144 / 536
期末テスト編
2
しおりを挟む(な……に………?)
フワリと、大きななにかに体を包まれた。
ハルじゃない。もっと別の、暖かい体温。
ハルより大きなものに、優しく……抱きしめられてる?
(これは、なに?)
「ぁ……っ、は…………」
「大丈夫だ、小鳥遊」
耳元で俺を落ち着かせるようにゆっくりと囁く、低い声。
大丈夫だというようによしよし背中をさする、大きい手。
ーーあぁ、この…声は、この体温は
今、この部屋でこんな事が出来るのは
ーーーー〝会長〟しか、いない。
「っ!?」
「ぉ、おいっ」
いきなり腕の中で暴れ出したからか、焦ったような会長の声が聞こえる。
でも、こっちはそれどころじゃなくて。
(駄目だっ!)
会長に、抱きしめられてる?
一番バレちゃいけない人に、俺はなにされてるんだ?
「っ、小鳥遊、落ち着け!」
「はなっ、離してくださぃ!」
雷の恐怖と、会長にバレる事の恐怖とで、もういっぱいいっぱいで。
パニックになりすぎて、ポロポロ涙が出てきた。
「ひっ、ぅぇぇ……はなして、くださ!」
(お願い、離して)
怖い。
ここでバレて、ハルと一緒にいられなくなる事が。
母さんと父さんから、呆れられる事が。
櫻さんや梅谷先生に、毎朝挨拶できなくなる事が。
イロハたちと一緒に、生活できなくなる事が。
会長と、ここで業務ができなくなる事が。
ーー雷と同じくらい、どうしようもなく……怖い。
(……あぁ、俺)
知らず知らずに、学園での生活が俺にとってかけがえのないものになってたのか。
ハルの代わりとして、ただ役をこなすだけのつもりだったのに
こんなにも、大切なものになってたのか。
「ーーっ!」
(嫌だ)
ここで、終わりたくない。
もっともっと、この学園に……居たい。
タイムリミットが来る、そのギリギリの瞬間まで。
「だからっ、ぉねが……っ」
優しく伸ばされる手を、ガクガク震える体で必死に振りほどく。
心はズキリと痛むけど、でもバレるよりはずっとマシ。
真っ暗闇の中で、雷の音だけが響いてて
でも、それでも、1人でちゃんと耐えられるから
ーー耐えて、みせるから。
(だから、もう………っ)
「はなし ーーっ、んぅ!?」
「離して」と必死に言う俺の唇を、柔らかいなにかが塞いだ。
「ん、ん…っ、ん……ん…ぅ………!」
(な、に…これ……っ)
息が、できない……!
ポンポンと思わず目の前にある体を叩くと、そのままゆっくりと唇から離れていく。
「っはぁ…鼻で息しろ。
ーーハル」
「っ、え……? ぁむっ!」
「えっ?」と口を開いた途端、今度はニュルリと生温かいものが口の中に入ってきた。
「ぁ…んっ、ん……ふっ!」
震える体を、今度は逃さないというようにきつく抱きしめられて。
頭を、力強い手に支えられて。
「ふ……っ、んっ…んぅ…ん………」
クチュクチュと口内を激しくかき回される音が耳に響いて、ボーッとしてしまう。
(なに……これぇ………っ)
一体…なにが、起こってるの?
なんで、俺
ーー会長と、キス…してるの……?
しばらくしてから、ようやく唇が離れていった。
「はぁっ……ぁ、っ…はぁ……はぁ………っ」
「っ、と」
カクンと体の力が抜けて、会長に支えられる。
「ちょっとは落ち着いたか?」
「っ、へ………?」
「運ぶぞ。
場所変えるから、ちょっと待ってろ」
そのまま、グイッと横抱きにされた。
0
お気に入りに追加
352
あなたにおすすめの小説
壁穴奴隷No.19 麻袋の男
猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。
麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は?
シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。
前編・後編+後日談の全3話
SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。
※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。
※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。
当たって砕けていたら彼氏ができました
ちとせあき
BL
毎月24日は覚悟の日だ。
学校で少し浮いてる三倉莉緒は王子様のような同級生、寺田紘に恋をしている。
教室で意図せず公開告白をしてしまって以来、欠かさずしている月に1度の告白だが、19回目の告白でやっと心が砕けた。
諦めようとする莉緒に突っかかってくるのはあれ程告白を拒否してきた紘で…。
寺田絋
自分と同じくらいモテる莉緒がムカついたのでちょっかいをかけたら好かれた残念男子
×
三倉莉緒
クールイケメン男子と思われているただの陰キャ
そういうシーンはありませんが一応R15にしておきました。
お気に入り登録ありがとうございます。なんだか嬉しいので載せるか迷った紘視点を追加で投稿します。ただ紘は残念な子過ぎるので莉緒視点と印象が変わると思います。ご注意ください。
お気に入り登録100ありがとうございます。お付き合いに浮かれている二人の小話投稿しました。
彼の理想に
いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。
人は違ってもそれだけは変わらなかった。
だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。
優しくする努力をした。
本当はそんな人間なんかじゃないのに。
俺はあの人の恋人になりたい。
だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。
心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。
この愛のすべて
高嗣水清太
BL
「妊娠しています」
そう言われた瞬間、冗談だろう?と思った。
俺はどこからどう見ても男だ。そりゃ恋人も男で、俺が受け身で、ヤることやってたけど。いきなり両性具有でした、なんて言われても困る。どうすればいいんだ――。
※この話は2014年にpixivで連載、2015年に再録発行した二次小説をオリジナルとして少し改稿してリメイクしたものになります。
両性具有や生理、妊娠、中絶等、描写はないもののそういった表現がある地雷が多い話になってます。少し生々しいと感じるかもしれません。加えて私は医学を学んだわけではありませんので、独学で調べはしましたが、両性具有者についての正しい知識は無いに等しいと思います。完全フィクションと捉えて下さいますよう、お願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる