ハルとアキ

花町 シュガー

文字の大きさ
上 下
407 / 536
中編: イロハ編

2

しおりを挟む


「おれの気持ちが追いつくまで待つ?
ねぇ、それってどこまで追いつけばいいの?」

この気持ちはカズマだけがもってるんじゃない、見くびらないでほしい。
確かに告白されて気づいたからおれの方が遅い。
けれど、おれだってずっとずっとカズマの事を想ってきた。

「会長やアキに触発されたのは、無いと言ったら嘘になるかもしれない。でも、それとこれとは別だよ。ぼくは自分の気持ちで、カズマとシたいと思ってる」

心から…抱かれたいと思ってる、本気で。

それなのに、

「〝浮かれてる〟だって? おれがそんな軽い気持ちでカズマの事想ってるように見えてた? やったー嬉しい!って、そんなことだけを考えてるように…見えてた?」

嘘でしょ、笑わせないでよ。


「おれの気持ちを、甘く見るな」


「ーーっ、」


つい冷たい口調になってしまって、言い返そうとしたカズマの口がまた閉じる。
それにふふふと笑って、両頬を包むように両手を添えた。


「ねぇ、カズマ。

もしかしてだけど…おれを抱くのが怖い?」


「っ、」


「あぁ、図星なんだ」

やっぱり、2人に相談しといてよかった。
この視点には本当に気づかなかった。
だって、ぼくはもうとっくに乗り越えた壁だと思ってたから。
……でも、そんなの自分だけだったみたい。

「カズマ。おれは男の子だよ」

「…知ってる」

「男の子なんだから、それなりに性欲だってある」

女の子もあるとは思うけど、でもやっぱりそういうことに対する考え方は根本的に男女で違うのだと思う。

「ヤりたいなって…エッチしたいなぁって、思うよ。
でも、誰とでもいいわけじゃないんだ」

おれは、心から愛する人としたい。

「カズマじゃなきゃ、嫌なんだ」

「イ、ロハ……」

「カズマとじゃなきゃ…絶対、嫌」

真っ直ぐに、綺麗な目を見つめる。

「そりゃ男だから好きな人のこと抱きたいなって思うよ? でも…おれはカズマになら抱かれてもいいって思ってる。だってぼくがカズマ抱くなんて想像つかないもん」

「っ、それなら別に無理してしなくても」

「んーん、無理なんかしてないよ」

無理なんて、本当にしてない。

「カズマとだったら、おれは確かに女の子の役かもしれない。でも、カズマはおれを女の子だと思ってないでしょ?
だから、大丈夫」

安心してというように、短い髪を優しく撫でる。


「おれはね? カズマ。ただエッチがしたいだけじゃないの。

ーー好きな人と、繋がりたいんだ」


ハッと見開かれた目に、自分が映ってるのが見えた。

「もうずっと…ずっと好きって言いたいと思ってて、やっと言えて恋人同士になれて……おれ、もう我慢なんかできないやっ」

「イロ、ハ…」

「なのにさ? なに、カズマは我慢できるってわけ?意味わかんないそれ。おれむーりー!こんなに好きなのにお預けなんて耐えられませんー!!」

わー!っとカズマの上に倒れると、条件反射のように大きな手で包み込んでくれる。
ずりずりと体を上にずらしていって、コツンとおでこ同士をぶつけた。

「カズマはさ、真面目なんだよ。あと優しすぎ」

「ぇ、」

「いっつもいっつもいーっつもぼくの気持ちを優先する!自分の気持ちはどうなの? カズマは何考えてるの?」

「っ、俺は…」

幼い頃からずっと一緒にいた所為で、もしかしたらおれよりカズマの方が性別の概念に囚われてるのかもしれない。
でも……

「もうさ、自分の気持ち優先しなよ」

(ぼくは、大丈夫だよ)

至近距離からいつものように笑ってみせた。

もう守らなくてもいいんだよ?
これからは、ちゃんと隣に立っておれもカズマのこと守るよ?

そんな対等な関係に…なろうよ。

今まで押し潰してきたカズマの気持ち、おれも汲み取っていきたい。

だから、ねぇ教えて。


「カズマは、どうしたいの?」



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

壁穴奴隷No.19 麻袋の男

猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。 麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は? シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。 前編・後編+後日談の全3話 SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。 ※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。 ※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。

当たって砕けていたら彼氏ができました

ちとせあき
BL
毎月24日は覚悟の日だ。 学校で少し浮いてる三倉莉緒は王子様のような同級生、寺田紘に恋をしている。 教室で意図せず公開告白をしてしまって以来、欠かさずしている月に1度の告白だが、19回目の告白でやっと心が砕けた。 諦めようとする莉緒に突っかかってくるのはあれ程告白を拒否してきた紘で…。 寺田絋 自分と同じくらいモテる莉緒がムカついたのでちょっかいをかけたら好かれた残念男子 × 三倉莉緒 クールイケメン男子と思われているただの陰キャ そういうシーンはありませんが一応R15にしておきました。 お気に入り登録ありがとうございます。なんだか嬉しいので載せるか迷った紘視点を追加で投稿します。ただ紘は残念な子過ぎるので莉緒視点と印象が変わると思います。ご注意ください。 お気に入り登録100ありがとうございます。お付き合いに浮かれている二人の小話投稿しました。

彼の理想に

いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。 人は違ってもそれだけは変わらなかった。 だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。 優しくする努力をした。 本当はそんな人間なんかじゃないのに。 俺はあの人の恋人になりたい。 だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。 心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。

この愛のすべて

高嗣水清太
BL
 「妊娠しています」  そう言われた瞬間、冗談だろう?と思った。  俺はどこからどう見ても男だ。そりゃ恋人も男で、俺が受け身で、ヤることやってたけど。いきなり両性具有でした、なんて言われても困る。どうすればいいんだ――。 ※この話は2014年にpixivで連載、2015年に再録発行した二次小説をオリジナルとして少し改稿してリメイクしたものになります。  両性具有や生理、妊娠、中絶等、描写はないもののそういった表現がある地雷が多い話になってます。少し生々しいと感じるかもしれません。加えて私は医学を学んだわけではありませんので、独学で調べはしましたが、両性具有者についての正しい知識は無いに等しいと思います。完全フィクションと捉えて下さいますよう、お願いします。

愛などもう求めない

白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

手作りが食べられない男の子の話

こじらせた処女
BL
昔料理に媚薬を仕込まれ犯された経験から、コンビニ弁当などの封のしてあるご飯しか食べられなくなった高校生の話

処理中です...