あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活

五章 学園生活 1‐1

86

    制服から部屋着(といっても簡素なドレスみたいなものだけど)に着替え、父様の部屋へと向かう。
    あまり行く場所ではないから緊張してします。
    呼吸を整えて、扉をノックすると返事はすぐに帰ってきた。

「入っていいぞ」
　
「失礼いたします、アーネミリアです」

　部屋に入ると少しラフな格好をした父様が待っていた。
　さて、父様はなんというかな。
　
「何か相談したいことがあったのだな。
　今日、何かあったのか？」
　　
「チェスト先生という魔法実技を担当している先生がいるのですが……」

「ファースター・チェストか？」

「ご存知なのですか？」

「彼は若く優秀だからな。
　魔法に関する扱いは、あの年だがこの国のトップクラスだ」

　チェスト先生って思っていたよりもすごい人だったんだ。
　なぜそんな人が学園で先生なんてやっているのだろう？

「それで、彼がどうした？」

「あの、今日はチェスト先生に魔法のコントロールを見てもらっていたんです。
　それで帰りが遅くなってしまいました」

「そうなのか。
　彼が見てくれているなら安心だな。
　それで、相談したいこととは？」

「あの、その……。
　チェスト先生に、弟子にならないかと誘われたんです。
　それで、お父様やお母さまともよく相談するように、と……」

　それを聞いた父様は驚いているようだった。
　やっぱり、あまりないことなのかな？
　しばらく考えるようにして、無言になってしまった父様に不安はどんどん積もっていく。
　うかがうように父様の方を見ていると、ちらりと目が合った。

「アーネミリアはどうしたいのだ？」

「私は……。
　私は、できたらお願いしたいです」

　私の答えを受けて、父様は一つため息をつく。
　その様子にこれは言ってはいけないことだったのかもしれないと、血の気が引くのを感じていた。
　視線は自然に下を向いてしまう。

「そんな青い顔をしないでくれ」

　その言葉に再び私は父様の方を見た。
　苦笑を浮かべている父様に怒りの様子はない。