ハルとアキ

花町 シュガー

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中編: イロハ編

sideアキ: 帰ってこない

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「ねぇ、カズマ。イロハ大丈夫かな……」


3学期が始まった冬の学園。
「ちょっと家に呼ばれたから行ってくるね!」と元気よく教室を出ていったきり、もう1週間も帰ってきてない。

(イロハ…)

「アキ、やっぱり僕たちも一緒に行った方が良かったかな……」

「そ、かもなハル…」

もし…もし前回小鳥遊屋敷に乗り込んだ時のイロハの行いを問いただす為、連れ戻されたのだとしたら。

ーーそれは、確実にこちらが悪い。


「っ、カズマ…やっぱり俺たち」

「いや、その考えはないと思う。仮にそうだとしても、それをきっかけにあいつは前に進もうとしている。だからそんな顔するな。イロハが悲しむ」

カズマの優しい手が、そっと俺たちの頭に添えられる。


「大丈夫だ。
あいつも、2人と会ってから強くなった」


「「ーーっ、」」



『ハル!アキ!おはよー!!』

『え、ねぇ今の授業全然わかんなかったんだけどどうしよう…』

『終わった!うわー食堂行こ!』

『大丈夫っ? 無理してない?』

『じゃーん!お菓子作ったんだよ!食べて食べて!!』


(……ねぇイロハ)

この学園に俺として通いはじめて、まだ少ししか経ってない。
けど、もう既に溶け込めてる。

それはさ、勿論レイヤや月森先輩や先生方のフォローもあるけど。
でも、1番はイロハのお陰なんだよ?

何処にいても隣で元気に笑ってくれたから、それにつられて俺も笑っちゃって、周りの目なんか…どうでも良くなるくらい楽しくて……

気がついたら、クラスにも学園にも溶け込めてた。


『アキっ!』


(イロハ……)

俺さ、イロハがいないとやっぱり寂しいよ。
何か寒いんだ、本当。


でも、


(カズマが1番心配してる…よな)

ここ最近、遠くを見ていることが多くなった。
きっと俺たちよりずっと心配してるんだと思う。
でも、それを全く顔に出さずに…寧ろ俺たちの事を安心させようと笑ってくれて……

「っ、」

ねぇ、イロハ。泣いてない?
痛い事されてない?遠くに行ってない?

ちゃんと戻って…くるよね……?


「~~っ、カズマ…やっぱり俺」



Prrrrrrrr…Prrrrrrrr……!!



「っ!」


「「え……?」」


クラス中に突如響いた、その音は

これまで一緒に過ごしてきて一度も鳴ることが無かった


カズマの、携帯電話だったーー





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