ハルとアキ

花町 シュガー

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友だち編

sideアキ: 友だちのつくり方

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「はぁぁ………」

「? ハル……?」

「どうしたのー?」と横を歩く2人が顔を覗いてくる。

佐古と友だちになるにはまず外堀から攻めようと、俺は佐古の食器を買った。
食器を可愛いのにしたのはワザと。絶対面白いから。
元々料理は得意だし、まずは胃袋を掴む的なノリで……!

それは上手くいったと思う、俺のつくったものをパクパク食べてくれた。
ひたすら喋る俺にちょっとだけど相槌もうってくれて。

そこまでは良かった。
問題は、その後だ。

(俺、やっちゃったんだよなぁ……)


『お前って病弱、なんだよな』


ポツリと言われたそれ。

多分佐古には何の悪意も無かった、知ってる。
でも、佐古がハルをそういう目で見ていたことが俺には許せなくて。

(ハルは、絶対佐古より強い)

いろんな色の薬を飲んでた幼い頃。
熱が高かったのにもかかわらず俺の頭を撫でてくれた頃。
どんなにきつくても、いつも強く笑っていた。
そんなハルを〝病弱〟のひとことで片付けて欲しくない。
俺は、ハルの外面じゃなく内面を見て欲しい。
なのに……

(あぁーくっそぉ…難しい!)

強く言ってしまってから、佐古の様子が変だった気がする。

でも、言ったことに俺は後悔してない。

でも、でも……


「…ハル、もしかして佐古くんのことで悩んでる?」

「うん、ちょっとねっ……」

「よかったら話してみないか? 話したら楽になることもあるかもしれない」

「そうだよ、なんでも聞くよ?」

(……本当、ありがたいなぁ)

いつも助けられてばかりだ、佐古ともそうなりたいんだけどな……

そっか、2人はハルと友だちになってくれたんだよな。
こういうのは2人に訊くのが1番かも。

「友だちって、どうやったらなれるの……?」

「それって、佐古くんと友だちになりたいってこと?」

「うん…佐古くんにはその気がないかもだけど……
でも、僕は友だちになりたい、佐古くんと」

2人を見ながら強く言ったら、ふわりと笑ってくれた。

「そっか…っ、そっかそっか!」

「いいんじゃないか? 応援する」

「っ、ありがとう!」

すぐに背中を押してくれる2人が、本当に有難い。

俺は、とりあえず佐古にご飯をつくって一緒に食べたこと、ちょっとだけど相槌をうってくれたこと、片付けも手伝ってくれたことを話した(手伝わせた?そんな馬鹿な、手伝ってくれたんだよ? ね??)

「ハルすごい!自分からいくのってすっごい勇気いるよね、おれもハルに話しかけるのすごく緊張したんだよ? でも、そっかー。
ハルは自分から友だちつくるの初めてだもんね」

「そうだったな。成る程……
っというかハル、俺たちも佐古とは仲良くなりたいと考えてるんだが」

「そうそう、そうなんだよ!佐古くん帰ってたのなんで教えてくれなかったの!?」

せっかくのチャンスがー!

「……え?」

「おれたちも、佐古くんと友だちになりたいよ?」

「櫻さんから聞いてから、どうしても佐古が頭から離れなかったんだ。
それに、ハルが1人で頑張ってる。俺たちも一緒に頑張りたい」

「そーだよハル!おれたちも仲間にいれてー!」

ぎゅーっと抱きついてきた体温が、とっても嬉しい。

「2人とも…本当にありがとうっ」

「わーお礼言われること何もしてないよ!それより、次佐古くんが帰ってくる日って分かってるの?」

作戦会議しよ!とやる気満々のイロハにあははと笑ってしまう。


「実は、今日なんだよねぇ……」


「「…え」」

あれから2日経って、今日は佐古が帰ってくる日。

「早く帰っておいでね~って言ったから、多分消灯時間より前には帰ってくると思うんだけdーー」

「大変だ!!時間がないじゃん!わーどうしようどうしよう!!」

「落ーちー着ーけーイロハ、まだ晩ご飯までは時間がある。これから寮帰って作戦会議するぞ。
いいな2人とも」

「うん了解!」 「わかった…!」

(2人がいたら、きっと大丈夫だ!!)

前は1対1だったけど、今日は1対3になった。

さっきまですごく緊張してたのに、
今はちょっとだけ、今日の夜ご飯が楽しみになってる。
友だちが付いていてくれてるって、本当にすごい。

(佐古……今日は、前よりもっと近づけそうな気がする)


待ってて、絶対1人にはさせないから。

無理やりにでも、踏み込んで行くよ。


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