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準備編
〝ハル〟1
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【side 佐古】
「おはよっ、佐古君」
「ん、はよ」
朝起きると、リビングでは既にハルが制服を着てくつろいでいた。
「朝帰ってきたのか?」
「そう、ついさっき」
「そうか」
昨日は授業中にいきなりの呼び出しだったから、何かやべぇ事でもあったかと心配したが……
見る限り、何の変わりもなさそうだ。
(ま、家のことだし深入りは禁物か)
「メシは?」
「屋敷で食べてきちゃった、佐古君の分作っといたよ」
「わりぃ」
「クスクスッ、いいえ~」
「なんか飲むか?」
「わ、うーん…紅茶で」
「おう」
飲み物くらい準備をして、テーブルに移動してきたハルの前に置く。
「…いただきます」
「ふふふっ、召し上がれ」
ニコニコ俺が食べるのを見つめられて、居心地が悪い。
「……なぁ、お前宿題やったのか?」
「ん、帰ってきてからすぐ終わらせたよっ。本当英語の宿題多いよねーもうちょっと減らしてくれないかなぁ…」
「は? 英語が1番簡単だろ」
「そんなの佐古君だけだよ」
「得意な人はいいよなぁ~」と口を尖らせてるのをハッと鼻で笑ってやって、
ーーふと、違和感を感じた。
(……何だ…?)
何気ない、いつもの会話。
いつも通り、テンポよく弾んでいく。
なのに
それなのに 何か
〝何かが、違う気がする〟
(……? こいつの表情か………?)
顔色も、こちらを見る目も、笑う口も、なんらおかしくも何もない。
昨日梅谷に連れて行かれたハルだ。
だが、何か…言葉では言い表せない〝違和感〟を感じる。
(違和感…違和感か……)
そういえば、前にも一度こいつには違和感を感じた事があった。
初めての学園のくせに全てが上手く行きすぎていて、どうしてもおかしさをぬぐいきれなくて…
あれから、そんな事は考える事は無くなったが………
ーー〝何か〟が、違う…気がする……
(一体…何なんだ………?)
「佐古君?」
「っ、わり」
「大丈夫? 今こっち見ながらぼーっとしてたよ?」
「何でもねぇ」
「本当に?」
「あぁ」
「ふふふ、そっかぁ」
「ほらっ、食べ終わったら準備してきなよ!僕洗う人濯ぐ人どっちもやったげるからっ」と背中を押され、
俺は制服に着替えるため、再び自室へ戻ったーー
【side イロハ・カズマ】
「おはよハル!」
「わっ、イロハおはよっ」
部屋の前で待ち伏せして、出てきたところへぎゅぅっと抱きつく。
昨日、ハルがいきなり屋敷へ帰ってから結局その日帰ってこなくて、心配で心配でカズマと一緒に「朝一でハルに会いに行こう」って話をしていた。
(ハルだ!)
良かった、ちゃんと帰ってきてた。
抱きとめてくれる腕に安心する。
「おはようハル。昨日は大丈夫だったのか?」
「おはようカズマっ。うん、大丈夫だよ。
ごめんね、なんか心配かけちゃったみたいだね」
「んーん!ハルが謝る必要ないから!」
「俺たちが勝手に心配してるだけなんだ。別に気にする事じゃない」
「っ、うん。ありがと2人とも」
俺たちの気遣いが「嬉しい」というように、
いつも通り、ほわりと笑われてーー
「「…………?」」
ふと、動きが止まった。
(何だ…?)
(あれ?)
何だろう……今
ーー今、〝ハルじゃなかった〟ような、気がする。
(え、そんなはずない)
だって、今自分が抱きついてるのは間違いなくハルだ。
細い体も身長も顔も、抱き締め返してくれてる腕だって、全部全部ハルのもの。
それなのに……何か、何か…変な感じがする………
チラリと互いに目配せをした。
(同じこと、考えてる……)
何だろう…おれたちが変なのかな?
それとも、やっぱり屋敷で何かあった?
基本的に、他人の家の事には首を突っ込んだらいけない。
だから、話してくれるまで聞く事は出来ない…けど……
(これは、ハル…だよね?)
いや、間違いなくハル。
どっからどう見ても、正真正銘ハルだ。
なのに……これは、一体 ーー
「イロハっ、カズマっ」
「「っ、」」
「大丈夫? 朝からぼーっとしちゃってるよ。どうしたの?」
「う、うぅんっ、何でも!」「何でもない」
「うーん?そっかぁ。
クスッ、佐古君も朝ぼーっとしちゃったんだよね。3人とも何かあった?」
「「え、」」
(佐古君も……?)
