ハルとアキ

花町 シュガー

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文化祭編

sideアキ: それは、優しい贈り物

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「お前に渡したいものがあるんだ」

「ぇ?」

目の前の体が離れて行き、テーブルの上に置いてあった小さな箱を持って戻ってきた。

「ほら、両手」

「ぇ、こ、こう……?」

両手を前に差し出すと、その中にコトリと箱を置かれる。

「開けてみろ」

言われた通りおずおずとリボンを解き、シンプルな小さい箱をそっと開いてみる、と。


「わぁ……っ」


中に入っていたのは、白っぽい緑色のような色をした石がコロンと付いているネックレス。

「もともと、後夜祭でお前に渡す予定だったんだ」

「へ?」

「ほら貸せ。着けてやるよ」

箱を取られ、中から出てきたネックレスをゆっくりと首に着けられる。

チェーンが思いの外長く着けてる自分でも石がよく見えて、胸元で揺れている石を手に取り目の前にかざしてみた。

「綺麗……」

「ククッ、気に入ったか?」

「はいっ」

「その石は、:翡翠(ひすい)だ。」

「翡翠……?」

「そう。昔から勾玉とかに使われてた石で、着けた者を守護する力があるそうだ。まぁ…俗に言う〝御守り〟みたいな物だな」

「御守り……」

「体調面もそうだが、お前危なっかしいんだよ。そのくせ自分のことは後回しにして他人ばっかで……ちったぁ自分自身が1番大切ってことを自覚しろ」

「はぁぁぁ…」とため息を吐きながら、レイヤは石を見ている俺を後ろからそっと抱きしめた。

「いいか。絶対ぇこのネックレスを肌身離さず身につけとけ。この石がお前を守ってくれる筈だ。
これから何かあったら先ずはこの石を握って深呼吸しろ。で、落ち着いたら直ぐ俺に知らせること。わかったな?」

「は、はぃ…!」

「おし。

それに、これで雷も少しは怖くなるなるだろ……?」


「ぇーー」


ビックリして後ろを振り返ると、優しそうな顔と目が合う。

「なるべく俺がいてやるが、この先どうしても一緒にいられねぇ時も来るだろ。そういう時とか、これ握っとけ。こういう拠り所があった方が恐怖も減るだろう…?」


(~~っ、あぁもう……)


「っ…ぁ、りがとう……ございまっ」

「ククッ。ほら、もう泣くな。笑え」

ハルには関係のない雷の事まで考慮してプレゼントを選んでくれたレイヤに、どうしようもなく胸がぎゅぅぅっとなる。

(多分チェーンが少し長いのも、着けてる俺が視覚で石を捉えてちょっとでも安心できるようにする為…かな……)

ハルの体が首から下げても重くないくらいの大きさに計算されてる石・その石の意味と心配り。
全部が全部、ただただ嬉しくてまた涙が溢れてくる。

それを、レイヤは微笑みながら指で拭ってくれた。






「さて、ハル」

「グスッ…はぃ」

「白い衣装で来て告白したってことは、〝そういう事〟として捉えても、良いってことか…?」

「っ、……はい、そうです」


(俺を)


「ーー〝あなた色に、染めてくださいますか?〟」


「ーーーー嗚呼、勿論だ」


抱きしめられていた腕で、ガバリと横向きに抱き上げられた。


〝告白する時は、白い服を着れば成功する〟

そんなジンクスがあるのは、きっと結婚式の時花嫁が着る純白のウェディングドレスの意味に憧れを抱くからだ。
みんな、大きな不安があるからこそ少しでもその幸せなジンクスにあやかりたいもの。

ウェディングドレスが真っ白である意味は「私をあなた色に染めて欲しい」という心の現れから。

そんなうっとりするほどロマンチックなジンクスに、イロハと俺は飛びついて白い衣装を探しまくった。

(まぁ、結局俺自身凄いしっくりくる仮装ができたから良かったけどな)

帰ったら、イロハと月森先輩にお礼言わなきゃ。


……あぁ、でもそれは



(ーー〝明日〟の昼とかに、なりそうだなぁ)



ドサッと、運ばれた先

レイヤのベッドに寝かされた。









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