上 下
47 / 261
五章 学園生活 1‐1

46

しおりを挟む
 今日は待ちに待った、というわけでは無い入学式の日だ。
 制服は無事に手に入ったし、必要なものも兄様のおかげで揃えることができた。
 父様はこの時期お忙しいようで、今日は行けないとおっしゃっていた。
 母様は着いてきてくださるようだけど。
 兄様はなにやら学園の方で今日の準備があるらしく、早くから出かけている。
 リュラは先生とお留守番だ。
 支度をし、真新しい制服に身を包むと、だんだんと緊張してきた。
 まともな入学式など、何年ぶりに参加するかもよくわからない。
 なにせ、中学は持ち上がりだったのだ。
 なによりも、あの王子が気がかり。
 変に突っかかってこなければいいのだが……。

「アーネ、そろそろ行きましょう。
 遅れてしまっては大変だわ」

「今行きます!」


 馬車に揺られている間も思わずそわそわしていると、母様に苦笑されてしまった。
 どの科でも、特進科は一クラスしか無いらしくクラス分け自体にどきどきはしないのだが、誰が魔法特進科にいるのか自体がわからない。
 どうか、あの王子はいませんように、と祈るしかなかった。

「新入生はこちらで自分のクラスを見てから奥に進むように!」

 誰かが叫ぶ声が聞こえてくるが、姿は見えない。
 新入生自体も通っていた学校に比べると多いのだが、自分の子供の晴れ姿を見守ろうと来た保護者たちの数がすごかった。
 迷子になってしまいそうだ。

「アーネ、私はこのまま入学式の会場に向かってしまいます。
 また、後で会いましょう」

 うなずくと、すぐに母様の手を離して人並みの間をぬっていく。
 これでも、身体能力はそんなに悪くないのだ。
 母様と一緒に、となるとゆっくり進むしか無いのだが、一人だとやりようはある。

 はるか彼方に見えていた掲示板の前に思っていたより早くつくことができた。
 そこで、自分の向かう先を確認するとすぐに掲示板の横をぬける。
 まだ式も始まっていないと言うのにもう疲れてしまった。

「アーネ!
 よかった、無事にあの人混みを抜けられたんだね」

 生徒だけのエリアになり、人混みがなくなってきたころ現れたのは兄様だった。
 あれ、準備があると言っていたような……。

「準備はあらかた終わったし、アーネが心配だったからこっちに来たんだ。
 毎年ほんとすごい混みようだよね。
 ああ、アーネの教室まで案内するよ」

 学内の地理が不安だったため、兄様の申し出をありがたく受けることにした。
 こういうとき、上がいてよかったなと感じてしまう。

 兄様とちょっとした会話をしながら進むこと数分、ようやく目的地に着くことができた。
 わかってはいたが、この学園広すぎません!? 
 兄様と別れると、一つ深呼吸をして、ゆっくりと教室の扉を開けた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

やさぐれ令嬢

龍槍 椀 
ファンタジー
ベルダンディー=ファーリエ=クリストバーグは、グスターボ国の侯爵令嬢 五歳の時から、聖王太子の婚約者と遇され、御妃教育に頑張っていた。 18歳になり、マリューシュ帝国学院の最終学年。そして、最後の舞踏会。 舞踏会の後は、後宮に入り聖王太子の妻としての教育をさらに重ねる事に成っていた。  しかし、彼女は極めて冷めている。 実母が亡くなってから、この国に不満しかなく、やさぐれお嬢様になってしまった。 モチロン表面上(ねこかぶり)は大変お上手。 夢はこの国から出て行くこと。 何もかも投げ捨てて。  ベルダンディーに、望みの明日は来るのでしょうか?

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

【完結】王女様の暇つぶしに私を巻き込まないでください

むとうみつき
ファンタジー
暇を持て余した王女殿下が、自らの婚約者候補達にゲームの提案。 「勉強しか興味のない、あのガリ勉女を恋に落としなさい!」 それって私のことだよね?! そんな王女様の話しをうっかり聞いてしまっていた、ガリ勉女シェリル。 でもシェリルには必死で勉強する理由があって…。 長編です。 よろしくお願いします。 カクヨムにも投稿しています。

処理中です...