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一章 異世界へ からの幼児編

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「はっ」

 辺りを見渡して見ると、広い部屋。
 拘束は……何もない。
 なんなんだ、いったい。
 僕が寝ていたベッドはふかふか、高そうだ。
 思う存分飛び跳ねた後、扉へと向かう。

 ガチャガチャと音がするだけで、やっぱり開かない。
 ため息を一つつくと、あいつが姿を現した。
 名前なんて知らないし、もうあいつで十分だ。

《お目覚めのようだね。
 えっと、君の名前、何だっけ》

 自分は名乗らないのにどこまでも失礼なやつだ。
 こんなやつに答える必要は無い。

《え~と、そう、華原愛音、だ》

 あいつはそう言うと、にっと笑いやがった。
 なぜだ、なぜあいつが僕の名前を知っている。

《君にとってその名前ってすごい大事だから、絶対に言っちゃだめだよ。
 ここで、君に一つ選択肢をあげよう。
 一つは、その姿のまま外の世界に出て行くか、もう一つは赤ちゃんになって、完全に転生するか、どっちが良い?》

 一旦待ってくれ。
 そろそろ思考が追いつかない。
 うん、いいよね。
 これ、きれていいやつだよね。

「なぜ、そんな選択肢が存在するの!?
 そのまえに、ここどこだよ!」

 その言葉にあいつはきょとんとした。

《ん~、選択肢は私なりの優しさ、かな》

 きらっと笑うあいつを殴りたい。
 でも、僕はピアノを弾く身。
 ここは、蹴りでガマンしよう。

 ふっ、見事に決まった。

《ぐっ。私を蹴るな!
 ちゃんと、説明するから!》

 涙目になったあいつをみて、少しスカッとした。

《ここは、特別な空間だよ。
 世界と世界に存在する空間。
 そこにある私の部屋なの。
 君に説明してからの方が良いかなって特別に私の部屋に招待した。
 ん~と、私の正体はいずれわかるかな。
 後は……、そう選択肢の話だね。
 もし、そのままの姿で外に出たら、何者だ!って言われて殺されちゃう可能性大。
 転生した、二度ともとの世界にかえれなくなるけけど、平和な人生を送れる。
 その後が違いすぎて、私には選べなくってさ》

 あは、としたあいつをもう一度蹴る。
 でも待てよ、もしかして死んだらもとの世界に戻れるんじゃないか!

 ならば、と意気込むと……

《あっ、一応言っておくけど、死んだらもうおしまいだよ》 

「そう言うのは、選択肢って言わないの!」

 蹴ろうとしたが、上手く逃げられてしまった。
 ちっ。

「じゃあ、君には転生してもらおう。
 安心して、いろいろと保証してあげる。
 きっと良い人生が歩めるよ。
 また、いつか会おうね。
 ばいばい、華原愛音、その名前を決して忘れないで……」

 再び、私は意識を失った。
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