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1章 日常になっていく日々
9話
しおりを挟む「さて、今夜はこれでごちそうを作ってもらおう」
せっせと魔獣を解体し、何かを切り出しているな、とは思っていたけれど、魔獣の肉って食べられるの? え、なんかいやだ。普通の家畜に似たものもあるけれど、なかなかグロテスクな形態をしている魔獣も中にはいるのだ。副団長が回収した中にも。
「魔獣は一般的に食べられているのですか……?」
恐る恐る聞いてみる。するとあっさりとうなずかれてしまった。あ、そうですか。
「魔獣はつまり、魔の力を持っているからね。
それに一般の家畜よりも栄養価が高く、味もおいしいので人気だよ」
それに人気なんですね。私の感覚がおかしいのでしょうか。話している間にも作業は終わったようで、副団長が立ち上がる。そして周りを見渡すと、そろそろ帰りましょうか、と口にした。確かにもうだいぶ日が傾き始めている。なんだかいろいろと疲れたけれどあっという間の一日だったかな。
「それにしても、ちゃんと自分で魔獣を狩れていたね」
帰り道。行きと同じように副団長に前に乗せてもらって馬に乗っていると不意にそんなことを言われる。そう言えば、副団長に教えてもらいながら必死に弱点について考えていたからか、いつの間にか恐怖心は薄らいでいた。
「そう、ですね。
よかったです」
これで、何か魔獣に対峙することがあっても対処できる。それがひどく安心できた。やっぱり、弱点は少ない方がいい。いろいろな面から狙われる要素がある今はよりそう思う。
「ええ。
技の多彩さも増していたし、ララが結界もとても安定していると言っていた」
確かに初めのころに比べると、任されることも増えてきた。それが信頼の証な気がしてうれしかったけれど、安定面も評価してくれていたならうれしい。
「……、君は今何を目指している?」
唐突に副団長から投げかけられた問い。自分が目指しているもの。それは一つだ。
「レンの、レベルナート様にとって支えと、後ろ盾となるものです。
そのために役職を目指したいと思っています」
そう言い切る。レンのことがなくても、もともとお姉様のために目指していたのだ。相手は変わったけれど、内容は変わらない。
「レベルナート殿下の……。
そうですか」
それきり、副団長は黙りこんでしまった。顔が見えないから確信はないけれど、たぶん考え込んでいる。そう言えば私の中ではこれが当たり前すぎて、改めて口に出すことは少なかったかもしれない。
そのまま城へと帰ると、本当に夜には狩ってきた魔獣で作ったという肉料理が出てきた。それを見たヴァークの嬉しそうな顔にやっぱり私の感覚がおかしいのか、と思いました。
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