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婚約者編
2
しおりを挟む「入れ」と通された〝現国準備室〟と書かれた部屋。
そこで何故か俺は。
ドンッ!
「てめぇが小鳥遊か……」
「は、はぃ…あの……っ?」
いわゆる壁ドン?を、やられてます。
(いや、なんで!?)
無言で、至近距離からじっくりと見て来る先生。
ま、まさか初日早々何かやらかした!?
どうしよう何もわかんない…無意識にしたかな!?
まじかよ、ハルごめーー
「ほぉ…どうやら噂とは違うらしいな」
「………ぇ」
噂……?
「はぁぁ、んだよやっぱ噂は噂か…まぁ当ってんのは容姿くらいか」とブツブツ言いながら、先生が壁から手を離しドサッと気だるげに椅子に座った。
「あの先生っ、噂ってなんですか……?」
「あぁ? 知らねぇのかよ、ったく……お前はもっと自分に敏感になれ。
はぁぁ…とりあえずそこの椅子使え」
「は、はぃ、失礼しますっ」
「お前〝小鳥遊〟だろ? お前は生まれつき体が悪くてパーティに一度も参加したことがない。だからいろんな噂がたってんだよ。
『グループの方々に大変過保護にされているから、とても我儘な性格』だとか『容姿が非常に美しい』だとか、『その逆』だとか…な」
「え……」
なんだ、それ。
(確かに俺たちの一族はハルのこと凄く大事にしてる。でも、それでハルが我儘?)
何処が。
なんだその根も葉もない噂は、意味がわからない。
みんな、ハルのこと影でそう言ってたのか…!?
(ハルは、そんな奴じゃない……!!)
フワリ
「あーはいはい、そう怒るなって」
「っ、ぇ?」
頭に何かがのり、優しく髪をかき混ぜる。
「あいつらはそういう噂話が大好きなんだよ。有る事無い事言ってはあぁだこうだ言い合う奴らだからしょうがねぇ……
お前も、ここに入った以上慣れてくしかねぇな」
「梅谷…先生……」
「まぁ俺もこの学園の教師になってから随分経つが、この俺があんだけ至近距離で見つめても何も変わらなかったし今もこうして普通に話してる。お前は媚びてくることも無い極めて一般的な奴だ。
〝噂はただの噂だった〟。それだけだろう、な?」
(あった、かい……)
落ち着け落ち着けと言うように、クシャクシャかき混ぜてくる先生の手。
何だか、初めてここに来た時の櫻さんのようで。
(こうされるの、好き、だな……)
「クックッ、こうされるの好きか?」
「ぇ?」
慌てて先生を見れば、ニヤリと笑っている。
「だってぐりぐり手に頭押し付けてくっから」
「んだよさっきまで怒ってたくせに。可愛いとこあんじゃねぇか」とわしゃわしゃわしゃ!と両手で思いっきりかき混ぜられた。
「ゎ、ちょっ、先生っ!」
「はははっ、わりぃわりぃ。いやーなんでか撫でまわしたくなっちまったわ」
(なんだそれっ)
ぐしゃぐしゃになった髪を手ぐしで整えながら、楽しそうに笑う先生をじと…っと睨む。
「はいはい、睨んでるつもりだろうが可愛いだけだな」
「……先生わざわざ教室に戻ってきてまで呼び出しといて用件それだけですか、なら帰るんで」
「おい待て待て! んなわけねぇだろうが」
(ならなんだよ……)
「まぁそうカリカリすんな。
ーーお前の体の事だ、小鳥遊」
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