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体育大会編
side佐古: 微かな違和感 1
しおりを挟む「あーったく、だりぃな……」
6限目のチャイムが鳴り響く中、1人生徒会室へ続く廊下を歩く。
(帰って来て早々これかよ…はぁぁ……)
5限目の体育がだるいから6限目から授業受けようと帰って来たのに、それが丁度運悪く梅谷の授業で。
しかも
『お、佐古この時間から来るとは相変わらずいい度胸だなてめぇ…まぁ、今日は丁度いい』
『……あ?』
『小鳥遊が5限目終わっても生徒会室から戻って来てないらしい。 お前、ちょっと生徒会室行って小鳥遊返してもらって来い』
『は? なんで俺が』
『あぁ!?てめぇがあと一限受けたら学校が終わるって時にのこのこ登校して来たからだろうが! 同室者なんだろ面倒見てやれ。 ほら、しっしっ』
(しっしっ、ってなんだよ。おれは害虫か)
まぁ、あながち間違いじゃない気もしないでもないが……
(しっかし〝生徒会〟ねぇ……)
『佐古くん聞いて聞いて!ハルね、生徒会入りしたんだよ!』
『1年生から生徒会なんて異例中の異例…2年から入った今の会長より凄いよ!もう次期生徒会長はハルで間違いなしだっ!』と丸雛が興奮しながら話してくれたのを思い出す。
〝生徒会入り〟に、〝次期生徒会長〟に、〝親衛隊〟に。
俺がいない間のハルに関する変化は、全て丸雛と矢野元から報告を受けていた(報告っていうかあいつらが勝手に話しに来るだけだ)
あいつらは常にこの学園の中に居て、いつもハルと一緒にいる。
俺は、時々しか学園には帰ってこない。
だから、この学園を外から離れて眺める事ができる。
ーーだからこそ、多分こんなことを思うのは俺だけのはずだ。
ポソッ
「やっぱ、できすぎてんだよな……」
あいつらやハルから話を聞かされる度、どうも違和感を感じる。
大きな違和感では無く、ほんの些細な、微かな違和感。
あいつは、実はあの龍ヶ崎の婚約者で、体育が理由で生徒会入りを果たし、それが原因で次期生徒会長と謳われ、親衛隊ができ、その隊長があの有名な月森一族の息子で。
〝小鳥遊〟という名字がそうさせてると言われればそれまでだ、納得がいく。
ーーだが、問題はそれらの起こる時間の早さ。
婚約者だとみんなにばれて、生徒会に入り、親衛隊設立を許可し、それの大幅なルール変更までもを済ませている。
学校が始まって1ヶ月と少し経った今日この頃
それなのに、あいつには既にこれだけの事が起こり、そしてそれらを難なくこなしている。
(いくらなんでも、できすぎだ)
上手くいきすぎている。
あいつは生まれつき体が弱く、幼い頃から家から出させて貰えず、学校にも通えてない筈だ。
だから今回が親元を離れる初めての事で、初めての学校で。
(それなのに、どうしてこうも次々起こることをこうも対処できている?)
自頭がいいから? いや、いくらあいつが頭が良くても体がついていかなければ意味はない。
どうしてあいつは、慣れない外なのにこんなにストレスなく馴染んでるんだ?
次々と起こることを素直に受け入れ、テキパキとこなしていくことに戸惑いは何もないのか?
なんで、こんなにスルスルこなしていく事ができている?
そう…まるで。
(ーーなにかに、操られているように)
まるで、ハルじゃない他の奴がハルを上手く操っているみたいだ。
それくらい、ハルは自身を良くコントロール出来ている。
(いや、あと何というか…急ぎすぎなんだよな)
そう、まるで何かに焦っているかのように、テンポよく早足で進みまくっている……気がする。
親衛隊のルール決めだって、生徒会の仕事に慣れてからでもよかったはずだ。
それなのに、早い段階でハルは動いている。
一体何故?
何をそんなに急いでいる?
「…ま、あいつクソ真面目だからな……」
「人を待たせるのは嫌いだし、課されたものは早めにやらなきゃ!」と言われれば、納得がいく。
そう、全て納得がいって、一見なんの問題もない。
だが
(単なる俺の思い違いか……?)
どうも違和感が拭いきれない。
これは、一体………
「…………ん?」
考えながら歩いていたら、もう生徒会室はすぐそこで。
(なんだ?あれ)
生徒会室の扉の下で、誰かが小さく小さく体育座りしている。
(一体誰がこんな時間に…… ーーーーっ!?)
「ハルっ!」
うずくまるように頭を覆っている手の隙間から、あいつの髪の色が見えた。
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