231 / 536
文化祭編
sideアキ: それは、優しい贈り物
しおりを挟む「お前に渡したいものがあるんだ」
「ぇ?」
目の前の体が離れて行き、テーブルの上に置いてあった小さな箱を持って戻ってきた。
「ほら、両手」
「ぇ、こ、こう……?」
両手を前に差し出すと、その中にコトリと箱を置かれる。
「開けてみろ」
言われた通りおずおずとリボンを解き、シンプルな小さい箱をそっと開いてみる、と。
「わぁ……っ」
中に入っていたのは、白っぽい緑色のような色をした石がコロンと付いているネックレス。
「もともと、後夜祭でお前に渡す予定だったんだ」
「へ?」
「ほら貸せ。着けてやるよ」
箱を取られ、中から出てきたネックレスをゆっくりと首に着けられる。
チェーンが思いの外長く着けてる自分でも石がよく見えて、胸元で揺れている石を手に取り目の前にかざしてみた。
「綺麗……」
「ククッ、気に入ったか?」
「はいっ」
「その石は、:翡翠(ひすい)だ。」
「翡翠……?」
「そう。昔から勾玉とかに使われてた石で、着けた者を守護する力があるそうだ。まぁ…俗に言う〝御守り〟みたいな物だな」
「御守り……」
「体調面もそうだが、お前危なっかしいんだよ。そのくせ自分のことは後回しにして他人ばっかで……ちったぁ自分自身が1番大切ってことを自覚しろ」
「はぁぁぁ…」とため息を吐きながら、レイヤは石を見ている俺を後ろからそっと抱きしめた。
「いいか。絶対ぇこのネックレスを肌身離さず身につけとけ。この石がお前を守ってくれる筈だ。
これから何かあったら先ずはこの石を握って深呼吸しろ。で、落ち着いたら直ぐ俺に知らせること。わかったな?」
「は、はぃ…!」
「おし。
それに、これで雷も少しは怖くなるなるだろ……?」
「ぇーー」
ビックリして後ろを振り返ると、優しそうな顔と目が合う。
「なるべく俺がいてやるが、この先どうしても一緒にいられねぇ時も来るだろ。そういう時とか、これ握っとけ。こういう拠り所があった方が恐怖も減るだろう…?」
(~~っ、あぁもう……)
「っ…ぁ、りがとう……ございまっ」
「ククッ。ほら、もう泣くな。笑え」
ハルには関係のない雷の事まで考慮してプレゼントを選んでくれたレイヤに、どうしようもなく胸がぎゅぅぅっとなる。
(多分チェーンが少し長いのも、着けてる俺が視覚で石を捉えてちょっとでも安心できるようにする為…かな……)
ハルの体が首から下げても重くないくらいの大きさに計算されてる石・その石の意味と心配り。
全部が全部、ただただ嬉しくてまた涙が溢れてくる。
それを、レイヤは微笑みながら指で拭ってくれた。
「さて、ハル」
「グスッ…はぃ」
「白い衣装で来て告白したってことは、〝そういう事〟として捉えても、良いってことか…?」
「っ、……はい、そうです」
(俺を)
「ーー〝あなた色に、染めてくださいますか?〟」
「ーーーー嗚呼、勿論だ」
抱きしめられていた腕で、ガバリと横向きに抱き上げられた。
〝告白する時は、白い服を着れば成功する〟
そんなジンクスがあるのは、きっと結婚式の時花嫁が着る純白のウェディングドレスの意味に憧れを抱くからだ。
みんな、大きな不安があるからこそ少しでもその幸せなジンクスにあやかりたいもの。
ウェディングドレスが真っ白である意味は「私をあなた色に染めて欲しい」という心の現れから。
そんなうっとりするほどロマンチックなジンクスに、イロハと俺は飛びついて白い衣装を探しまくった。
(まぁ、結局俺自身凄いしっくりくる仮装ができたから良かったけどな)
帰ったら、イロハと月森先輩にお礼言わなきゃ。
……あぁ、でもそれは
(ーー〝明日〟の昼とかに、なりそうだなぁ)
ドサッと、運ばれた先
レイヤのベッドに寝かされた。
0
お気に入りに追加
352
あなたにおすすめの小説
壁穴奴隷No.19 麻袋の男
猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。
麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は?
シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。
前編・後編+後日談の全3話
SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。
※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。
※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。
当たって砕けていたら彼氏ができました
ちとせあき
BL
毎月24日は覚悟の日だ。
学校で少し浮いてる三倉莉緒は王子様のような同級生、寺田紘に恋をしている。
教室で意図せず公開告白をしてしまって以来、欠かさずしている月に1度の告白だが、19回目の告白でやっと心が砕けた。
諦めようとする莉緒に突っかかってくるのはあれ程告白を拒否してきた紘で…。
寺田絋
自分と同じくらいモテる莉緒がムカついたのでちょっかいをかけたら好かれた残念男子
×
三倉莉緒
クールイケメン男子と思われているただの陰キャ
そういうシーンはありませんが一応R15にしておきました。
お気に入り登録ありがとうございます。なんだか嬉しいので載せるか迷った紘視点を追加で投稿します。ただ紘は残念な子過ぎるので莉緒視点と印象が変わると思います。ご注意ください。
お気に入り登録100ありがとうございます。お付き合いに浮かれている二人の小話投稿しました。
彼の理想に
いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。
人は違ってもそれだけは変わらなかった。
だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。
優しくする努力をした。
本当はそんな人間なんかじゃないのに。
俺はあの人の恋人になりたい。
だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。
心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。
この愛のすべて
高嗣水清太
BL
「妊娠しています」
そう言われた瞬間、冗談だろう?と思った。
俺はどこからどう見ても男だ。そりゃ恋人も男で、俺が受け身で、ヤることやってたけど。いきなり両性具有でした、なんて言われても困る。どうすればいいんだ――。
※この話は2014年にpixivで連載、2015年に再録発行した二次小説をオリジナルとして少し改稿してリメイクしたものになります。
両性具有や生理、妊娠、中絶等、描写はないもののそういった表現がある地雷が多い話になってます。少し生々しいと感じるかもしれません。加えて私は医学を学んだわけではありませんので、独学で調べはしましたが、両性具有者についての正しい知識は無いに等しいと思います。完全フィクションと捉えて下さいますよう、お願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる