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おかえり編
sideアキ: これからのこと
しおりを挟む次の日訪ねて来たのは、月森先輩と先生方だった。
「アキ様、もうベッドでなくても平気なのですか?」
「はいっ、もう大丈夫です」
昨日来てくれたメンバーが報告してたのか、普通に椅子に座ってる俺を心配してくれる。
もう腰痛くないしな。
いや、本音言うとまだ痛いけど、でも歩けないほどじゃないし昨日に比べたら全然……
「それならいいが……無理はすんなよ」
「ありがとうございますっ」
梅谷先生から掻き回すように髪を撫でられて、それぞれ席に着いた。
「アキくん。龍ヶ崎の屋敷はどうですか?」
「夫妻がとても良くしてくださいます。メイドさんたちも本当に優しくて…安心して過ごせてます」
「そうですか、良かったです」
「学園でのハルはどうですか?」
「ふふ、大丈夫。皆さんととても仲良く生活してらっしゃいますよ。朝寮を出るときも、いつも元気に笑っています」
「クラスでも普通だな。まぁ、クラスの奴らはお前と入れ替わった事を気づいてねぇし、お前がいた時と変わらない雰囲気だ」
(そうなのか…良かった)
佐古やイロハたちにもハルのことお願いしてるし、きっと慣れないところはフォローしてくれると思う。先輩もいるし。
あ、ってか、
「ぁの、先輩」
「? どうされましたアキ様?」
「先輩は、本当に俺たち2人の月森なんですか?」
「はい、そうです」
「それは…その、大丈夫なんですか……?」
「……?〝月森〟という意味ででしょうか?
はい、問題ございません」
クスリと先輩が笑ってくれる。
「月森の現当主にも、しっかりと許可を頂きました。私は、正式に小鳥遊ハル様・アキ様の月森です」
(1人だけでも大変だと思うのに…)
俺たちのためにわざわざ許可を取ってもらって……もう迷惑かかんないように気をつけないtーー
「ですから、アキ様も沢山私に我儘を仰ってくださいね」
「ぇ?」
「クスクスッ、今逆のことを考えていませんでしたか?」
「ーーっ、」
「あぁやはり。
ハル様に言った時もそうだったんです」
「しょうがないですねぇ…」と苦笑された。
「アキ様、私をしっかり使っていただけないのであれば月森の意味がないのです。これまであなた方はお互いをお互いで支え合ってここまで来られた…
そこに、私を入れてはくれませんか?」
「っ、」
「初めは、困った時の相談役でもいいのです。
まだまだ先は長い…ゆっくりとお付き合いいただければと思います。私も全力であなた方をお支えし、お守りいたします。
そして、いつの日か確固たる信頼関係が築けるよう努めてまいります」
「せ、んぱい…、どうして……」
どうしてそんなに、俺たちを大事に思ってくれるの?
俺たち、なにもしてないのに。
「クスッ、何故でしょうね? それは私にも分かりません。しかし、私の中の月森が〝この方々がお前の主人だ〟と告げているのです。
お2人は、何処かの召使いを拾ったという程度の認識で結構ですよ。腕は確かだと思いますので」
「ぇ、そ、そんな、それは無いですっ!」
(召使いとか勿体なすぎる!!)
「先輩っ、先輩は俺たちの先輩ですから!
と、取り敢えず学生の身分が終わるまでは…〝月森先輩〟と呼ばせてください……」
「ふふふ。はい、かしこまりました」
(俺たちも、父さん達みたいにいつか先輩のことを〝月森〟って呼ぶ時が来るのかな…)
今はまだ、わからないけれど……でも。
膝の上に置かれた先輩の手にそっと腕を伸ばすと、直ぐにその手を取ってくれた。
「先輩…どうぞ、よろしくお願いします」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いいたします」
面白いと言うようにスッと目を細めて優しく笑う先輩に、「あぁ、きっとハルも同じ回答をしたんだろうなぁ」と思ったーー
「さて、まぁひと段落着いたところで今後の話していいか?」
お茶を飲んで一息ついたところで、梅谷先生が話してくれる。
「お前の学校への編入手続きなんだが、正直まだかなり難しい状況だ」
まぁ、そうだろうなぁ。
他の学校ならまだしも、あの学校だし。
「生徒ならまだ納得させられるんだが、問題は親だ。小鳥遊が双子だったと言う事を子どもは絶対ぇ親に言うし、親は親で経営者な分あの手この手で小鳥遊のことを調べる輩がいそうでなぁ…
それを考えると、中々直ぐにとはいかねぇ」
「早くアキくんをハルくんと一緒に学校へ通わせてあげたいのですが…すいません……」
「いいえそんな!謝られる事じゃないですっ」
(寧ろこっちが難しくさせちゃってるんだし)
今は梅谷先生・櫻さん・月森先輩・レイヤを中心にして龍ヶ崎と小鳥遊の社長とも話し合いをしてくれてるらしいけど、やっぱ生徒たちの親がネックらしい。
「そこでだ。
今は11月半ば…あと1ヶ月もすればクリスマスが来て、直ぐに年越しだ。
その後の始業式…要するに来年の1月始め。その時にお前を編入させんのが1番いいんじゃねぇかという結論に至った」
新年という忙しい時期、そしていい節目。
「そのタイミングでアキを学園へ通わせるのが、周りの目も多少は逸れて尚且つ何らかの理由を付けられそうだ」という考えだ。
「正直、これが我々の限界でした……その為、アキ様にはもう暫く龍ヶ崎の屋敷へ居ていただく必要があります。外にも出ることが出来ず窮屈な思いをさせてしまい、本当に申し訳ありません…」
「そんなっ、いいんです!」
みんながこんなにも俺の事を考えてくれえるのが、本当に嬉しい。
「それに、全然窮屈なんかじゃないです」
小鳥遊の屋敷にいた時とは比べものにならないくらい快適だ。
トウコさんも良くしてくれるし、みんな優しいし。
「だから、本当に大丈夫です」
強く頷いて笑うと、申し訳なさそうな表情が少し薄れた。
「これからも学校終わったらそれぞれ訪ねると思いますので。梅ちゃん先生は忙しい時がありますので、その時は私が運転しますね」
「っ、だから梅ちゃん先生はやめろって」
「ふふふ。私はあまり忙しい方ではありませんので大丈夫ですよ。会いに来させてくださいねアキくん」
「櫻さん…ありがとございますっ」
「まぁ、今日はこの話をしに俺たちは来たんだが……アキが大丈夫そうならそれで計画立ててもいいか?」
「はい、お願いします」
「よし、わかった。
それじゃあ、お前には宿題をどっさりあげねぇとなぁ」
「………へ?」
「ハルや丸雛たちと同じクラスになりてぇだろ?うちは私立だし特別双子がどうとかでクラスが別々になることはない。だから学力でA組に入ってこい。
まぁ、お前なら大丈夫だろうけどな。腕慣らしに適当なプリント用意してやる」
「っ、ありがとうございます!」
そっか、俺ハルと一緒の学校に通えるんだ……
どうしよう…夢みたい。
「めいっぱい宿題持って来ていいですよ!」と言うとみんなに苦笑されて。
そのまま少し話して、「またな」と帰っていった。
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