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友だち編
2
しおりを挟む2人で高校へ着いて。
早く着きすぎちゃって暇で暇で。
カズマは部屋でずっと難しい本読んでるし、だから噴水探しおれだけで行ったらすごい怒られちゃって。
仕方ないから次の日もっかい、今度は一緒に探してて。
そしたら、〝天使〟に出会った。
昨日偶然見つけた、凄くいい感じの噴水。
蔦が絡んでて傷んでる…でも綺麗な噴水の淵に、目を閉じて静かに座ってる子がいた。
日に焼けてない白い肌、同じく焼けてないような色素の薄いサラサラの髪が風に揺れてて、耳に手を当て静かに目を閉じてるその姿は、本当に絵みたい整ってて。
気が付いたら、隣に座りたいなって。
もっとこの子のこと知りたいなって思ってる自分がいた。
上辺だけの世界で生きてるおれたちには、この子の笑顔はすごく眩しくて…キラキラしてて。
そして、その子は〝小鳥遊〟を名乗った。
(え、小鳥遊って…… あの!?)
パーティーに1度も顔を見せない小鳥遊の息子。
誰も見たことないから、たくさんの噂がたってて。
そんな小鳥遊くんが、今年からこの高校に通うらしい。
(またくだらない噂かと思ってた、のに……)
これが、あの小鳥遊くん。
TAKANASHIグループの大事な大事なひとり息子。
(身体が優れないのは本当だったんだ。
それと容姿も、整ってるのは本当だった)
でも、それしか合ってなかった。
過保護にされすぎて性格が傲慢?我儘? どこが。
控え目に笑うその顔や、触れる度にビクビクするその体。
じぃっとこっちを伺うその様子。
そして、
『ぼ、僕っ、そんなに速く歩けなくて……ぁ、イロハ達が普通のスピードなんだと思う!速いって怒ってるわけじゃなくてっ!僕が遅いから…そのーー』
普通、おれたちの世界だったらハルが怒っていい立ち場にいると思う。
「もっと僕を見て」って「何勝手に歩いてんの?」って。
でも逆で
自分の体のことより、振り払ってしまっておれたちの方が傷ついたって謝ってくれて。
それが、何でかすごく悲しくて、嫌で。
気が付いたら本気で怒ってた。
日本じゃ知らない人はいない、あのTAKANASHIのひとり息子を
みんなが喉から手が出るほどコネが欲しい、この子を
おれとカズマは本気で怒ってて。
これがバレたらきっと家の人に怒られると思う。
でも、そうまでしてもおれはハルに遠慮してほしくなくて、気を使って無理して欲しくなくて。
何でこの子はここまで自分で自分を追い込むんだろう? って、ちょっと疑問に思った。
でも
『僕、今までずっと屋敷から出たこと無かったから〝友だち〟できたことなくてっ。だから、2人とどう接したらいいか、よくわからなくて…ご、めんね……っ?』
手を繋いでゆっくりゆっくり歩いてるときに、そう言われた。
キュゥッと、離したくないよって言われてるみたいに控え目に力を入れられながら『あははっ』て悲しそうに、何かを懐かしむように笑うから
何でかこっちまで泣きそうになってしまって。
『っ、じゃぁおれたちがハルの友だち第一号だねっ!』
そう言うだけで本当に嬉しそうに笑ってくれたから。
だから、
「「ただいまー」」
ハルとハルの荷物を部屋に送り届けて、やっと着いたおれたちの部屋。
「……カズマ」
「ん」
「ハル、真っ白だったね」
「そうだな」
相手は、あのパーティーに1度も顔を出さなかった小鳥遊の子。
ハルは、パーティーを知らない。
周りの子たちとの接し方も、上辺だけの笑顔も。
自分がどんな立ち位置なのかも……多分知らない。
これから始まる学校では、きっとみんながハルを
〝小鳥遊〟を狙ってくる。
たくさんの子に話しかけられてハルが倒れたりするのを想像すると、本当にゾッとする。
「守ってあげよう。ハルを、おれたちで」
真っ白な、綺麗なあの子を守りたい。
何もかもが初めてのあの子を、少しでも支えてあげたい。
「そうだな。でも……」
おしっ!と気合を入れるおれの頭にポンっと手が置かれる。
「俺はお前も守るから。イロハ」
「なっ! お、おおおれは別にっ、守ってもらわなくても全然平気だから!」
「何が全然平気なんだよ。お前いつも不安なくせに……
ちゃんとこれからも俺の隣にいろよ、な?」
わかったか?と頭をクシャッと撫でて、カズマは先に部屋へ入っていく。
(なな、なななっ……!)
「お、おれは平気だもん……っ!!」
顔が赤くなってるなんて、きっと嘘。
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