ハルとアキ

花町 シュガー

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体育大会編

sideアキ: 今回の件、悪いのは…… 1

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「はぁぁぁ………」

あれからしばらく経って、体育大会が近づいてきたせいで段々と体育の授業が増えてきて。
必然的に、俺は生徒会室にいることが多くなった。

でも…あれから会長には会ってない。

(まぁ、今授業中だし本来はこれが普通なんだけど……)

前はやたら俺の体育時間に合わせて来てたからなぁ……

あれから何事も無いようにイロハたちや先輩・櫻さんたちと生活して、佐古に生徒会室までの送り迎えをしてもらってるんだけど。

(なにもない、平和だな……)

あれは嘘だったのかって思うくらい、驚くほどに平和な日々を過ごしてる。

(この前散々ハルに愚痴ったのになぁー……)

家に帰る時が来て、帰って早々あいつの事を愚痴りまくった(勿論シャツ破かれた事は言ってない、ただただ延々と悪口言っただけだ)

そしたら、
『ふふふ、うんうん。アキも大変だったねぇー』と頭よしよししてくれて。
『次帰って来たらまた進展聞かせてねっ!』と、なにやらすごく楽しそうに再び送り出された。

(ハル、なんか誤解してないか…?)

俺別に漫才とかしてるわけじゃないのに……
やたらめったらバカとかアホとか薄っぺらのペラペラ人間とか言ったのがいけなかったのかな…うーん……


今日は全校体育っていう全校生徒で体育大会の練習をする授業があるから、体育が続けて3時間も入ってて。
その分、俺の机の上に割り振られてる書類の量も多かった…けど。

「………業務、終わっちゃった」

(こんなんで3時間も潰せねぇよ…)

今何時だろ……うわぁ、まだ1時間も経ってないのか…どうしよ……

「暇だ……」

ポスッと椅子にもたれかかって、あいつに付けられた手の痣を見る。

(大分薄くなってきたな……)

何で、あいつはいきなりあんな事したんだろう。
そんなに俺が内側内側って言ったのが腹立ったのかな。
でも、一応あれでも龍ヶ崎で、ちゃんとそれなりの教育受けて育ってきてる筈なのに手が出るんだなあいつは……
正直びっくりだ。

(でも、俺もあいつに酷いこと…言っちゃったな……)


『僕はと婚約してるのか……

ーー恥ずかしい』


(すごく、傷ついた顔してたなぁ……)

いや、でもあいつはあれくらい言ってやらないときっと止まってくれなかった。
あれ以上のことされてたら、俺どうなってたかわからないし。

(自己防衛だ自己防衛、うんうん!)

でも、あいつのあの顔を思い出すとチクンと胸が痛む。

「はぁぁぁ………」

(あれからため息ばっか吐いてるな、俺)

どうしたんだろ…もう自分でもわかんないや……





ーーピッ


「ん?」

静かな生徒会室に、カードキーの開く音が響く。

(ぇ、ま、まさか会長……?)

最近来てなかったのにどうしよ…どんな顔してたらいいんだ俺!

一気に緊張して、思わず椅子の背もたれから背中を起こしてピンッとさせてしまう。

(いや、そもそも俺別に悪いことしてなくない? なんで俺が緊張するんだよ……)

でも、じんわりと汗が滲んできて思わずキュッと拳を作る。

またあんな事されたら、次は本気で蹴り飛ばそう。
それで、梅谷先生に事情話して生徒会専属秘書から降ろしてもらおう。うんうん、そうしよう。

そんな事をぐるぐる考えてるうちにも、ガチャッと扉が開いて。


「あぁ~疲れたぁ~~~!」

「えぇ、まったくですよ。この炎天下の中3時間も体育なんてやってられませんね」

「…うん、ほんとそれ……」


…………ん?


(あ……れ………?)


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