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文化祭編
sideアキ: 変質者の失敗 1
しおりを挟む「小鳥遊様っ、体調は大丈夫ですか……?」
「倒れたって聞いたんですけど……」
「もう平気なんですか? 」
2週間に一度のお茶会。
月森先輩とタイラからは「昨日も実行委員会の会議だったし、今日は休んだ方が……」と言われたが、それを拒否った。
せっかく抽選で当たった人もいるし今回のグループのメンバーもずっと楽しみにしてくれていただろうから、中止だけは絶対に嫌だった。
「ふふ、もう大丈夫です。有難うっ」
「座ってください!」
「飲み物は何がいいですか?」
「きつくないですか? ゆっくりされて下さいね!」
始まった途端わらわらと集まってくれて
みんな、一心に心配してくれて
(あ、やばい。なんか……)
ーー凄い、癒される………
最近ずっと気を張ってたから、こういうほわほわした空間にいるのは本当久しぶりで思わずほわぁっと顔が緩んでしまう。
「えへへ、みんな可愛いですね」
(まじ癒しすぎる……身長が高い方もいるけど、でもまじで可愛く見える、やっばい)
俺、相当疲れてんのかな。
もう何かふわふわしたものが飛んでるの見えるもん。
何も考えずに顔を緩めた途端、何故かピシッと空気が固まる音がした。
「…………え?」
(あれ?)
「ちょ、小鳥遊…様……っ」
「ふわぁぁぁぁ……ぼ、僕やばいです…!」
「っ、やば…ダメですって……」
「ぁ、お、俺お手洗い!」
「僕もっ!」
ザワザワザワッ!と一気に騒がしくなって、バタバタッ!と何人かが席を立って行った。
「………みん、な……?」
「ハ、ハル様ぁ~!」
「タイラ……僕変なことした…?」
「いや!してないです! いやした…いや、してない……いや…し、た…てない!!」
「えぇぇ………?」
「クスクスッ。
ハル様、大丈夫ですのでどうぞそのままで」
「は、はぁ……」
(な、何かよくわかんないけど……)
でも、まぁいっか。
久しぶりに、本当に柔らかな楽しい空間の中、ただただ心から笑うことができた。
「…………ん、お前らも今帰りか」
「あれ?佐古くんだ」
「さーこーくーん!!」
「こんばんは、佐古くん」
お茶会の後、先輩たちと一緒に帰ってたら校門の方向から佐古が歩いてきた。
「外に行ってたの?」
「あぁ、ちょっと用があってな」
「へー!何の用ですか!?」
「……外のダチに、招待状だ」
「招待…状……?」
(もしかして)
「文化祭に、招待するの……?」
「……そうだよ、悪りぃか」
「全っ然!!凄くいいと思うっ!」
佐古が、あの佐古が!誰かに招待状!!
どうしよう……何か凄い嬉しい。
(佐古…本当変わったよな……)
招待するってことは、少しでもこの学園の事を佐古は気に入っているという事で。
〝外の友だち以外にも、この学園に佐古の居場所を作りたい〟
この、ハルと関係なしに始めた俺自身の目標もどうやら叶いそうだ。
(あぁ…本当良かった………)
もう、寂しくない?
出会った時みたいな冷たい目、してない?
学校は楽しい? みんなの事好き?
ーーもう、1人じゃ…ない?
(……っ、やば………)
鼻の奥がツンとして、何でか泣きそうになる。
佐古は本当にいい奴だから、これからもずっとずっと……みんなと暖かく過ごしてて欲しい。
(俺が居なくても、もう大丈夫だな)
今まで散々自分から絡みに行ってたけど、もうそんな事しなくてもいいのかな。
心の奥がツキリと痛んで、一気に寂しくなる。
でも、これは佐古にとって良いことだから。
(ねぇ、佐古)
もうすぐしたらさ、〝ハル〟って奴がこの学園に通うんだ。
お前は何言ってるかわからないだろうけどさ、通うの。
そいつ俺に似た顔をしてて、凄く明るくてさ。
体が弱いのに無理してたくさんのこと頑張って、いろんなこと我慢しちゃうんだ……
でもね? 本当にいい子なんだよ。
俺の、大切で大好きな…暖かい片割れ。
まぁ……お前は〝俺〟のことなんか知る由もないけどさ。
でも、言わせてほしい。
ーーこれから、ハルのこと…どうぞよろしくね。
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