で現状を整理していく。

ーー要するに


ポソッ

「俺は、タイムスリップ的なやつでこの時代に来てんのか……?」


「………?」


にわかに信じがたい、いや信じれねぇ…が、多分そうなんだと思う。

まじか……やべぇな遂に時飛べるようになったか。それかさっきまでベッドに居たし、都合のいい夢でも見てんのかも。
はーもうなんか真面目に考えんのも馬鹿らしくなってきた……辞めよう。

「ねぇねぇサンタさんっ、なんでサンタさんにはおひげがないの?」

「あ?」

「モコモコのおひげ!忘れちゃったの…? あ、分かった!サンタさんまだおにいさんだから見習いさんなの? おじいさんじゃないからないんだっ!!」

「あー……あぁ、そういうことにしとけ」

「わぁいあたりー!」

(可愛い)

高校生のアキも、これくらいの年のアキもどっちも可愛い。
いや同一人物だから当たり前なんだが、今も手を叩きながら「きゃー!」と笑ってるし本当なんだこの生き物は……

「あれ? でも」

「ん?」

頭を撫でようと手を伸ばした瞬間、不思議そうな目が口を開いた。


「なんでサンタさん、おれのとこにいるの……?」




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

壁穴奴隷No.19 麻袋の男

猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。 麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は? シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。 前編・後編+後日談の全3話 SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。 ※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。 ※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。

当たって砕けていたら彼氏ができました

ちとせあき
BL
毎月24日は覚悟の日だ。 学校で少し浮いてる三倉莉緒は王子様のような同級生、寺田紘に恋をしている。 教室で意図せず公開告白をしてしまって以来、欠かさずしている月に1度の告白だが、19回目の告白でやっと心が砕けた。 諦めようとする莉緒に突っかかってくるのはあれ程告白を拒否してきた紘で…。 寺田絋 自分と同じくらいモテる莉緒がムカついたのでちょっかいをかけたら好かれた残念男子 × 三倉莉緒 クールイケメン男子と思われているただの陰キャ そういうシーンはありませんが一応R15にしておきました。 お気に入り登録ありがとうございます。なんだか嬉しいので載せるか迷った紘視点を追加で投稿します。ただ紘は残念な子過ぎるので莉緒視点と印象が変わると思います。ご注意ください。 お気に入り登録100ありがとうございます。お付き合いに浮かれている二人の小話投稿しました。

彼の理想に

いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。 人は違ってもそれだけは変わらなかった。 だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。 優しくする努力をした。 本当はそんな人間なんかじゃないのに。 俺はあの人の恋人になりたい。 だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。 心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。

この愛のすべて

高嗣水清太
BL
 「妊娠しています」  そう言われた瞬間、冗談だろう?と思った。  俺はどこからどう見ても男だ。そりゃ恋人も男で、俺が受け身で、ヤることやってたけど。いきなり両性具有でした、なんて言われても困る。どうすればいいんだ――。 ※この話は2014年にpixivで連載、2015年に再録発行した二次小説をオリジナルとして少し改稿してリメイクしたものになります。  両性具有や生理、妊娠、中絶等、描写はないもののそういった表現がある地雷が多い話になってます。少し生々しいと感じるかもしれません。加えて私は医学を学んだわけではありませんので、独学で調べはしましたが、両性具有者についての正しい知識は無いに等しいと思います。完全フィクションと捉えて下さいますよう、お願いします。

愛などもう求めない

白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

手作りが食べられない男の子の話

こじらせた処女
BL
昔料理に媚薬を仕込まれ犯された経験から、コンビニ弁当などの封のしてあるご飯しか食べられなくなった高校生の話

処理中です...