チラリと見ると「お前らもか」という顔をされて、更に頭の中に「?」が生まれる。
「ふふふっ。ね、早く学校行こう?」
「ぁ、うん!行こうハル!」
「そうだな」
後で佐古にも聞けばいいかと、
取り敢えずは、その疑問を置いておく事にしたーー
【side 佐古】
「おはよっ、佐古君」
「ん、はよ」
朝起きると、リビングでは既にハルが制服を着てくつろいでいた。
「朝帰ってきたのか?」
「そう、ついさっき」
「そうか」
昨日は授業中にいきなりの呼び出しだったから、何かやべぇ事でもあったかと心配したが……
見る限り、何の変わりもなさそうだ。
(ま、家のことだし深入りは禁物か)
「メシは?」
「屋敷で食べてきちゃった、佐古君の分作っといたよ」
「わりぃ」
「クスクスッ、いいえ~」
「なんか飲むか?」
「わ、うーん…紅茶で」
「おう」
飲み物くらい準備をして、テーブルに移動してきたハルの前に置く。
「…いただきます」
「ふふふっ、召し上がれ」
ニコニコ俺が食べるのを見つめられて、居心地が悪い。
「……なぁ、お前宿題やったのか?」
「ん、帰ってきてからすぐ終わらせたよっ。本当英語の宿題多いよねーもうちょっと減らしてくれないかなぁ…」
「は? 英語が1番簡単だろ」
「そんなの佐古君だけだよ」
「得意な人はいいよなぁ~」と口を尖らせてるのをハッと鼻で笑ってやって、
ーーふと、違和感を感じた。
(……何だ…?)
何気ない、いつもの会話。
いつも通り、テンポよく弾んでいく。
なのに
それなのに 何か
〝何かが、違う気がする〟
(……? こいつの表情か………?)
顔色も、こちらを見る目も、笑う口も、なんらおかしくも何もない。
昨日梅谷に連れて行かれたハルだ。
だが、何か…言葉では言い表せない〝違和感〟を感じる。
(違和感…違和感か……)
そういえば、前にも一度こいつには違和感を感じた事があった。
初めての学園のくせに全てが上手く行きすぎていて、どうしてもおかしさをぬぐいきれなくて…
あれから、そんな事は考える事は無くなったが………
ーー〝何か〟が、違う…気がする……
(一体…何なんだ………?)
「佐古君?」
「っ、わり」
「大丈夫? 今こっち見ながらぼーっとしてたよ?」
「何でもねぇ」
「本当に?」
「あぁ」
「ふふふ、そっかぁ」
「ほらっ、食べ終わったら準備してきなよ!僕洗う人濯ぐ人どっちもやったげるからっ」と背中を押され、
俺は制服に着替えるため、再び自室へ戻ったーー
【side イロハ・カズマ】
「おはよハル!」
「わっ、イロハおはよっ」
部屋の前で待ち伏せして、出てきたところへぎゅぅっと抱きつく。
昨日、ハルがいきなり屋敷へ帰ってから結局その日帰ってこなくて、心配で心配でカズマと一緒に「朝一でハルに会いに行こう」って話をしていた。
(ハルだ!)
良かった、ちゃんと帰ってきてた。
抱きとめてくれる腕に安心する。
「おはようハル。昨日は大丈夫だったのか?」
「おはようカズマっ。うん、大丈夫だよ。
ごめんね、なんか心配かけちゃったみたいだね」
「んーん!ハルが謝る必要ないから!」
「俺たちが勝手に心配してるだけなんだ。別に気にする事じゃない」
「っ、うん。ありがと2人とも」
俺たちの気遣いが「嬉しい」というように、
いつも通り、ほわりと笑われてーー
「「…………?」」
ふと、動きが止まった。
(何だ…?)
(あれ?)
何だろう……今
ーー今、〝ハルじゃなかった〟ような、気がする。
(え、そんなはずない)
だって、今自分が抱きついてるのは間違いなくハルだ。
細い体も身長も顔も、抱き締め返してくれてる腕だって、全部全部ハルのもの。
それなのに……何か、何か…変な感じがする………
チラリと互いに目配せをした。
(同じこと、考えてる……)
何だろう…おれたちが変なのかな?
それとも、やっぱり屋敷で何かあった?
基本的に、他人の家の事には首を突っ込んだらいけない。
だから、話してくれるまで聞く事は出来ない…けど……
(これは、ハル…だよね?)
いや、間違いなくハル。
どっからどう見ても、正真正銘ハルだ。
なのに……これは、一体 ーー
「イロハっ、カズマっ」
「「っ、」」
「大丈夫? 朝からぼーっとしちゃってるよ。どうしたの?」
「う、うぅんっ、何でも!」「何でもない」
「うーん?そっかぁ。
クスッ、佐古君も朝ぼーっとしちゃったんだよね。3人とも何かあった?」
「「え、」」
(佐古君も……?)
チラリと見ると「お前らもか」という顔をされて、更に頭の中に「?」が生まれる。
「ふふふっ。ね、早く学校行こう?」
「ぁ、うん!行こうハル!」
「そうだな」
後で佐古にも聞けばいいかと、
取り敢えずは、その疑問を置いておく事にしたーー
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