ハルとアキ

花町 シュガー

文字の大きさ
上 下
20 / 536
友だち編

9

しおりを挟む





「よし!それじゃぁ行こっ、ハル!」

「そうと決まれば即行動!」と、イロハに腕を絡められてパッと立たされた。

「先ずどっちに行くー?」

「んー、そうだなぁ……」

(さっきはこっちから歩いてきたんだよな…だから……)

「あっちかな」

来た道と逆方向を指差した。

「了解っ!じゃぁしゅっぱーつ!!」

「わっ、ぁ、ちょっ」

グンッ!と腕を絡められたまま、どんどん進んで行く。

「カズマ、こっち何があるか知ってる?」

「いや、俺も知らない」

「そっか!じゃぁみんなで探索だね!」

楽しみ楽しみ!と前を歩くイロハとカズマのペースに、
ズンズンと引っぱられるように俺も歩いていて。


(ぁ、だめだっ)


歩くスピードが速すぎる。
ハルがここに通うようになっても、このペースで歩かれたらきっと辛い。


ーーそれは、無意識だった。


気づいたら、バシッ!とイロハの絡んでいた腕を振りほどいてしまっていて。


(っ、しまっ!)


「え………?」


驚いたような、呆然としたような
そんな表情の2人が振り向く。

「っ、ぁ、その……っ」

やってしまった。
口で言えば良かったのに、身体が先に動いた。

(ど、しよ…ハルの友だち傷つけちゃったっ)

折角できた、とてもいい人たちだったのに。

(俺、馬鹿だ……)

ハルなら、もっと上手くできた。
ハルなら、イロハたちを傷つけずにちゃんとできたはず。

(っ、ごめん、ハル……っ)

「は、ハル……どうしたの? 何か嫌だった?」

控えめに、悲しそうに恐る恐るイロハに訊かれて、ブンブン首を振る。

「ちがっ、そうじゃなくて! 
ぼ、僕っ、そんなに速く歩けなくて…… ぁ、イロハ達が普通のスピードなんだと思う!速いって怒ってるわけじゃなくてっ!僕が遅いから…その……っ。
ご、ごめんね!やっぱり付き合ってもらうの悪いや。すごく時間かかるし、探索だから周り道とかしちゃって、そしたらもっと時間かかるしっ! だから、やっぱりひとりで行くよ。 
ほらっ、僕ちゃんと学校のパンフレット持ってきたんだよね!だからね、そのっ、」

何て、言えばいい?

(やばい……)

何て言ったら、これ以上傷つけずに済む?


何て言ったらーー



「ハルっ!!」


「っ、ぁ……」


ハッ、と顔を上げると
目の前一杯に、2人の顔。

「ハル!ハル大丈夫だから。
おれたち別に何とも思ってないし、本当に大丈夫だから!だから落ち着いて、ねっ……?」

「顔色が悪い。ちょっと休むか?」

両手をぎゅぅぅっと掴んでくれるイロハと
前髪をかき上げて顔色を確認してくれるカズマ。

「な、んで? 
僕、大丈夫だから……だから、もう2人ともーー」

「っ!ハル!!」

キッ!と大きな目で悲しそうに見つめてくるイロハに、もっとわからなくなる。

(何でそんなに悲しそうな顔するの? 俺間違った…?)

「はぁ、落ち着けイロハ。 
……ハル、何で俺たちが悲しそうな顔してるか分かるか?」



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

壁穴奴隷No.19 麻袋の男

猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。 麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は? シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。 前編・後編+後日談の全3話 SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。 ※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。 ※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。

当たって砕けていたら彼氏ができました

ちとせあき
BL
毎月24日は覚悟の日だ。 学校で少し浮いてる三倉莉緒は王子様のような同級生、寺田紘に恋をしている。 教室で意図せず公開告白をしてしまって以来、欠かさずしている月に1度の告白だが、19回目の告白でやっと心が砕けた。 諦めようとする莉緒に突っかかってくるのはあれ程告白を拒否してきた紘で…。 寺田絋 自分と同じくらいモテる莉緒がムカついたのでちょっかいをかけたら好かれた残念男子 × 三倉莉緒 クールイケメン男子と思われているただの陰キャ そういうシーンはありませんが一応R15にしておきました。 お気に入り登録ありがとうございます。なんだか嬉しいので載せるか迷った紘視点を追加で投稿します。ただ紘は残念な子過ぎるので莉緒視点と印象が変わると思います。ご注意ください。 お気に入り登録100ありがとうございます。お付き合いに浮かれている二人の小話投稿しました。

彼の理想に

いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。 人は違ってもそれだけは変わらなかった。 だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。 優しくする努力をした。 本当はそんな人間なんかじゃないのに。 俺はあの人の恋人になりたい。 だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。 心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。

この愛のすべて

高嗣水清太
BL
 「妊娠しています」  そう言われた瞬間、冗談だろう?と思った。  俺はどこからどう見ても男だ。そりゃ恋人も男で、俺が受け身で、ヤることやってたけど。いきなり両性具有でした、なんて言われても困る。どうすればいいんだ――。 ※この話は2014年にpixivで連載、2015年に再録発行した二次小説をオリジナルとして少し改稿してリメイクしたものになります。  両性具有や生理、妊娠、中絶等、描写はないもののそういった表現がある地雷が多い話になってます。少し生々しいと感じるかもしれません。加えて私は医学を学んだわけではありませんので、独学で調べはしましたが、両性具有者についての正しい知識は無いに等しいと思います。完全フィクションと捉えて下さいますよう、お願いします。

愛などもう求めない

白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

手作りが食べられない男の子の話

こじらせた処女
BL
昔料理に媚薬を仕込まれ犯された経験から、コンビニ弁当などの封のしてあるご飯しか食べられなくなった高校生の話

処理中です...