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中編: イロハ編
sideアキ: 初めまして、イロハのお母さん 1
しおりを挟むピンポーン……
次の日。
カズマの手が、お隣のインターホンを強く鳴らした。
3人で話し合った後、レイヤと先輩も入れて改めて話し合って、結果「訪ねる」という結論に至った。
(生徒会長だっているし、何か言われたら「うちの生徒が1週間も休んでることに関して訪ねる為に来た」って言えば大丈夫のはず)
これは、あくまでも丸雛の問題…イロハの家族の問題だ。
それにイロハは〝ケンカ〟と言った。俺たちが首を突っ込むべきではないというのは前提にある。
だから、イロハがどう動こうとしてるのかを知り、その手助けをする方に回ろうということになった。
お母さんとどうなりたいのか、この事態にどう収拾をつけたいのか……
それを明確にしてから、 イロハの気持ちを優先したいと思ってる。
だから、取り敢えず先ずはイロハに会いたい。
早く、早く。
今どんな顔をしてるのか……心配だけが積もるばかりで。
ガチャッ
「あら、カズマくんじゃないっ!」
扉から顔を覗かせたのは、イロハそっくりの女の人。
(ぁ、もしかしてこの人が……)
「こんにちは、ご無沙汰してます」
「クスクス、大きくなったわね~。後ろにいるのはお友だちかしら?」
「はい。イロハが心配で来ました」
「えぇ、そうだろうと思ったわ。
どうぞ上がって?」
優しく微笑まれ、ゆっくりと扉を開けてくれるイロハのお母さん。
(綺麗な人…綺麗というより、可愛い……?)
イロハと同じ、明るいくるくるの癖っ毛。
それを長く伸ばしているから、まるで本当のお人形のよう。
「こちらの月森…スズちゃんがお世話になってるみたいね。ごめんなさいね、迷惑かけちゃって」
「いいえ、全然。丸雛の月森はよくうちへ訪ねて来ていたので大丈夫です。今もうちの月森と一緒にいますよ」
「ふふふ、月森同士本当に仲が良いわね。
カズマくん、イロハのこと、気に留めてくれてありがとう。
皆さんも、ありがとう」
俺たちを振り返って、心からの笑顔でお礼を言われる。
それにびっくりして、思わずレイヤの袖を握った。
(す、ごい……)
自分の子を心配してくれて嬉しいというような、一点の曇りもない綺麗な笑顔。
〝自覚がない〟とはこんなにも怖い事なのだろうかと、心臓が冷える。
「ぁ、の…」
「ん? なにかしら」
「イロハは、今どこに……?」
同じように少しだけ青ざめてるハルが、上擦った様な声で聞いた。
「あの子は今自分の部屋にいるわ。
取り敢えず上がってちょうだいっ。飛び切りのお菓子があるのよ」
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